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製缶の外注先が廃業したら|代替サプライヤー選定チェックリスト
長年の外注先が廃業した。図面もデータも手元にある。それでも代替先が見つからない——製缶の世界では珍しくない話です。図面どおりに作れる会社なら他にもあるはずなのに、なぜ見つからないのか。何を確認すれば替えが利くのかを、チェックリストとして整理します。
結論:図面に書かれていないことが失われている
長く付き合った外注先は、図面に書かれていない前提を持っています。材料のロット差をどう見込むか、どの順で組むか、どこの寸法を優先するか。これらは図面ではなく、その会社の工程の中にありました。廃業とともに失われるのはこの部分です。
だから代替先を探すときは「図面が読めるか」ではなく、「同じ精度を作れる工程を持っているか」で見ます。
よくある詰まり方
- 見積は出るが、納品されたものの対角が合わない
- 単体は問題ないのに、列盤にすると全長が合わない
- サイズが大きすぎる、または数量が少なすぎて断られる
- めっき後の穴の開け直しまでは対応してもらえない
- そもそも形鋼を扱っていない会社に当たってしまう
確認する6項目
1. 対応できるサイズと重量
最初に効く足切りです。「1面体で何mmまで」「重量何kgまで」を数字で聞きます。設備の能力だけでなく、組んだまま置いて精度を確認できる広さがあるかも重要です。溶接スペースの広さを聞くと実態が見えます。
2. 扱っている形鋼のサイズ
山形鋼・溝形鋼を日常的に扱っているかどうか。得意なサイズはどのあたりか。対応形鋼サイズの一覧を公開している会社なら、そこで判断できます。
サイズの見方は「山形鋼とは」「溝形鋼とは」を参照してください。
3. 公差をどう作っているか
ここが本題です。「公差は何mmですか」ではなく、「その公差をどうやって作っていますか」と聞きます。材料のロット差を見込んでいるか、切断寸法をどう決めているか、最終の歪み取り工程を持っているか。答えられる会社は、工程として持っています。
列盤にする場合は、単体公差と列盤時の全長精度を分けて聞いてください。単体では収まっていても、つないだ瞬間に累積します。実際に単体公差と10面列盤時の全長精度を分けて公開している例もあります。
4. 表面処理と後処理の範囲
焼付け塗装、溶融亜鉛めっきのどちらに対応できるか。そしてめっき後の穴の開け直し・タップの切り直しまで含めて受けてもらえるか。ここを含めないと、戻ってきたものを自社で手直しすることになります。
「溶融亜鉛めっきで穴が塞がる問題」で詳しく扱っています。
5. 数量の下限
1個から受けてもらえるか。試作や補修部品では、これが決定的になります。量産前提の会社では単品を断られることがあります。
6. 材料の調達方法
定尺材から社内で切断するのか、切材を買うのか。定尺から社内で切れる会社は、材料の実測を踏まえて切断寸法を決められます。精度が要る仕事では差になります。
チェックリスト
| 確認項目 | 聞き方 |
|---|---|
| 対応最大寸法・重量 | 1面体で何mm×何mm×何mmまで。重量は |
| 溶接スペース | 組んだまま精度を確認できる広さはあるか |
| 形鋼の対応サイズ | 等辺・不等辺・溝形鋼それぞれ何から何まで |
| 単体公差 | どのくらいで、どうやって作っているか |
| 列盤時の全長精度 | 何面つないで何mm。単体公差とは別に |
| 歪み取り工程 | 最終工程で角度・対角・全長を仕上げているか |
| 検査項目 | 外形と穴以外に、角度・対角を見ているか |
| 表面処理 | 塗装・めっきの対応と、めっき後処理の範囲 |
| 数量の下限 | 1個から受けられるか |
| 材料調達 | 定尺から社内で切るか、切材を買うか |
| 秘密保持 | NDAを結べるか |
| 配送 | 全国対応か。分割搬入は可能か |
移管するときの進め方
- いちばん難しい品番から試さない。 まず中くらいの難度のもので、精度の作り方を確かめる
- 図面に書かれていない前提を洗い出す。 旧外注先の担当者が残っているうちに聞けるなら聞く
- 優先する寸法を決めて伝える。 全長・対角・穴ピッチのどれを優先するかは、製作側では決められない
- 列盤の面数を必ず添える。 単体図だけでは累積を見込めない
- 初回は検査項目を明示する。 何を測って納品してほしいかを書いておく
まとめ
- 失われるのは図面ではなく、図面に書かれていない工程の前提
- 「公差は何mmか」ではなく「どうやって作っているか」を聞く
- 単体公差と列盤時の全長精度は分けて確認する
- めっき後処理まで受けてもらえるかで、自社の手間が変わる
- 数量の下限と、組んだまま測れる広さは早めに足切りに使える
- 移管は中くらいの難度の品番から始める
よくある質問
- Q. 図面がCADデータではなく紙しかありません。
- A. 紙図面から起こせる会社は多くあります。ただし現物があるなら、現物も一緒に見せてください。図面に落ちていない実際の作り方が読み取れることがあります。
- Q. 近くの会社から探すべきですか?
- A. 輸送費と打ち合わせのしやすさでは近いほうが有利ですが、形鋼のフレームを得意とする会社は多くありません。全国配送に対応している会社もあるので、地域で絞りすぎないほうが選択肢は増えます。
- Q. 見積が旧外注先より高くなりました。
- A. 初回は段取りの費用が乗ることがあります。また旧外注先が長年の慣れで効率化していた分は、すぐには追いつきません。数量がまとまる品番から移すと差が縮みます。
- Q. 複数社に分けて出すべきですか?
- A. 供給リスクの分散にはなりますが、精度が要る組み合わせ品を分けると責任範囲が曖昧になります。まずは1社で立ち上げ、安定してから2社目を検討するほうが現実的です。