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溶融亜鉛めっきで穴が塞がる問題|めっき後処理と水抜き穴の実務

溶融亜鉛めっきで穴が塞がる問題|めっき後処理と水抜き穴の実務

「めっきから戻ってきたらボルトが入らない」「タップが潰れている」。溶融亜鉛めっきを掛けたフレームで必ず出る話です。塗装と違ってめっきは膜が厚いので、穴もねじも寸法が変わります。どこがどう塞がるのか、逃がし方と後処理、そして発注前に決めておくことを整理します。

結論:塞がることを前提に、逃がすか、後で開け直す

溶融亜鉛めっきは、溶かした亜鉛の浴に鋼材を浸ける処理です。表面に亜鉛の層が付くため、穴は内側からも膜が付いて小さくなり、めねじは山が埋まってボルトがねじ込めなくなります。塗装の膜厚が数十マイクロメートル程度なのに対し、溶融亜鉛めっきは桁が違います。

対処は3つしかありません。あらかじめ大きく開けておく、めっき後に開け直す・タップを切り直す、あるいはその部分だけめっきを避ける。どれを選ぶかを発注前に決めておくことが要点です。

溶融亜鉛めっきは穴の内側にも膜が付くため穴径が膜厚の2倍だけ小さくなり、めねじは山が埋まってボルトが入らなくなることを示した図。対策として穴の拡大、めっき後の穴あけとタップ切り直し、水抜き穴の確保を挙げている。
図1 穴は両側から狭くなる。めねじは山が埋まる。

めっきで起きること

起きること影響
通し穴が小さくなるボルトが通らない。長穴も同様に狭くなる
めねじの山が埋まるボルトがねじ込めない。無理に回すとねじ山を壊す
水抜き穴が塞がる内部に亜鉛や水が残り、腐食や重量増の原因になる
寸法が動く高温の浴に入れるため残留応力が解放され、反りやねじれが出ることがある
角にダレが残る合わせ面の密着が悪くなる。列盤の接合部で効く

とくに見落とされやすいのが水抜き穴です。閉断面の部材は、浴に入れたときに内部の空気やガスが逃げる経路と、上げたときに亜鉛が抜ける経路が要ります。これが無いと、めっき屋から「このままでは受けられない」と差し戻されます。閉断面を使う設計では、めっきの可否を先に確認してください。

逃がし方は3つ

1. あらかじめ大きく開けておく

膜厚を見込んで穴径を拡大しておく方法です。追加工が不要で最も安く済みますが、ガタが増えるので、位置決めを兼ねる穴には向きません。列盤の連結穴のように精度が要る場所では使いにくい選択です。

2. めっき後に開け直す・タップを切り直す

めっき後に穴を規定寸法まで開け直し、めねじはタップを立て直します。精度が要る穴はこちらです。ただし切削した面は素地が露出するので、防食が必要な場合は補修塗装などの処理を併せて検討します。

この後処理まで社内でできるかどうかは会社によります。めっきで塞がった穴の開け直し・タップの切り直し・水抜き穴の埋め直しまで一貫で対応している例もあれば、めっき屋に出したら戻ってきたものをそのまま納める会社もあります。ここは事前に聞くしかありません。

3. その部分をめっきしない

マスキングして素地を残す、あるいはめっき後に組み付ける別部品にする方法です。防食の観点では弱点になるので、屋内側や後から塗装できる部位に限られます。

発注前に決めておくこと

決めること決めていないとどうなるか
どの穴・ねじが精度を要するかすべて拡大されてガタが出る、または全部を後加工して費用が膨らむ
めっき後の後処理を誰がやるか戻ってきた状態のまま納品され、現場でタップを立てることになる
水抜き穴の位置と、後で埋めるかどうかめっき屋から差し戻される、または見た目に穴が残る
寸法が動いた場合の許容と手直しの範囲反りが出たまま納品され、据え付けで苦労する
合わせ面のダレ処理接合部が密着せず、列盤で隙間が積み上がる

寸法が動く件は、溶接歪みの残留応力とつながっています。溶接で押さえ込んだ応力が、めっき浴の熱で解放されて動く。めっき前提のフレームでは、この分まで見込んだ組立順序が必要になります。

まとめ

  • 溶融亜鉛めっきは膜が厚く、穴は内側から狭くなり、めねじは山が埋まる
  • 逃がし方は「先に大きく開ける」「めっき後に開け直す・タップを切り直す」「その部分をめっきしない」の3つ
  • 精度が要る穴は後加工。ガタが許される穴は先に拡大、と使い分ける
  • 閉断面は水抜き穴が無いとめっきを受けてもらえない
  • 浴の熱で残留応力が解放され、寸法が動くことがある
  • 後処理まで社内でできるかは会社によるので、発注前に確認する

よくある質問

Q. 穴はどれくらい大きくしておけばよいですか?
A. 膜厚は部材の板厚やめっきの条件で変わるため、一律には決められません。めっき業者と製作会社に、その部材で想定される膜厚を確認したうえで決めてください。位置決めを兼ねる穴は拡大せず、後加工にするのが確実です。
Q. 焼付け塗装なら同じ問題は起きませんか?
A. 塗装は膜厚が薄いので、めっきほど深刻にはなりません。ただしねじ部に塗料が回ればねじ込みは重くなります。塗装でもマスキングの指示は必要です。
Q. めっき後にタップを切り直すと防錆が落ちませんか?
A. 切削面は素地が出ます。ボルトを締めれば隠れる部位なら実用上問題にならないことが多いですが、屋外の重要部位では補修用の亜鉛系塗料などで処理します。使用環境を伝えて相談してください。
Q. めっきと塗装、どちらを選ぶべきですか?
A. 屋外・長期防食なら溶融亜鉛めっき、色と仕上がりを求めるなら焼付け塗装が基本です。屋外キュービクルでは塗装、架台や台枠ではめっき、というように部位で分ける例もあります。