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溶接歪みが出る仕組みと、大型フレームの組立順序・歪み取り
「溶接したら反った」「箱に組んだら対角が合わない」。溶接歪みは、腕の善し悪しの前に物理的に必ず出るものです。ゼロにはできません。だから現場では「出さない工夫」と「出た分を取る工程」を分けて考えます。大型フレームで歪みがどう出て、どこで抑え、最後にどう仕上げるのかを整理します。
結論:歪みは消せない。減らす場所と取る場所を分ける
溶接は、材料の一部を溶かして冷やす加工です。溶けた部分は冷えるときに縮みますが、周りの母材に引き止められて自由には縮めません。この「縮みたい量」と「実際に縮めた量」の差が残留応力として残り、角変形・曲がり・ねじれとして形に出ます。
したがって対処は3か所に分かれます。設計と段取りで出る量を減らす、組立順序で偏りを減らす、そして最終工程で残った分を取り切る。どれか1つでは足りません。
大型フレームで出やすい歪みの型
| 型 | どう出るか | 効いてくる場所 |
|---|---|---|
| 角変形 | 溶接線を境に板が折れ曲がる | フランジ面の平面度、扉の建て付け |
| 横収縮 | 溶接線と直角の方向に縮む | 枠の外形寸法、穴ピッチ |
| 縦収縮 | 溶接線に沿って縮む | 長尺材の全長 |
| 曲がり(そり) | 片側に溶接が偏ると弓なりになる | チャンネルベース、長い桁材 |
| ねじれ | 対角方向にひねられる | 枠の対角寸法 |
形鋼のフレームで問題になりやすいのは曲がりとねじれです。山形鋼は断面が非対称で、溶接位置が片側に寄りやすいためです。とくに長い材ほど、わずかな角変形が端で大きな振れになります。
出る量を減らす
溶接量そのものを減らす
歪みは入熱量に比例して増えます。必要以上に脚長の大きい隅肉は、強度に寄与しない一方で歪みだけを増やします。連続溶接を断続溶接にできるかどうかも、設計段階の検討事項です。
対称に配置する
溶接線が片側に偏ると、その側だけが縮んで曲がります。左右・表裏で対称に配置できれば、収縮が打ち消し合います。設計で対称にできない場合は、溶接する順番で埋め合わせます。
拘束を使う(ただし万能ではない)
治具でがっちり押さえれば変形は抑えられますが、その分は残留応力として内部に残ります。拘束を外した瞬間、あるいは後工程の穴あけやめっきで応力が解放されて動くことがあります。押さえ込めば解決、とはなりません。
組立順序で偏りを減らす
同じ部品・同じ溶接量でも、どの順に溶かすかで結果が変わります。基本は「拘束の少ない状態で歪みを逃がし、最後に基準面を決める」という考え方です。
- 中央から外側へ向かって溶接する(端から順に進めると縮みが一方向に溜まる)
- 対角に飛ばして溶接する(1辺を続けて溶かさない)
- 仮付けで形を決めてから本溶接に入る
- 本体とベースの関係を先に決める(後から合わせようとすると逃げ場がない)
列盤にするフレームでは、この順序が全長精度に直結します。実際に切断精度・穴位置・組立順序・最終歪み取りの4工程で誤差を吸収している例では、組立順序を「累積誤差が出ない順」として設計項目に含めています。
最終の歪み取りで精度が決まる
ここまでやっても歪みは残ります。最後に取り切る工程があるかどうかで、製品の精度は決まります。
歪み取りで仕上げる項目
- 角度:枠の直角が出ているか
- 対角:平行四辺形に倒れていないか
- 全長:列盤にしたときの通し寸法
- 平面度:外板を張ったときに浮かないか
外形と穴ピッチだけを検査して出荷すると、対角が倒れたまま出ていきます。単体では気づかず、列盤にした段階で全長が合わないという形で問題が表面化します。
発注側が確認しておくこと
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 歪み取りの工程を持っているか | 持たない現場では材料と溶接のばらつきがそのまま製品に出る |
| 何を検査しているか(対角・角度を見ているか) | 外形と穴だけの検査では倒れた枠が通ってしまう |
| 組み立てたまま精度を確認できる広さがあるか | 大型フレームは分割して測ると累積が見えない |
| 後工程(めっき・塗装)の熱で動く前提か | 溶融亜鉛めっきは高温の浴に入れるため、応力が解放されて動くことがある |
まとめ
- 溶接歪みは入熱と拘束から必ず生まれる。ゼロにはできない
- 対処は「設計・段取りで減らす」「組立順序で偏りを減らす」「最終で取り切る」の3か所
- 拘束で押さえ込んだ分は残留応力として残り、後工程で動くことがある
- 形鋼のフレームでは曲がりとねじれが出やすい。断面が非対称で溶接が偏るため
- 最終の歪み取りで角度・対角・全長・平面度を仕上げる。この工程の有無が精度を決める
よくある質問
- Q. 溶接の腕が良ければ歪みは出ませんか?
- A. 出ます。歪みは入熱と拘束で決まる物理現象です。腕で変わるのは「出る量のばらつき」と「取り切る精度」で、発生そのものは避けられません。
- Q. 焼きなましをすれば取れますか?
- A. 応力除去焼鈍で残留応力は減らせますが、大型フレームでは炉に入らないことが多く、コストも工期も掛かります。製缶の現場では、組立順序と機械的な歪み取りで仕上げるのが一般的です。
- Q. めっきに出したら曲がって返ってきました。
- A. 溶融亜鉛めっきは高温の浴に浸けるため、残留応力が解放されて動くことがあります。めっき前提の製作では、その分を見込んだ順序と拘束の設計が必要です。めっき後の手直しまで対応できるかも、事前に確認しておいてください。
- Q. 図面にどこまで書けばよいですか?
- A. 平面度・直角度・対角の許容値と、その中でどれを優先するかを書いておくと、製作側が歪み取りの落としどころを決められます。すべてを最優先にはできません。