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列盤で全長が合わない原因|単体公差の累積を止める4つの工程

列盤で全長が合わない原因|単体公差の累積を止める4つの工程

「単体では検査に通ったのに、現場で並べたら全長が合わない」。配電盤・キュービクルの列盤で必ず出てくる問題です。1面ずつは公差内なのに、つないだ瞬間に据え付けできない差になる。原因は単純で、単体の公差がそのまま足し算になるからです。どこで誤差が生まれ、どこで吸収するのかを整理します。

結論:単体精度と列盤精度は別物として作る

単体の公差が +0〜−1.5mm のフレームを、W800 で10面つないだとします。設計上の全長は 8,000mm です。ここで各面が公差の下限に振れると、−1.5mm × 10面 = 最大で −15〜−20mm。単体では「1.5mm なら許容範囲」でも、列盤にすればアンカーの位置が合わない差になります。

つまり「単体を公差内に収める」ことと「列盤の全長を出す」ことは、別の作業です。後者を成立させるには、単体を作る段階から列盤を前提にしていなければなりません。

W800の盤を10面つないだ全長8,000mmの列盤の図。単体公差が累積すると最大−15〜−20mmずれるが、切断精度・穴位置・組立順序・歪み取りの4工程で吸収すれば全長±2mmに収まることを示した図。
図1 単体公差はそのまま累積する。吸収できるのは工程側だけ。

この記事でわかること

  • 単体公差が列盤でどう累積するか
  • 誤差が入り込む4つの工程
  • 外形が合っていても対角が狂うと全長が出ない理由
  • 発注側が図面・指示で伝えておくべきこと

誤差はどこで入るのか

列盤の全長がずれる原因は、1つではありません。順に効いてきます。

1. 材料そのものの寸法

山形鋼・溝形鋼は、ロットによって辺の長さと角度が ±1.5mm 程度変わります。JIS G 3192 でも、辺の長さ 50mm 以上 100mm 未満の山形鋼には ±2.0mm の許容差が認められています。図面どおりに切っても、材料の実寸が違えば組み上がりも変わります。

材料側の許容差は「形鋼の寸法公差はどこまで動くか」で詳しく扱っています。

2. 切断寸法

定尺材からの切断で入る誤差です。材料の実測をせずに図面寸法どおり切ると、1でのずれがそのまま残ります。ロットごとの実測値を踏まえて切断寸法を決めれば、ここで打ち消せます。

3. 穴位置

列盤は連結ボルトでつなぐので、穴のピッチがそのまま面間の距離になります。単体図だけを見て穴を開けると、つないだときに連結穴が通らない、または無理に通して歪む、ということが起きます。

4. 溶接による歪み

組み立てて溶接した時点で、必ず歪みが出ます。放置すれば外形も対角も動きます。最終工程で取り切るのが前提です。

外形が合っていても、対角が狂えば全長は出ない

見落とされやすいのがここです。1面ごとの幅・高さが図面どおりでも、対角が狂っていれば平行四辺形に倒れた枠になります。倒れた枠を並べると、接する面同士がぴったり合わず、隙間が積み上がります。

だから列盤前提のフレームでは、外径と穴ピッチだけでなく角度と対角まで作り込む必要があります。実際に10面列盤 8,000mm で全長 ±2mm に収めている製作事例では、切断精度・穴位置・組立順序・最終の歪み取りという4つの工程に分けて誤差を吸収しています。

4つの工程で何をしているか

  • 切断精度:定尺材から社内で切断し、ロットごとの実測値を踏まえて切断寸法を決める
  • 穴位置:列盤時の連結を前提に穴位置を決める
  • 組立順序:どの順で組めば累積誤差が出ないかを考える。本体とベースの関係も含める
  • 最終歪み取り:溶接歪みを最終工程で取り切り、角度・対角・全長を仕上げる

発注側が伝えておくべきこと

製作側の工夫だけでは埋まらない部分があります。見積・発注の段階で次を伝えておくと、手戻りが減ります。

伝えること 伝えないとどうなるか
列盤にするか、何面つなぐか 単体公差だけで作られ、累積が見込まれない
連結の方法(ボルト位置・添え板の有無) 穴位置が単体基準で決まり、連結時に通らない
優先する寸法(全長/対角/穴ピッチ) すべて同時に最優先にはできず、判断が製作側任せになる
据え付け側の制約(アンカー位置・壁との隙間) 公差の振り方を現場に合わせられない
表面処理の有無と種類 めっき厚の分だけ寸法が変わり、後処理も見込めない

とくに「W800 × 10面」まで伝わっているかどうかで、切断寸法と組立順序の設計が変わります。単体図だけを渡している場合は、面数を添えるだけで結果が変わります。

まとめ

  • 単体公差 −1.5mm でも、10面つなげば最大 −15〜−20mm の累積になる
  • 誤差は「材料の寸法」「切断」「穴位置」「溶接歪み」の4か所から入る
  • 外形が合っていても対角が狂えば全長は出ない。角度と対角まで作り込む必要がある
  • 吸収できるのは切断精度・穴位置・組立順序・最終歪み取りの4工程
  • 発注側は「列盤の面数」「連結方法」「優先する寸法」を伝えておく

よくある質問

Q. 単体の公差を厳しく指定すれば列盤も合いますか?
A. 効果はありますが、それだけでは足りません。材料の許容差は変えられず、公差を詰めるほど単価も上がります。単体を締めるより、列盤を前提にした切断寸法・穴位置・組立順序で設計するほうが現実的です。
Q. 現場で調整すればよいのでは?
A. 数mmなら長穴やライナーで逃がせますが、−15mm 規模になると据え付けそのものが成立しません。また現場調整は工期と人件費に直結します。
Q. 何面までなら対応できますか?
A. 会社の設備と溶接スペースによります。大型の列盤は組み立てたまま精度を確認できる広さが要るので、対応可能な最大寸法と溶接スペースの広さを確認してください。
Q. 分割して搬入する場合はどう考えますか?
A. 分割位置と接合方法を先に決め、分割単位ごとに精度を作り込みます。分割枠として製作した事例もあるので、搬入経路の制約は早い段階で伝えてください。