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形鋼の寸法公差はどこまで動くか|JIS G 3192の許容差とロット差を前提にしたフレーム設計

形鋼の寸法公差はどこまで動くか|JIS G 3192の許容差とロット差を前提にしたフレーム設計

「図面どおりに切ったのに、組んだら寸法が合わない」。形鋼を使ったフレームでは必ず出てくる話です。原因の多くは加工のミスではなく、材料そのものの寸法が動いていることにあります。JIS G 3192 は山形鋼・溝形鋼にどこまでの許容差を認めているのか。そして、その許容差を前提にフレームをどう組むのか。配電盤筐体や架台の発注で押さえておきたい考え方を整理します。

結論:形鋼は「公称寸法どおり」では届かない

図面に L-65×65×6 と書いても、実際に届く材の辺長が 65.0mm ちょうどになることはまずありません。JIS G 3192(熱間圧延形鋼の形状、寸法、質量及びその許容差)は、辺の長さ 50mm 以上 100mm 未満の山形鋼に ±2.0mm の許容差を認めています。厚さも、長さも、直角度も、それぞれ許容差の範囲で動きます。

つまり「規格品を買えば同じ寸法の材が届く」という前提が、そもそも成り立ちません。ここを見込まずに設計・切断すると、単体では合っていたフレームが、並べた瞬間に合わなくなります。

この記事でわかること

  • JIS G 3192 が山形鋼・溝形鋼に認めている許容差の具体的な数値
  • 実務でロット差がどのくらい効いてくるか
  • 単体で合っていても列盤で全長が狂う仕組み
  • ばらつきを吸収するために製作側が押さえている4つの工程
  • 発注側が図面・指示で伝えておくべきこと

JIS G 3192 が認めている許容差

等辺山形鋼 L-65×65×6 の断面図。JIS G 3192 では辺の長さ A・B に±2.0mm、板厚 t に±0.7mm、直角度に辺Bの2.5%(約1.6mm)の許容差が認められていることを示した図。
図1 JIS G 3192 が山形鋼に認めている許容差。辺の長さ・板厚・直角度のすべてに「動く幅」がある。

辺の長さ(A・B)は最大 ±4.0mm 動く

山形鋼の辺の長さの許容差は、辺のサイズによって段階的に決まっています。

辺の長さ A・B 許容差 該当する主なサイズ
50mm 未満 ±1.5mm L-25×25、L-40×40 など
50mm 以上 100mm 未満 ±2.0mm L-50×50、L-65×65、L-75×75 など
100mm 以上 200mm 未満 ±3.0mm L-100×100、L-150×150 など
200mm 以上 ±4.0mm L-200×200、L-250×250 など

配電盤筐体でよく使う L-65×65×6 は「50mm 以上 100mm 未満」に入るので、辺長が 63.0mm〜67.0mm の範囲で規格内ということになります。4mmの幅があると考えると、感覚よりかなり大きいはずです。

厚さの許容差は辺のサイズでも変わる

厚さ t 辺A が 130mm 未満 辺A が 130mm 以上
6.3mm 未満 ±0.6mm ±0.7mm
6.3mm 以上 10mm 未満 ±0.7mm ±0.8mm
10mm 以上 16mm 未満 ±0.8mm ±1.0mm
16mm 以上 25mm 未満 ±1.0mm ±1.2mm
25mm 以上 ±1.0mm ±1.5mm

見落とされやすいのが「直角度」

寸法の話になると辺長と厚さに目が行きますが、フレームの精度に効いてくるのは直角度です。JIS G 3192 は山形鋼の直角度を「辺B の 2.5% 以下」と定めています。

  • L-65×65 なら 65 × 2.5% = 約1.6mm
  • L-100×100 なら 100 × 2.5% = 2.5mm

この分だけ「angle(角)が開いている/閉じている」材が、規格内として届きます。辺長がぴったりでも角度が寝ていれば、組み上げたフレームの対角は合いません。フレーム精度の話で「外径と穴ピッチだけでなく角度と対角まで見る」と言われるのは、この許容差が理由です。

定尺材の長さは 11m で最大 +60mm

長さの許容差は「7m 以下で +40/−0mm」、7m を超える分は 1m 端数ごとにプラス側へ 5mm 加算されます。11m の定尺材なら +60/−0mm です。長さは常にプラス側にしか振れないので、切断側が実測してから寸法を決める前提になります。

出典:JIS G 3192「熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差」。数値は同規格の山形鋼の許容差にもとづきます。実際の発注では最新版の規格をご確認ください。

実務では「辺長・角度で ±1.5mm 程度」動く

規格の上限いっぱいまで振れることは多くありませんが、製缶の現場ではロットが変わると辺の長さと角度が ±1.5mm 程度変わるという感覚で扱われています。同じ規格・同じサイズを発注しても、入荷時期が違えば別の寸法の材が来る、ということです。

厄介なのは、この差が「ロット単位で揃って」出ることです。1本ずつランダムにばらつくのではなく、同じロットの材はまとめて同じ方向にずれます。だから1本だけ実測して問題なければ大丈夫、とはなりません。

実際にこのばらつきを見込んで製作している例として、創業78年の製缶メーカーが公開しているアングルフレーム製作の精度・公差の考え方が参考になります。形鋼が「同じ材ではない」ことを前提に、切断寸法と組立順序を決めるという工程設計が具体的に説明されています。

単体では合うのに、列盤にすると全長が狂う

配電盤・キュービクルで問題になるのが、盤を横に並べる「列盤」です。単体の精度が出ていても、つないだ瞬間に全長が合わなくなることがあります。

たとえば単体公差が +0〜−1.5mm のフレームを、W800 で 10面つないだ場合を考えます。設計上の全長は 8,000mm です。

公差がそのまま累積すると

−1.5mm × 10面 = 最大で −15mm 〜 −20mm

単体では「1.5mm ならまあ許容範囲」でも、10面つなげば現場で据え付けできない差になります。

ここで効いてくるのが、さきほどの直角度です。角度が寝ている材で組んだフレームは、外形寸法が合っていても対角が狂います。対角の狂いは1面ごとにわずかでも、列盤では通し寸法として積み上がります。

単体精度と列盤精度は別物として作り込む必要がある、というのはこの意味です。実際に10面列盤 8,000mm で全長 ±2mm に収めている製作事例では、公差が累積する前提で切断精度・穴位置・組立順序・歪み取りの4工程に分けて吸収しています。

ばらつきをどこで吸収するか

材料の寸法が動くことは変えられません。変えられるのは「どの工程で吸収するか」です。形鋼フレームを精度よく仕上げている現場は、おおむね次の4点を押さえています。

1. 切断精度

定尺材から社内で切断し、ロットごとの実測値を踏まえて切断寸法を決める。材料の実寸を見ずに図面寸法どおり切ると、ここで最初のずれが入ります。

2. 穴あけ

列盤で連結することを前提に穴位置を決める。単体の図面だけを見て穴を開けると、つないだときに連結穴が通りません。

3. 組立順序

どの順で組めば累積誤差が出ないかを考える。本体とベース(チャンネルベース)の関係も含めて順序を決めます。

4. 最終歪み取り

溶接で必ず歪みは出るので、最終工程で取り切る。ここで角度・対角・全長を仕上げます。逆に言えば、歪み取り工程を持たない現場では、材料のばらつきをそのまま製品が引き受けることになります。

発注側が図面・指示で伝えておくべきこと

製作側の工夫だけでは埋まらない部分もあります。見積・発注の段階で次の3点を伝えておくと、手戻りが減ります。

  • 列盤の有無と面数:単体図しか出ていないと、製作側は連結時の累積を見込めません。「W800 × 10面」まで伝わっていれば、切断寸法と組立順序の設計が変わります。
  • どの寸法を優先するか:全長を優先するのか、穴ピッチを優先するのか。すべてを同時に最優先にはできないので、基準面と優先順位を指示します。
  • 表面処理の後工程:溶融亜鉛めっきを行う場合、めっき厚の分だけ穴やねじが埋まります。めっき後の穴あけ・タップ切り直しまで含めて依頼できるかを、発注前に確認しておきます。

まとめ

  • JIS G 3192 は山形鋼の辺の長さに ±1.5〜±4.0mm、直角度に「辺B の 2.5% 以下」の許容差を認めている
  • 実務ではロットが変わると辺長・角度が ±1.5mm 程度動く。しかもロット単位で揃ってずれる
  • 単体公差 −1.5mm でも、10面つなげば最大 −15〜−20mm の累積になる
  • 吸収できるのは、切断精度・穴あけ・組立順序・最終歪み取りの4工程
  • 発注側は「列盤の面数」「優先する寸法」「めっき後処理の要否」を伝えておく

よくある質問

Q. ミルシートがあれば寸法は保証されますか?
A. ミルシートは化学成分と機械的性質の証明書で、個々の材の実寸法を保証するものではありません。寸法は JIS の許容差の範囲で振れます。寸法精度が要る場合は、製作側で実測してから切断・組立に入る前提で考えてください。
Q. 公差を厳しく指定すれば解決しますか?
A. 材料そのものの許容差は変えられないので、指定を厳しくするだけでは解決しません。ばらつきを見込んだ切断寸法の決定と、最終の歪み取りで作り込むことになります。どの寸法を優先するか(全長/対角/穴ピッチ)を指示するほうが実効性があります。
Q. 溝形鋼(チャンネル)でも同じですか?
A. 同じ JIS G 3192 で許容差が定められており、考え方も同様です。チャンネルベースは架台の基準面になることが多いので、直角度と曲がりの影響がフレーム全体に波及します。
Q. 1個だけの特殊フレームでも対応してもらえますか?
A. 会社によります。形鋼のフレームを日常的に扱っている製缶メーカーであれば、1個からの試作にも対応しているところがあります。