人材で製造業の未来をつくる。
心・体・技を伸ばす独自のカリキュラムで
製造業を支える仕組みを構築。

株式会社ワールドインデュース 製造業向けの構内請負サービス、技能工育成

飛田野尚樹

都道府県
岐阜県
事業内容
製造業向けの構内請負サービス、技能工育成
会社名
株式会社ワールドインデュース
代表者名
清水貴士
所在地

〒500-8856

岐阜市橋本町2-8濃飛ニッセイビル6階

電話番号
058-255-3611
ホームページ

https://world-gr.com/group/worldinduce/

Factory Stories

製造業を『人』で支える会社

構内請負などをおこなうワールドインデュース。常務執行役員の飛田野尚樹は請負事業や派遣事業の責任者をしている。
ワールドインデュースはワールドの別事業体として2005年に設立された。
「ワールドは現社長・清水貴士の父親・清水勝利が1991年に創業しました。以前は別の事業をしていましたが、時代の流れにより人材サービスが伸びるだろうと判断したと聞いています」
1990年の入管法改正により、日系三世ブラジル人が日本で暮らすことができるようになったことで、労働力を必要としている製造業と日本で働きたいブラジル人をつなぐことでワールドも成長してきたという。
ワールドではオペレーター人材を派遣し、ワールドインデュースでは工場内での業務請負事業を行うことで企業の人材不足の解消に貢献してきたのである。

お客様の構内で溶接業務を請け負う

構内請負は、ワールドインデュースが客先の構内に駐屯して製造工程の一部をおこなう形だ。
現在請け負っている中でお客様から評価いただいているのは製缶加工である。
ワールドインデュースが『溶接』に特化して構内請負をスタートさせたのは、人材派遣業務の中で多くの製造現場の声を聞いてきたからだ。
お金をかけて経験のある溶接工を採用してもなかなか定着しない。未経験者を採用して育成することが難しい。という声が多かったんです」
製造における業務の中でも溶接は自動化が難しく技術力が必要となる。
必要とされている職種だからこそ、より良い条件を求めて転職してしまい定着が難しいのだという。
そんなお客様の声を聞き、ワールドインデュースでは溶接技術の習得に必要な時間を調査した。
「およそ1か月で基本を習得できるとわかったんです。思ったより短い期間だったので、溶接工の育成にチャレンジすることにしたんです」
そうして2012年に『テクニカル道場』をつくり、溶接工の育成をはじめたのだ。

溶接の基礎をマスターできる
テクニカル道場

「手作業である溶接はなかなか代替が効かないため、この先も世の中に必要とされる技術だと思います。それに溶接は設備投資が比較的抑えられます。これらのことからチャレンジする価値があると判断しました」
テクニカル道場は岐阜県大垣市にあり、半自動溶接4台、TIG溶接2台、NC旋盤など技術習得に必要な機械を取り揃えている。
専任講師は現役時代に製造工場の立ち上げも経験している溶接のスペシャリストだ。
「JIS規格の溶接資格の基本級は合格できるレベルを目指しており、実際に合格率は90%ほどです」
また、マネジメントをおこなってきた経験を生かした教育プログラムにより、溶接の知識や技術だけでなく、製造工場で働くための心構えなどもカリキュラムに組み込んでいるという。

『心技体』ではなく『心体技』

テクニカル道場で掲げるのは『心体技』だ。
まずは心を整えることが大事、工場で働く上では体力も必要だと考えています。実際にカリキュラムには体力づくりも組み込んであるんですよ」
心を育てるためにまずはあいさつなどの基本を徹底するという。
技術があればコミュニケーションは必要ないと考える人もいるかもしれない。
コミュニケーションが取れないと人間関係を作ることができません。そうすると仕事を教えてもらえなかったり、何かあったときにフォローしてもらえなかったりする可能性があります。そのためにストレスが蓄積して辞めてしまうことがあるんです」
コミュニケーションの第一歩であるあいさつからはじまり、安全や品質などに対する考え方などまで広げていく。
「現場ではコミュニケーションについて根気よく伝えることができません。でも道場ならば言い続けることができますからね。言ってあげないと気付かないことも多いと思いますよ」
そして、心に続いて育てるのが体力だ。
製造業では立ち仕事が多く、構内を歩き回ることも多い。溶接ならば溶接棒をブレないように構えて作業する体幹も必要になる。
テクニカル道場では、技術を身に付ける土台となる心や体から育てているのだ。

顧客の社員教育へ

テクニカル道場は顧客からも高い評価を受けている。
ベース教育ができているためベテラン工員も仕事を教えやすいのだ。
「道場を出てもベテランレベルには至りません。しかし、基本的な考え方と技術があるので、先輩の指摘やアドバイスを理解できるんです」
そのため道場を見学した企業から社員教育に利用したいという依頼も来るようになった。
「採用後OJTになることが多いですが、現場は忙しく教えるプロもいません。そのため育成がうまくできずに困っている企業様があるようです」
そうした声を受け、今後は溶接工の育成に困っている企業の社員教育の場に広げていこうとしている。

人材の新しい道を提供する場所

テクニカル道場は企業側だけでなく、そこで学ぶ人材にとってもメリットが大きい
「溶接の技術は奥深いです。だからこそやりがいを感じられると思います。また身に付けた技術はその人の財産になります。極めていけばひとり親方として独立することも可能な業種です」
テクニカル道場によって新たな道を切り開くことができるのだ。
そしてスキルが上がると加工スピードが速くなったり、溶接部の見栄えが良くなったりと自身の成長を実感できる。
「道場でも自分の成長を感じてもらえるようなプログラムにしています。道場で溶接の楽しさややりがいを感じた人材が製造の現場でどんどん活躍していただけるとうれしいですね」
今となってはテクニカル道場が口コミで広がり、県外の企業から毎年リピートが来るほどで、テクニカル道場卒業生は自社の社員も含めて約300名にまでになった。

人材と経験で製造業をサポート

飛田野は多くの企業と対話をする中で、中小企業の疲弊を感じることがあるという。
疲弊の理由のひとつに人材不足があると思っています。大企業には人が集まるけれど中小企業には人が来ない…それが続くとどんどん格差が広がっていってしまいます。しかし、中小企業が元気でなければ大企業もモノをつくることができないんです」
このような状況を打破するために、中小企業も意識を変えていく必要があると考えている。
「いい人が採用できない、採用しても辞めていってしまうというお悩みをよく聞きますが、そんなに都合良くいい人は採用できません。そうではなくいい人に育てるという姿勢がこれからは大事だと思っています」
テクニカル道場を始める以前は10人採用しても8人が辞めてしまうということもあった。しかし、テクニカル道場を始めてからは10人採用して8人が残るようになり状況は逆転した。これは、技術だけを教えるのではなく、心や体を鍛える仕組みがテクニカル道場にあるからだろう。
自動化が進む中でものづくりには人の手が欠かせない部分も多数存在し、溶接はその際たるものだ。
溶接技術は高度な技術と豊富な経験が必要となる。
そんな溶接工を生み出してくワールインデュースのテクニカル道場は、今後も製造業を下支えする存在としてありつづけるだろう。