お客様の要望に応えられる柔軟性。
徹底した検証と改善で不良品ゼロを目指す生産体制。
株式会社ワカエ プレス加工、エッチング加工、表面処理加工
阿部 秀臣
- 都道府県
- 東京都
- 事業内容
- プレス加工、エッチング加工、表面処理加工
- 会社名
- 株式会社ワカエ
- 代表者名
- 阿部 秀臣
- 所在地
-
〒142-0062
品川区小山
- 電話番号
- 03-3782-7320
- ホームページ
Factory Stories
変化をしながら受け継がれて約60年。
株式会社ワカエは創業から60年以上の歴史を持ち、現在は三代目の阿部秀臣が手腕を振るっている。
創業当時からプレス加工を続けているが時代とともに様々な変化があった。
「創業当時は自動プレス加工がなかったので、たくさんの金型を使って何工程もかけて製造していたようです。それこそ人海戦術のような感じですね」
また、製造している部品も変化している。
創業者である阿部の祖父はテレビなどの家電製品の部品を中心に製造していた。父の代ではパソコンや携帯電話の部品が主流になったという。
そして現在は主に自動車部品を製造している。
自動車部品の中でもワカエが製造しているのは、ブレーキ関連の基板に利用される非常に小さなものだ。
「かなり小さいですよ。手のひらに20~30個くらい乗せられるような大きさです」
このような小さな部品をプレス加工で製造できることこそ、脈々と受け継がれているワカエの技術力の表れなのではないだろうか。
他社が断念した加工を成功させた力
ワカエの技術力がわかる例がある。
一般的にプレス加工の限界は、材料厚0.5mmでプレスの抜き幅0.5mmといわれている。
ところがワカエでは材料厚0.64mm、プレスの抜き幅0.5mmで、一度に11カ所抜く加工を成功させているのだ。
「0.5mmといえばシャーペンの芯の太さです。そんな0.5mmのパーツで厚み0.64mmの金属を抜くんですから、普通に考えれば金型が壊れてしまいますよね」
しかも困難なのはそれだけではなかったという。
プレスで負荷のかかる加工をする課程で金属の細かなカスが出る。それが金型の中に落ちると打痕が発生してしまう。
依頼では、その打痕が出ないようにして欲しいと言われた。さらに平らな部分を押して平坦度を上げて欲しいというのだ。
「平坦を出すために平らなパーツで押せばさらに打痕になる可能性が高くなります。正直、とても矛盾した依頼だったんです」
とても難しい依頼内容だったため、他社では引き受けてもらえなかったのだという。
困難に立ち向かったきっかけ
無謀とも思える依頼を請けたのは、やるしかないという状況だったからだという。
「お客様にとっては社運をかけるほどの大事な仕事でした。他で断られていたのでうちでやるしかないという状況だったんです。うちも売上が良くなかったので、その仕事に社運がかかっていました。うちが成功させられるか否かに2社の運命がかかっていたんです」
そんな阿部の決意を協力会社の金型会社も後押ししてくれたという。
そうして取り組んだ困難なチャレンジは一筋縄ではいかなかった。
「最初にプレスしたときは金型が壊れました。大破したという感じでしたね」
そこから金型の調整や抜き方を工夫することでなんとか生産に漕ぎつくことができた。
それでも不良率が高かったため、何度もトライアンドエラーを繰り返して安定して生産できる体制を確立したのだ。
大切なのは「スキル」ではなく「問題解決力」
プレス加工において、製品の品質を決めるのは金型の善し悪しが半分、残りの半分は生産工程にあるという。
「良い金型があるだけでは、良い製品はつくれないんです。そして、生産工程で大切なのは、単純なスキルではなく問題が発生したときにそれを解決できる力だと思っています」
そのために阿部は従業員とコミュニケーションを取り、どんな問題があるのか、どうすれば解決できるのか意見を交わす。こうしてトライアンドエラーを重ねることで他社では不可能とされた難しい部品製造も成功に導くことができたのだ。
そして、従業員とのコミュニケーションだけでなく、協力会社とのコミュニケーションも大切にしている。
「協力会社と良い関係を築くよう従業員にも話しています。協力会社がいなくなったら、当社の強みもなくなってしまいますからね。それに、何かの問題が起きたとき、協力会社とコミュニケーションをとることでヒントをもらえることもあるんです」
ワカエの技術力は、コミュニケーションによって支えられ、伸ばされているのだ。
部品加工に関するお客様の相談窓口
ワカエの強みのひとつは、プレス加工以外の加工業務も幅広く受け入れられることだ。
協力会社と緊密な連携を取り、ワカエが窓口となってワンストップで業務を請けられる体制を整えている。
このような体制をつくったきっかけは、お客様からプレス加工以外の相談を受けたことだったという。
専門外の相談ならば断ることもできただろう。それを受け、段取りをするのは想像以上に労力のかかる作業だ。
「大変さもありますが、エッチングや表面処理の仕事を請けると勉強になるんですよ。加工に関する幅広い知識を持つことで、お客様にいろいろな提案ができるようになるんです」
お客様にとっては「ワカエに声を掛ければいい方法を提案してもらえる」という簡便さを感じてもらえるだろう。
お客様にとってもワカエにとっても、そして協力会社にとってもメリットのある仕組みなのだ。
不良品を出さない量産技術
協力会社で製造した製品をワカエで組み立てたり納品したりするため、生産において改善できそうな点があれば提案することもあるという。
これはワカエが不良品を出さないスタンスで業務に取り組んでいるからできることなのかもしれない。
どのような製造においても、どうしても不良品が出てしまう。そのため、検査をして不良品が納品されないようにするのだ。
「検査に時間を掛けるよりもモノづくりに時間を掛けて不良率を下げた方が良いと思うんです」
そのために、不良品が出たときにはどの工程で出たのか、何が理由なのかを検証して、どうすれば改善できるのか検討していく。
こうして不良品が出にくい工程を組み立てることは全体の品質改善や品質保持に大きな影響を与えているのではないだろうか。
お客様の要望に応え続けられる会社に
約60年前に家電製品の部品製造からスタートしたワカエは、お客様の要望に応えながら変化を続けて来た。
試作から量産まで、またプレスだけでなくエッチングや表面加工など幅広い依頼を請けられる体制を構築したのもお客様の要望に応えるためだ。
困難な加工を成功させたこともお客様の要望に応えた結果である。
「会社の今後に対して大きな目標はありません。ただ、これからもお客様の要望に応えられるよう、創意工夫していくことが、当社がこの先も長く続けていくための鍵だと思っています」
こうしてお客様の要望に応え、お客様が抱える問題を解決できること。そしてそれを喜んでもらえることがモノづくりの楽しさ
だという。
モノづくりの業界では、廃業する会社は増えても新しくはじめる会社は少ない。
長くモノづくりを続けてきたワカエをひとつのモデルケースとして、モノづくりの楽しさや魅力を知り、モノづくりに夢を抱く若者が増えていくことを期待したい。