ツジオカの一番の強みは『社員』
『ツジオカ家の心』を芯にして、
製造業のイメージを変えたい。

株式会社ツジオカ 工場機械・産業用部品等の製造

辻岡 慧祐

都道府県
愛知県
事業内容
工場機械・産業用部品等の製造
会社名
株式会社ツジオカ
代表者名
辻岡 慧祐
所在地

〒483-8013

江南市般若町南山371番地

電話番号
0587-59-6511
ホームページ

https://www.tsujioka-co.jp/

Factory Stories

株式会社ツジオカのルーツ

株式会社ツジオカは、三代目・辻岡慧祐の祖父が1965年に創業した。
終戦後、戦地から帰った祖父は家族を養うためにタクシー運転手や煙突掃除など様々な仕事をしたが生活は苦しかったという。そんな中、ヤスリ1本で『バリ取り屋』として独立したのだ。当時は4人の子どもたちもバリ取りの仕事を手伝っていたという。

そこから少しずつ事業規模を大きくしていき、1978年には江南市に工場を建てるまでになった。工場を構えたことで、地域の機械メーカーとのつながりが増え、業務範囲や事業規模をさらに増やしていった。
慧祐の父親が1982年に二代目社長に就任した頃に工作機械や産業機械の外装を製造する現在の業態が完成したのだ。
修行のため他社で勤めていた慧祐は2011年にツジオカに入社し、2020年に社長に就任した。

切断から組み立てまでの一連の業務を請け負える体制

ツジオカでは鉄板をパーツに切断するところから、曲げ、溶接、塗装までの一連の作業おこない、顧客の希望によっては組み立てまで対応する。
板金だけ、塗装だけというように専門の業務のみを請け負う業者が多く、すべての工程を一括で請け負える体制が整えられている会社は少ない。
機械メーカーにとっては、ワンストップで発注ができるため製造管理や品質レベルの管理などの負担が大きく削減する。これはツジオカの大きな強みだ。
だが、慧祐は「当社の一番の強みは『社員』です」と語った。

社員の強みは『当たり前のことを当たり前にできること』

お客様に納得してもらえる品質を保つこと。納期を守ること。そんな『当たり前のことを当たり前にできる』ことがツジオカの強みだという。
そんなツジオカだからこそ、お客様は信頼感と安心感を持って仕事を依頼することができる。

『当たり前のことを当たり前にやる』のは言葉ほど簡単ではない。
多くの工程があり、約50名もの社員が集まればトラブルも起きるだろう。
それでも『当たり前』にできるのは、社員たちの高い意識があるからだ。そんな社員たちが集まっているのは働きやすい風土があるからだろう。

雰囲気の良い会社づくりは『人の心』から

慧祐が大切にしているのは『人の心』だ。
社員のことを気にかけ、あいさつの声や表情などから変化を感じたら声をかけるようにしている。
「社員たちが弟のような感覚なんです。困っていたら助けたいし頼られたいんですよ」 慧祐の人としての生き方を見て社員たちは信頼できる人物なのかを判断し、ついてきてくれるのだという。

「会社の雰囲気はトップに左右されると思います。トップが楽しそうだとみんなも楽しそうな雰囲気になります」
このことに気付いたのは、慧祐が社長に就任する前年に経験した同友会の地区会長だった。メンバーが地区会長の姿をしっかりと見ていると感じたのだ。
「トップがどれだけ本気かで組織の動き方も変わります」
事業継承では問題が起きることもあるが、ツジオカはスムーズに事業継承をすることができた。
若手のリーダーたちが中心になって、みんなで新社長を盛り立てていこうという姿勢を見せてくれたという。
「社員たちが新社長を支えようという気持ちを持ってくれたのは、先代社長がそういう環境をつくってくれていたのかもしれません」

代々受け継がれる『ツジオカ家の心』

『ツジオカ家の心』と呼ばれるイラストがある。
これは創設者の祖父、父親そして慧祐へと脈々と受け継がれている『心』だ。
祖父は社員の家族を家に招いて一緒にごはんを食べることがあった。
父親はがんで闘病中の社員にも給料を払い続けた。

社員はもちろん、社員の家族まで自分の家族のように接する気持ちが『ツジオカ家の心』なのだ。
その心はツジオカで働く社員たちの人生に対する責任だ。
そんな温かみのある会社だからこそ、社員たちも安心して働き、その力を存分に発揮できるのだろう。

10年前の社内環境はギクシャクしていた

今では想像できないが、慧祐がツジオカに入社した当時の社内の雰囲気は悪かったという。 工程ごとに工場が違うため工場同士が別の会社のようだった。工場同士で責任をなすりつけ合うケンカをすることもあったという。そして製造に2か月ほどの遅れがあった。
最初の切断工程でも遅れが出てため、その理由を尋ねると「たくさんの仕事を出すお客さんが悪い」という答えが返ってきたという。
納期遅れが慢性化しているにもかかわらず、社員の欠勤が多く、社員全員が揃う日がないほどだった。
この状況に慧祐は危機感を覚えた。 社員の意識を変えなければと思い奮闘したが、意識を変えることはできなかった。
社長の息子とはいえ、入社したばかりの慧祐の声は社員たちの心には届かなかったのだ。

そんなとき慧祐と社員の間に起きたトラブルの仲介をしてくれたのが当時の部長だった。
慧祐はその部長が意識を変えるべき大元のように思っていたが、そのトラブルをきっかけに歩み寄ることができた。
そこから社内に強い影響力を持っていた部長と協調して社員の意識改革を進められるようになったのだ。そして部長自身も意識も変化していった。
そうして2011年には2か月ほどの納期の遅れがあったものを、2013年には解消することができた。

現在の課題も『人』にある

ツジオカは離職率が低い。それでも今のツジオカが抱えている課題は『人』だという。
外国人の社員は採用できるのだが日本人の社員採用が難しいのだ。
「工作機械や産業機械の業界は採用が難しいんですよ。若い人たちに振り向いてもらわないと……」

TikTokをやっているのも若い人に振り向いてもらうためのひとつだという。
同時に2025年のビジョンを掲げて、ツジオカの企業価値を高めていこうとしている。
機械板金業のイメージを変え、地域の人たちから「ツジオカに入社したい」「ツジオカで働けるなら安心だね」と思われるような会社になりたいのだという。

ツジオカのこれから

これから10年程で日本の中小企業の働き方は変わってくるだろうと慧祐は予想している。 そのため外国人と日本人が共創できる組織体制を目指しているところだ。

だが慧祐が本当に望む未来は、社員たちがみんな仲良く仕事をしていくことだ。
いつも一緒に仕事をしている仲間たちと毎年一緒に1歳ずつ年を重ねていく。
会社を拡大させていくよりも、仲間と呼べる社員たちが少しでも豊かな生活を送れるようにして、ともに年を重ねていきたいという。

来年、大学新卒で入社するのは、慧祐が毎朝寄っているコンビニでアルバイトをしていたらしい。雑談の中で採用が難しい話をしたら「僕じゃダメですか?」と言ったという。
そんな慧祐の人柄と、そんな慧祐を支えていこうとする社員たちならば、思い描いている未来を実現することができるのではないだろうか。