タイルで磨いた炉のスペシャリスト。
タイル事業とソリューションビジネスの両輪で
イノベーションを加速させる。
新興窯業株式会社 磁器質床タイル及び磁器質壁タイルの製造
津田健太
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 磁器質床タイル及び磁器質壁タイルの製造
- 会社名
- 新興窯業株式会社
- 代表者名
- 津田健太
- 所在地
-
〒488-0066
尾張旭市南原山町赤土
- 電話番号
- 0572522381
Factory Stories
新興窯業の歴史
新興窯業の歴史は長い。
創業は1913年。松原製陶所として理化学磁器や食器を製造していた。
現在の主事業であるタイル製造をはじめたのは戦後の復興期の頃だ。
1947年に株式会社を設立した後、タイル製造に一本化していった。
「戦後の復興期で建築建材の需要が高まったことでタイル製造を手掛けるようになったそうです」
その後、1963年には伊奈製陶(現:LIXIL)と業務提携をしたことでさらに大きく飛躍することとなった。 伊奈製陶は市場シェアでも技術面でも日本トップクラスだったからだ。
「当時はタイルの製造技術が未熟だったので、タイルのことを学びながら一緒に成長してきました」
急成長を遂げたタイル製造
尾張旭市の本社工場でタイル製造をおこなっていたが、生産量が増えて賄いきれなくなった。そこで岐阜県土岐市の柿野工場に生産拠点を移すことになったのだ。
1984年に第1棟を竣工し、1986年に第2棟を竣工した。
当時はこの2棟で生産する予定だったが需要に比べて生産キャパシティが不足していたため、さらに工場を追加することになったという。
「すごく勢いがあって、毎年のように工場を建てて、新入社員もすぐに工場長になるような感じだったようです」
タイルを製造するほどに売れていき、仕事は大変だったがとても充実していたそうだ。
「当時いた人は、INAX(前:伊奈製陶)から色々教えてもらって、人間的な関係もすごく密度が高くていい時代だったと言っています」
そうして1991年には第5棟が竣工したのだが、バブルが崩壊したことで快進撃は止まった。
日本屈指のタイル製造技術
新興窯業は乾式成形による磁器質タイルを製造しており、複数ある原料を自社で調合することができる会社は新興窯業とLIXILの他には1~2社しかないという。
「乾いた状態で原料を混ぜ合わせていく工法です。土にちゃんと向き合って管理しなければいけませんし、窯との相性もあります。様々な点に注意を払ってコントロールをしなければ品質の良いものがつくれないんですよ」
昔は乾式調合をする製陶メーカーは多くあったらしい。
しかし、そのほとんどが原料メーカーに原料の調合を任せていたのだ。
新興窯業では原料の調合から成型も焼成もすべて自社でおこなっている。さらに焼成するための窯(炉)のメンテナンスも自社で行う。
「調合の割合や焼き方など、どんな状況でどんな状態になるのかの経験とデータが当社にはあるんです。だから、色や寸法、意匠など、作りたいものを作るためにどうすれば良いのかを導き出すことができます」
ディーゼルエンジン開発からタイル製造へ
2021年に社長就任した津田健太は、元々デンソーでディーゼルエンジン部品の開発をおこなっていた。
エンジンの根幹部分の開発をおこなっていたため、自動車メーカーの技術者とも活発にやり取りをして、多くの場面にかかわることができたという。
その後、労働組合に出向した際、デンソーのセラミック関係の開発に携わる人と話したときに、新興窯業のことを耳にしたのだ。
「焼く技術はデンソーよりも新興窯業の方があると聞いたんです。デンソーは本当にどんなものでも作ることができる会社だという自負もあったので驚きました。でもよく考えるとエンジンでも内燃機関の燃焼は実際には見られないんですよ。その状態を知るためには経験と実績のある職人の勘が必要なのだと思いました」
そうして津田は新興窯業に興味をもつようになったのだ。
その後、新興窯業について調べ、何度か会社にも足を運んで雰囲気を確認した。現会長の松原義明とも話をしたという。
新興窯業のモノづくりの姿勢や、津田自身が阪神淡路大震災を経験したことで地震に強い家づくりに関心があったこと、そしてデンソーで開発をしてきた経験を生かせるのではないかと考えて転職を決意したのだ。
他社には真似できない新興窯業の強み
新興窯業の技術を感じられる製品のひとつに細割ボーダータイルがある。 乾式調合による色合いと成型後に割る技術は他社ではなかなか真似をすることができない。
型を使って作った似た形状のタイルでは、実際に割ることでできるエッジや不連続な表情を表現することは不可能だ。
「20年ほど前に開発したタイルですが、今でも同じようなことができるのは1社か2社だと思います」
このタイルには思い通りの色を出すための調合、成型しただけのもろい状態で細長く割る技術、それを焼成して仕上げるノウハウなど多くの知識と技術が詰まっているからだ。
「タイルを割る装置も自社で開発しているんです。当社は、設備や装置まで自社開発するカルチャーがあります。それこそが製品に高い付加価値を付け、他社には真似できない強みです」
タイル製造の経験と技術を生かす新事業
タイル製造で培った高い技術と多くの経験を活かし、受託加工事業やリサイクル事業などのソリューションビジネスにも取り組んでいる。
「焼成は原料を焼くことで化学変化させて新しい素材を作ることです。この技術は他社の製品開発にも役立てることができます」
たとえば研究によってできた素材を量産するために新興窯業の経験と技術が生かされる。
「少量でできたことでもスケールアップすると全く違うんです。炉の温度の上がり方や入れるものの量や配置、加熱によって発生するガスなど、炉内の空気の対流など、シミュレーションではわからないものをゴールに着くまで考えるチカラが必要です」
素材と向き合い、技術と向き合い、窯と向き合い続けてきた新興窯業だからこそ持っているチカラなのだ。
そのため、新しい素材をつくるサポートをしてほしい会社や設備投資のリスクを避けて量産段階に進みたい会社などが新興窯業に依頼をするという。
両輪があるから前に進むことができる
新興窯業の売上規模は、タイル事業とタイル以外でおよそ7:3だという。 津田はこの比率を5:5ほどにしていきたいと考えている。
「単純にタイル事業を縮小するということではありません。実際にタイル事業にDXやインクジェットなど新しい技術の導入を積極的におこなっています」 これはタイル事業と受託加工等の事業が新興窯業にとって両輪でありどちらも欠かせないものだからだ。
「お客様が作りたいものを支援することは社会のイノベーションを加速させる社会的価値の高い事業です。これをおこなうためにはタイル事業の経験は欠かせません」
タイル製造や量産をする技術や経験があるからこそソリューションビジネスができる。ソリューションビジネスで生まれたアイデアや挑戦をタイル製造にフィードバックすることで、さらに技術と経験値を上げていく。
津田はタイル製造とソリューションビジネスを両輪に、さらなる成長を目指しているのだ。