期間内にきっちり仕上げる段取力。怪しい箇所を発見したら作業を止めて報告する勇気。
メンテナンス業務は、プラント・工場の機械のドクター。

有限会社シミズ工機 工場・プラントメンテナンス

清水優

都道府県
愛知県
事業内容
工場・プラントメンテナンス
会社名
有限会社シミズ工機
代表者名
清水優
所在地

〒459-8001

名古屋市緑区大高町字中ノ島39-1

電話番号
052-602-4355
ホームページ

https://shimizukouki.com/

Factory Stories

シミズ工機のルーツ

火力発電所のバルブメンテナンスなど、プラントメンテナンスや工場メンテナンスを請け負うシミズ工機は1984年に清水優の父親が創業した。勤めていた会社を退職し、その会社の下請けとしてのスタートだった。
父親の独立を機に、高校を卒業して働いていた優の弟・浩之も父と共に働きはじめた。
父親が独立したとき、大手プラントサービス企業に勤めていた優も父と共に働くことを決めたのだ。
「昨日まで元請け企業の事務所にいた人間が、次の日から下請け業者の詰め所にいたんですよ」
父親から一緒にやろうと言われたわけではなかった。それでもまだ21歳だった優は迷うことなく、父親、弟とともに新しい一歩を踏み出す決意をした。

大きさも種類も多様なバルブのメンテナンス

プラントメンテナンスを請け負う元請け企業の下には色々な専門会社がいる。電気、発電機、ボイラー、タービンなどだ。そしてシミズ工機はバルブを専門としている会社の下請けとして、バルブメンテナンスの仕事を請け負った。 主に火力発電所のバルブのメンテナンスをおこなっていた。
ひと口にバルブと言っても、水道の蛇口のような小さなものから人が入れるような大きなものまである。

 

「ひとつの火力発電所で、点検するバルブの数は300~400台あります」
さらに、ゲート弁やバタフライ弁などバルブの種類も様々だ。
点検ではバルブを一つひとつ分解して汚れを落とす。また、クラックが入りやすい部位においてはカラーチェックを行い、状態が悪い場合は顧客に報告をする。

バルブメンテナンスの難しさ

メンテナンスでは、バルブの弁体と弁座の隙間をなくすための擦り合わせを行うこともある。削る角度や力の入れ方が違うと、傷をとることができてもピッタリと収まらなくなる。
「内側より外側の方が削れる粒子が厚くなるので、感覚的なところはありますね」
それでも優は、道具があればそんなに難しいことではないと言う。

 

一般的な工場などでは、バルブの動きが悪くなったり不具合が起こったりした場合は、修理するよりも交換することの方が多くなったという。
しかし、火力発電所で使用しているような大型バルブは簡単に交換ができない。さらに、メンテナンスをするための分解作業にも多くの経験や技術が必要だ。
500kg~1tの重量があるバルブを取り外すためには、チェーンブロックをつけてワイヤーを掛けなければいけない。しかし現場にはそのための場所が用意されてはいない。

 

どこにチェーンブロックを付けると安全に持ち上げられるか検討することからはじます。
また、800ミリ程度上げなければ外せない構造にもかかわらず、600ミリしか余裕がないということもあったそうだ。
さらに、持ち上げた部品を置く場所も慎重に考えなければいけない。電気の配線がある場所では断線させないよう向きを調整して置くこともあったという。
このように現場を見て、その中で最適な方法を考えて工夫することは、誰でも「道具がある」だけできることではない。

はじめてにもトライする姿勢

シミズ工機では、徐々にバルブメンテナンス以外の業務を増やし、近年はポンプやファン、ブロアなど様々な工場の機械設備のメンテナンスの比重が増えている。
これは、優が勤めていた会社で、大型ファンの監督補佐として知識を身につけていたことが大きい。優の経験を知っている元請け業者からバルブ以外の仕事が依頼されることがあったのだ。こうして少しずつ様々なメンテナンスを経験することで、業務の幅を増やしてきた。

 

シミズ工機の特長は、はじめて見る機械でもメンテナンスにトライする姿勢だろう。
「色々な形状がありますが、回転するものは必ず駆動部があって、機械伝達するものがあります。回る機械にはペアリングとか色々なタイプがあり、その先に仕事をするための羽かスクリューがあります。基本的な構造を理解していれば、はじめて見る機械でも対応できるんじゃないかという根拠のない自信があるんです」

 

それでも優はより正確に作業を行うため、お客様に図面や分解手順書のようなものがないか尋ねる。
そのような資料がないことも多いが、シミズ工機ではその依頼を無事に完遂できるよう知識や経験を駆使して業務に取り組み結果を残している。「シミズ工機さんならなんとかしてくれるんじゃないか」と、お客様から厚い信頼を得ている。
これは、現場で様々な判断をしなければならないバルブメンテナンスの経験も大きいのだろう。
メンテナンスという仕事は、機械のドクターと言っていいのかもしれない。

メンテナンスの怖さと大切な勇気

メンテナンスをおこなう上での怖さは『時間』だという。
「この期間でメンテナンスを終わらせてほしいと言われたら、その間で完了させなければいけません。もしも時間がずれ込めば、その工場の生産を止めることになります」
メンテナンスの現場では何が起こるかわからない。その中で時間内に完了させなければいけないのは大きなプレッシャーだ。
「お客様が困っているときに呼ばれることが多いので、決まった期間内にきっちり仕上げることで感謝されるという喜びもあります」
プレッシャーと達成感の大きさは比例しているのかもしれない。

 

時間内に作業を終わらせることを目指すが、時にはストップをかけることもある。例えば、無理に進めるとボルトが折れてしまうかもしれない……という事態に直面したときだ。
「怪しいと思ったら必ず報告して相談するようにスタッフに言っています」
機械の状態を見て、無理だと伝えることは恥ずかしいことではない。機械の状態をしっかり理解しているからこそできる判断だ。
「予定した時間で作業を終えられない可能性があったとしても、一旦止める勇気が必要なんです」
シミズ工機の技術への信頼があるからこそ、お客様もその報告を受け入れることができる。

目に見えない部分にこそ大切なものがある

メンテナンスは機械を一度分解してそれを元通りに戻す。ひとことで表現すると簡単そうだが、それに膨大な時間を要する業者や、きちんと元通りに戻せない業者もある。
「パッと見ると元に戻っていても、使用すると不具合が起きるケースもあります」

 

例えばボルトを締める順番や強さ、必要な隙間の幅など一見するとわからない部分に技術や知識の差が出る。それは小さな差に感じるかもしれないが、機械の寿命にもかかわってくるのだ。
シミズ工機では、元の状態がどのようになっていたか、スケッチや写真、メモなどで記録を残している。
こうした細やかで誠実な作業が、正確な業務とお客様からの信頼につながっている。

シミズ工機が販売しているのは「人間力」

優はメンテナンス業務に対する工賃に対して憂いを抱いている。
「私たちはモノを作って売っているわけではありません。だから、その工賃が適正ではないと感じることがあります」
例えば、元請け業者は下請け業者の作業を監督する必要がある。張り付いて細かく監督しなければいけない業者がある一方で、最低限の監督のみでほとんど任せられる業者もある。しかし、後者の場合でもその付加価値に対して工賃が上乗せされることはない。

 

優が若いころ1週間程度の工期を予定していた案件を、様々な工夫によって3日仕上げたことがある。そのとき監督は「もっとゆっくりやって1週間でかけてほしい」と言ったそうだ。
本来1週間かかる工期を短縮できるのは、それだけの技術力や知識があるからだ。しかし、1週間の作業は1週間かけてやらなければお客様に対してその金額を請求できなくなると言われた。

 

「早く仕上がっても『ありがとう』と言われないんです。本当なら、工場を早く稼働させられるので、工賃をプラスしてもいいはずです」 このような状態では、この業界で働きたい人は増えず、現場のモチベーションも上がらない。
「結局、私たちが売っているのは製品ではなく人間なんです。だから当社の人間を信頼していただけるようにしています」

 

何か困ったことがあったとき『気軽に電話で相談できる』、『難しいことでもなんとかしてくれる』相手としてお客様と信頼を築くようにしている。
これによってシミズ工機は、価格だけで判断されるのではなく、技術力と人間力で選んでいただけるようにしている。

仲間を増やして可能性を広げる

シミズ工機では、はじめての機械や難しい案件でも基本的には断らない。
「断ることは簡単です。でも、難しいことができたらかっこいいと思っているだけですよ」
ただし、シミズ工機だけの力ですべてを解決できるとは考えていない。シミズ工機と同規模の会社の仲間を増やし、お互いに助け合える環境を作りたいと考えている。

 

会社によって得意なことは違う。それぞれの得意を組み合わせることで、さらに高いパフォーマンスを発揮することができるようになるだろう。
シミズ工機をはじめとした得意分野を持つ会社が集まることで、新しい可能性が見えてくるかもしれない。