不良品ゼロの高いクオリティー。
管理基準を土台にしてトライ&エラーで積み重ねたノウハウ。
株式会社三晃 金属プレス加工メーカー
三田 英勝
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 金属プレス加工メーカー
- 会社名
- 株式会社三晃
- 代表者名
- 三田 英勝
- 所在地
-
〒470-0224
みよし市三好町八和田山5-134
- 電話番号
- 0561-32-2386
Factory Stories
金属プレス一筋で約60年
株式会社三晃は1964年の創業から約60年間、金属プレス加工一筋で取り組んでいる。
創業したのは、現在製造1課長として現場を指揮する三田英勝の祖父だ。
創業間もないころから大手自動二輪メーカーのプレス部品を請け負うなど順調な滑り出しだったという。しかし、創業者が早逝したために英勝の父親が24歳の若さで会社を引き継ぐことになった。
「父は4兄弟の長男で、弟たちの面倒も見なくてはいけなかったため大変だったと聞いています」
現在は英勝の兄が三代目社長、父親は会長になった。そんな父親と兄を英勝は支えている。
約60年という歴史は、家族で力を合わせて乗り越えてきた時間なのだ。
0.6~9.9ミリまでの厚みに対応
三晃では自動車部品のプレス加工をメインにワッシャー、プレート、スペーサーなど800種類以上の製品の加工・生産管理をおこなっている。
中でもワッシャーを得意としており、対応できる板厚は0.6ミリから9.9ミリまでと幅広い。
「当社くらいの企業規模で9.9ミリの板厚に対応できるところは少ないと思います」
これは材料の厚みが増すほどプレス機への負担も大きくなるためだ。薄い材料ならば45tプレスで対応できるが9.9ミリでは200tプレスが必要になる。
プレスだけでなく、ロール状の素材を平坦に矯正して送り出すレベラーも板厚に対応させなければいけない。厚みが増すほど材料が硬くなり矯正ができなくなってしまうからだ。
「自動車業界では安全性を重視して、硬い材料を使うようになりました。そのため硬い素材に対応できるレベラーを導入したんです」
三晃が加工の幅を広げられた理由のひとつは、このような設備投資だ。
さらにもうひとつの大きな理由は長年培った技術力である。
厚い材料をプレスする技術力
ワッシャーのプレス加工で難しいのは平面を出すことだという。
基本的に0.1ミリ以下のレベルが求められるのだが、板厚が増すほど平面を出すことが難しくなる。これは厚くなるほど材料が硬くなりひずみが出やすくなるためだ。
ひずみの出方はステンレスやSK材、SPH材、SPC材など材質によっても変わってくるため、金型の上型と下型のクリアランスの微妙な調整が必要なのだ。
「調整によって上反りになったり下反りになったり、中が膨らむか外が膨らむかが変わってきます」
それ以外にも金型自体の寸法や材質によっても精度が左右する。
金型は金型メーカーに依頼しているが、型の寸法や材質などを金型メーカーと相談しながら変えていく。三晃のノウハウと金型メーカーのノウハウが結集されるのだ。
「使用する油によっても若干変化するので、どの油が良いのか検討して最適なものを選びます」 内径の精度を保ちながらひずみを出さずにプレスするためにトライ&エラーを繰り返しながら細やかな調整をおこなっているのだ。
信頼される三晃クオリティー
三晃では2006年にISO9001認証を取得し、職人たちが個々に蓄積していた事柄を書面にして整理することで、一定の判断基準ができたという。
「監査の方からの指摘はほとんどありません。当社くらいの規模でここまでやれるところは少ないと言っていただけます」
ISOの品質マネジメント基準に沿った品質管理と積み重ねたノウハウにより、納品する製品不良はほとんどないという。
取引先で開催されていたQC大会では5年連続で品質優秀賞を受賞したほどだ。
「取引先から親会社に出される当社の部品は10年以上不良品が出ていません。取引先で不具合が見つかることがありますが年間で4件ほどです」
三晃が長年信頼され続けるのはこうしたクオリティーの実績があるからだろう。
その上に短納期や追加製品などにも迅速に対応できる対応力がある。
「当社は20人ほどの規模なので小回りは利くと思います」
クオリティーを実現する社内体制
製造に関しては工場長と英勝の二人が指揮をとっている。
朝礼で情報を伝え、終業時の作業日報で進捗状況を把握する。
「早めに進んでいるなら材料を早く手配し、遅れているなら間に合うように調整して、絶対に納期を守るようにしています」
ただし製造の段取りや調整はそれぞれの職人の判断に委ねられている。
「変更などはきちんと伝えますが、基本的には自分で考えてやってもらっています。だから当社の仕事は自分で考えてやりたい人には面白いと思いますが、指示を待っている人にはやりづらいかもしれません」
たとえばトラブルが起こったとき、何が原因なのかを考えて、もしも金型に不備がるようならば作業者自身で金型の調整をおこなう。
ISOによる品質管理基準を定めているが、自由な判断や現場での裁量が認められているのだ。しっかりと定められた守るべき基準と各自の裁量がバランス良く保たれている。
従業員ひとり一人が不良品ゼロを実現できる力量を持っているのである。
「ただ、今はかなり高齢化が進んでいて60歳以上の方が結構います。最近入社した人もいますが中途採用の方なので、実は私が一番年下なんです」
貴重な技術やノウハウを継承し続けていくために新しい人材が必要不可欠だ。
「中途採用の方からは同じ規模の会社に比べると待遇は良い言われます。」
モノづくりに興味を持ち、自分で考えて動きたいという方にはやりがいを感じられる会社なのではないだろうか。
また昨今の人材不足を解決するため、少人数でも更に高い生産性を実現するため、ロボットを導入した自動化にも積極的に取り組んでいる。
価格競争ではなく技術で勝負する
脱炭素が進む中、自動車業界も変容していこうとしている。
「当社は自動車部品をメインにしているので、エンジンの部品が減っていくことに不安を感じています」
そのためエンジン以外の部品や電気部品に変わっても使われる部品の製造に目を向けている。
大手生活用品メーカーの商品に使用するシムの製造を新規受注した。
その部品は元々海外で製造する予定だったが、三晃が出した単価の方が安かったために受注が決まったという。
しかし、利益を度外視して安い単価を提示したわけではない。
「価格競争に参入していくつもりはありません。安さを求められることは多いですが、利益を無視して受注していたら最終的には自分たちの首を絞めてしまうと思うからです」
海外での製造より単価を抑えても三晃はきちんと利益を確保している。この秘訣は技術力だ。
海外の工場では1回のプレスで1個の部品を製造する前提で試算したようだが、三晃では1回のプレスで5個の部品を作ることができる。
品質を均一に保った上で、材料から無駄なく部品をプレスする生産性の高さがあるからこそ利益を確保しながら単価を抑えることが可能なのだ。
時代の変化にともない求められる部品は変化していく。
それでも三晃ならば、これまで培ったノウハウを生かした技術力と高い品質で顧客から選ばれる会社であり続けるだろう。