お客様の頭の中のイメージを形に。
お客様の商品を邪魔しない美しさを追求したディスプレイ。
有限会社OPスタジオ アクリル製品の加工・装飾
大平 敏明
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- アクリル製品の加工・装飾
- 会社名
- 有限会社OPスタジオ
- 代表者名
- 大平 敏明
- 所在地
-
〒462-0062
名古屋市北区新沼町44
- 電話番号
- 052-909-5451
- ホームページ
Factory Stories
一品ものを作り出す魅力
大平敏明は2004年にプラスチックの板材をインテリア用品や展示会等のディスプレイなどに加工製造するOPスタジオを創業した。
社名に「製作所」や「製造所」を使わず、「スタジオ」としたのは、量産品ではなく一品ものを仕上げるクリエイティブな面を表現するためだという。
大平は大学を卒業後、9年半ほどサラリーマンをしていた。その後、父親が経営する会社に転職し、そこでプラスチック加工の世界に足を踏み入れたのだ。
「父の会社がプラスチックを加工して店舗ディスプレイなどを製造していたんです。5年ほど父の会社で働いて、この仕事をやってみて、とても楽しいと感じたんです」
お客様の商品を魅力的に見せるためだけに生み出される一品ものを製造すること。そしてそれが人々の注目を集める現場に使用されているということに楽しさを感じたのだという。
お客様のイメージを形に
お客様から依頼を受けた一品ものを製造するためには高いデザイン力が必要になるだろう。しかし大平は「デザインはしません」と言い切った。
「デザインはお客様の頭の中にあります。それを形にするのが私たちの仕事です」
これはデザインを描いて提案するよりも難しいことかもしれない。
デザインを作って提案をするのであれば、これまでの経験などから最適解を提示したり、製造しやすい形を勧めたりすることができるだろう。
しかしお客様の頭の中には、そのような型にはまらないイメージがある可能性が高いのだ。
型にはまらないイメージを聞き出し、形にすることはかなり難しいことだろう。
だからと言って、お客様の言うままに製造するわけでもない。
「お客様はいろいろと考えるんですが、あくまで机の上のことなんです。実際に形にすると、例えば耐久性が足りなくて危ないとか、展示の環境によって違う素材の方が良いとかいうことがあります。お客様のイメージが実現できる方法を提案しながら調整していきます」
透明なプラスチックの板材でもアクリル・ポリカ・塩ビ・PETがあり、屋内展示か屋外展示かなど、様々な条件によって最適な材質が違うのだ。
成功の鍵はお客様とチームになること
OPスタジオには女性スタッフが多く在籍している。
「私の持論ですが、男性よりも女性の方がきれいな物に対する感度が高いと思っています。そのため、女性の視点でチェックをして、お客様にフィードバックをしています」
このようにフィードバックをしているのは、お客様が考えているものをそのまま作ってもお客様のためにならないと考えているからだ。
「お客様とはそのプロジェクトを成功させるためのひとつのチームだと思っています。だから双方向でコミュニケーションをして、伝えるべき意見はきちんと伝えるようにしています」
お客様にとってのゴールは展示用のディスプレイを完成させることではない。展示することによって新製品の魅力を伝えるとか、技術の高さを見せるなど本当のゴールはお客様によって違う。
お客様はその商品のプロであっても見せ方のプロではない。
「500円の商品と500万円の商品では見せ方は違います。お客様が本当に伝えたいことを知り、そのための方法を提案するのがチームとしての私たちの仕事です」
大切なのはエンドユーザーの視点
大平は大学時代にゼミで商業学を選択していた。そこでは店舗でのお客様の導線や視点、どうしたら手に取りやすいかや認知されやすいかなどを学んでいたという。
「お客様に見てもらうためには、お客様の視線の動きや角度、そして意匠も大切です」
こうしたエンドユーザーの視点を意識した提案があるからこそ、お客様に評価されているのだろう。
「展示で一番怖いのは事故です。会場のお客様がどんな動きをするのか想定して、事故の起こらないような工夫をする必要もあります」
実際に、子どもが多く集まる場所での展示では、子どもが好奇心で手を触れて事故が起きないように設置の改善を提案したという。
「千や万の単位の量産はできません。その代わり、大きな会社ではできないような面でこそうちの力が発揮できると思っています」
お客様の商品の邪魔をしない美しさ
OPスタジオがお客様から選ばれている理由には製品の美しさも挙げられる。
「すべてのパーツの精度を高めても、組み上げたときにはズレてしまうんです。だから敢えて勝ちと負けを作って組み上げたときに美しい状態に仕上げます」
また、夏場の40度近い環境と冬場の氷点下の環境では素材の状態が違う。それらを微妙に調整して完成精度を高めていくのは、現場の技術と経験だ。
「精度が出にくい素材で環境の影響も受けやすいのでマニュアル化が難しいんです。最近製造したものだと、完成形にするまで5,6回やり直しています」
難しい素材を扱いながらも高い精度を出すためにトライアンドエラーを繰り返して仕上げるのは、完成品の美しさを重視しているからだ。
「私たちの製品の中にお客様の商品が入ります。そしてメインはお客様の商品です。だから汚いのはあり得ないですし、お客様の商品の邪魔をしてもいけません」
OPスタジオの次の挑戦
ある商業施設のクリスマスツリーにもOPスタジオの技術が生かされている。
これまでにやったことのない仕事で苦労の連続だったが、良い経験だったと大平は言う。
「従業員も家族と見に行ったと言っていました。自分たちの仕事を子どもに自慢できるっていいじゃないですか」
そして、大平はこの仕事を皮切りにさらに仕事の幅を広げていきたいと考えている。
それは、関東や関西などこれまで取引のないお客様との縁を広げていくという意味合いと、新しい素材や技法を取り入れていきたいという意味合いがある。
「うちにある機械を使って、鉄や木などの異素材を組み合わせた製品や、再生素材などこれまで使っていなかった素材にもチャレンジしていきたいと思っています」
実際に、紫外線で固まる液体状のプラスチック『レジン』を使ってサンプルを封じ込める表現にも挑戦し、手応えを感じているという。
モノづくりの価値を自分たちが評価すること
「ドイツではマイスターと呼ばれて職人の地位が高いですよね。でも日本では職人さんや親方さんと呼ばれる方たちの地位が低い。そして自分たちの仕事がどのレベルで、どんなレベルを目指せば良いのかもあまりわかっていないんです」
日本では謙虚であることが美徳のように語られる。他者から見れば秀でた技術も、職人たちは「これくらい当たり前」ととらえ、外にアピールすることが少ない。
「これでは職人の自己肯定感が上がらないですし、若い人がやりたいと思えなくなってしまいます」
これからのモノづくりの世界に必要なのは職人自身がその価値をきちんと評価できること、そしてそれをお客様との共通認識にすることだ。
OPスタジオが品物を美しく見せるように、職人たちも自らの技術をきちんと見せていくことが必要なのだ。