部品ではなく
製品の完成形を意識した
プラスチック金型の設計・製作
有限会社小野金型 プラスチック射出成形金型設計・製作 、部品加工
小野 光俊
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- プラスチック射出成形金型設計・製作 、部品加工
- 会社名
- 有限会社小野金型
- 代表者名
- 小野 光俊
- 所在地
-
〒444-2135
岡崎市大門5丁目23番地1
- 電話番号
- 0564-66-0677
- ホームページ
Factory Stories
小野金型のルーツ
小野金型は1984年の創業以来、プラスチック金型の設計・製作をおこなっている。創業したのは小野光俊の父・元司だ。
「最初はプレス金型の会社で働いていましたが、これからはプラスチックの時代だとプラスチック金型の会社に転職したらしいです」
経験を積んだ後、元司は30代半ばで独立した。
当時はガレージのような場所に機械を1台置いてのスタートだったという。 「父は会社を作って大きくしたいというよりも、ひとりでやりたいという気持ちが強かったので人を雇うことは考えていなかったようです」
会社を継ぐことは考えておらず別の道を目指していた光俊だったが、2003年に小野金型に入り、会社を継ぐことにした。
それから現在まで『小さな会社だからこそ持てる強み』を生かして顧客からの信頼を得ている。
倒産の危機に直面
小野金型が最大の危機に直面したのはリーマンショックの翌年の2009年だった。「仕事がまったく来なくなったんです。客先に直談判してみたんですがダメでした」当時は仕事を1社依存の状態だったという。
全体の80%程の仕事を1社から請けていたため、その会社から仕事がこなくなったことで一気に業績が悪化したのだ。
「製造だけをしてきたので営業のスキルはゼロ。それでも何とかしなくてはいけなかったので必死でした」
様々な人に声を掛け、その中で機械商社から金型部品の外注先を探している金型屋を紹介してもらうことができた。
とにかく仕事をやり切ること、自身の100%を目指した製品を納品すること、納期を守ることを徹底することで信頼を得て、少しずつ仕事量が回復していった。
元々、小野金型では金型の設計から製造までを請け負っていた。 その実績があったからこそ、金型の部品の製作でも同業者からも信頼される高い品質を維持することができたのだ。
部品ではなく完成形を意識したモノづくり
厳しい時代を乗り越えた金型部品の製造では、金型一式を製造するチカラが生かされていた。
部品は他の部品と組み合わせることで完成する。
光俊は依頼された部品だけを見るのではなく、その部品がどのように使われるのかをイメージしてつくり上げるのだ。
「金型の設計と製造をしているので、依頼された部品がどのような機能を果たすのか理解できるんです。だから単純に図面通りに仕上げるだけではなく、使える状態を予測して仕上げています」
樹脂型の場合は、ほんの少しのズレでうまく組み合わなかったり、樹脂製品にバリができてしまったりする。
依頼された部品がどのように組まれて利用されるのかを意識して繊細な調整をすることで、金型の品質を高めることができるのだ。
長く使うほどに実感する金型の品質
完成形を意識したモノづくりは、金型一式の製造でも同じだ。
「お客さんが欲しいのは金型ではなくて、金型で作る製品なんです。だからできるだけ品質の高い製品を作ることを意識した金型を設計製造しています」
トラブルや不良が出やすい最初のトライ(T0トライ)においても、トラブルが少なく良品が仕上がることから金型の質の高さをうかがうことができる。
この高い品質を生み出す重要な要素のひとつが設計だ。
設計において光俊がまず意識することは『製品を作りやすい金型にする』ということだという。
「製品の歩留まりが悪い金型は、どこか無理をしているんです。そういう負荷が蓄積して、壊れやすくなるんですよ」
つまり製品を作りやすい金型にすれば、耐久性の高い金型になるということだ。 さらに、金型に負荷のかかる部分を予測し、分割構造にするなどメンテナンスがしやすい設計をする。
こうして壊れにくい上にメンテナンスがしやすく、良品を作りやすい金型ができるのだ。
もちろん、そこには設計したものを形にする技術力も必要だ。
「自分で設計した金型を自分で作っていると、『ここはもっとこうすればよかったな』というアイデアがどんどん浮かんでくるんです。机上の設計で終わらせず、作りながらさらに良い形を考えていくのが楽しいんですよ」
こうして設計面と技術面の工夫によって生み出された品質の高い金型は壊れにくい。 「5年10年使い続けて壊れると修理の話が来るんですけど、なかなか壊れないんですよね」
金型製作の面白さ
金型製造の面白さは結果がわかりやすいところだという。
「設計して形にして、トライをして良品が作れた、というのがすぐに結果として見えるんです。そうするとお客様に喜んでもらえますし、自分がデザインして作ったものが役に立っているという実感が得られます」
顧客が作りたい完成品から、効率的に量産をするためにどんな金型構造にすればよいのかというプロセスにおいて、自分なりの工夫を盛り込めることも面白さのひとつだという。
また、試作にはまた違う面白さがあるという。
「量産に入ると、ある程度製品の形がブラッシュアップされているんです。でも、試作の段階では製品の形の無茶振りも多いんですよ。こんなのどうすればいいんだ?という製品を作れる金型を試行錯誤してつくり上げていくのが面白いんです」
困難な試作の場合は、顧客から過去の製作実績などを教えてもらって、金型のヒントにしていく。
こうしてチャレンジすることで、さらに技術や知識が高められていくのだ。
小さな会社だからこそ出せる強み
小野金型には小さな会社だからこそ出せる強みがあると光俊は言う。 企業規模が大きくなると分業制になっていく。それぞれの業務に対する技術が上がり、生産量も増えるだろう。
しかし、全体を俯瞰的に考えることが難しくなるのだ。
一方で小野金型では、設計も製作もトラブルへの対応もすべて光俊がおこなっている。
だからこそ点ではなく線で、面で、そして俯瞰的に考えることができるのだ。 「設計では形状が成立しても、実際に削るのは大変ということもあります。逆に設計意図を理解した上で加工することでより精度の高い加工ができるようになります」
小さな会社には小さな会社だからこそ持てる強みがある。 ただ、これから光俊のように「一人の職人がすべてを見通すスタイル」を目指すのは、今の日本では非常に難しい。 新規の参入障壁が極めて高くなっているからだ。
光俊の父が1台の機械だけで創業したように、かつてはスモールスタートすることができた。しかし現代ではそれが難しいのだ。
「新規で立ち上げようとすると、マシニングセンタや放電加工機など高価な工作機械が最低でも4台は必要です。さらに建屋や電機工事を考えると億近い資金が必要です。それだけの投資が必要なのに、製造業に儲かるイメージがないんですよ」
このような状況では、新たに参入する人は増えないだろう。
金型製造は面白さを感じられるクリエイティブな仕事だ。
光俊はそれを知っているからこそ、製造業がもっと夢を抱ける世界になってほしいと考えている。