DX化×多能工化で実現する効率化。
ピンチをチャンスに変える改革で、
材料手配から組付まで一貫生産に。
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有限会社岡鉄工所
- 板金製缶・精密機械加工製作
岡 克行
- 都道府県
- 岡山県
- 事業内容
- 板金製缶・精密機械加工製作
- 会社名
- 有限会社岡鉄工所
- 代表者名
- 岡 克行
- 所在地
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〒710-0262
倉敷市船穂町水江1200番地の4
- 電話番号
- 086-552-2453
Factory Stories
製缶板金からスタート
岡鉄工所は製缶・機械加工を中心に材料調達から組立まで一貫生産をしている。3代目として会社の舵をとる岡克行の祖父が1969年に克行の父、伯父と共に創業した。
元々農業を営んでいたが、父が工業系の学校に進み、伯父が機械メーカーに勤めていたことから工業の世界に足を踏み入れたという。
「創業当時は製缶板金だけをしていて、健康器具や三菱の自動車製造ラインに使われる治具などを製造していたようです」
そこから図面があれば材料の手配、切断、曲げ、溶接、製缶、機械加工、塗装、組付・現場組付まで対応できる体制に変化した。このように幅広い作業工程を一貫して請け負える体制になったのは、15年ほど前からだという。
体制変革のきっかけはリーマンショック
リーマンショックの頃には受注が工作機械関係と食品機械関係の2本柱になっていた。リーマンショックの影響で業務量が激減したとき、新規顧客から社内でどの工程までできるか聞かれることが多くなったという。
「発注元の方は、1か所に投げてすべて取り回しをしてもらえるのが理想ですからね。それに、外注を使っていくとどうしても時間とコストがかかります」
そうして経営が苦しくなる中で、敢えて設備投資をおこなって業務範囲を広げる決意をした。
これが功を奏し、現在では工作機械と食品機械を土台としながら、造船やプラント、公共業など様々な業種の仕事を請け負うようになったのだ。
ひとり一人の個性を生かすモノづくり
製造業では、先達のやり方を真似て技術を継承していくことが多いだろう。
ところが岡鉄工所では「先達のやり方が正解ではない」という視点からスタートするのだ。
「受け継がれたやり方を正解にしてもいいんですが、その正解をなくして、自分が早く良いものができるやり方を正解にしてもらいます。それが個性を生かすことになりますし、自分が考えたやり方でやっていくという楽しみも出てきます」
これは岡鉄工所の企業理念『社員ひとり一人の個性を生かして、モノづくりを通した貢献活動』に通じている。
この姿勢はリピート品に対しても同じだ。
毎回同じではなく、次は違うやり方をしてみようと工夫を重ねていく。これがノウハウとなっていくのだ。
「受け継いだやり方で同じようなことを繰り返すと冒険心がなくなり、難しい案件が来たとき「うちではできない」とネガティブな思考になります。普段からいろいろ考えて工夫をしていると難しい案件でも「こういうやり方ならできるかも!」と、前向きに考えられるようになります」
このスタンスがあるからこそ、幅広い業種からの小ロット多品種の依頼に応え続けることができるのである。
ノウハウと知恵を結集して乗り越える
岡鉄工所の社員は難しい案件がきたとき、ひとり一人が個性を生かして考えるだけでなく、社員の知恵を集めることで乗り越えているという。
「工場長と班長を筆頭に、その製品の加工に携わらない社員も含めてみんなの知恵を集めて意見交換する場を持っています」
それぞれが持つアイデアやノウハウを結集することで難しい案件も乗り越えていくことができるのだ。
実際に、縦マシニング、横マシニング、旋盤、フライスなどすべての機械を使うことで完成させた製品がある。
また、溶接においてコンマ台の精度が必要な製品では、溶接前に溶接面を削って直角部や平面度を出すことで精度を高めたという。
コロナ禍には逆転の発想でDX化
克行が社長を引き継いだのは2020年だった。
コロナウイルス感染症が流行して日本全体の景気が低迷した年だ。
そんな苦しい状況のとき、克行は工場のDX化を推し進めた。
「逆転の発想です。仕事が少なくなったので、逆にその状況を利用して100%DX化をして、社員全員を集めて教育しました。また、現場作業は誰もが全てをできるようにして多能工化したんです」
これによって図面も工程管理も全てクラウド化され、誰もが進捗状況を確認できるようになった。また、データが集積されているため、見積もりも素早く出せるようになったのだ。
さらに、経理のAI化も進めた。月次の試算表は翌月5日に、年間の決算書も翌月20日には出せるという。また決算データから取引先ごとの売上ランクや前年比を出せるため、営業はこのデータを元に営業戦略を立てられるようになったのだ。
「お金はかかりますが、将来のことを考えたら全てのことが整った方が良いと考えて取り組みました」
現場と営業の連携で出す見積もり
自ら考える現場と、DX化によって見積もり効率も変化した。お客様から相談を受けて図面を受け取ると、その図面を現場グループに投げる。
現場は図面を見て、作業工程ごとに必要な時間を算出して営業にフィードバックするのだ。さらに、作業に必要な工具があれば自ら商社に見積もりを取って営業に伝える。
営業は現場からフィードバックされた情報を元に見積もりを算出して商談をするため、より正確で具体的な交渉ができるのだ。
「受注したときは、現場はすでに見ている図面なので速やかに作業に入ることができて時間のロスをカットできます。それに、自分たちで時間を算出しているので、責任感を持って取り組めるんです」
この仕組みがうまく回っているため、克行が自ら見積もりをすることはほとんどないという。
モノづくりネットワークの構築
克行は2030年までの事業計画を立てて一歩ずつ実行に移している。製造業を土台として、建築業、自動車業3拠点で稼働しており、2030年までにはそれらをとりまとめる商社を設立してグループ企業にする予定だ。
さらに海外にも事業展開をすることで販路を広げていく。
ただし克行が考えているのは岡鉄工所の未来だけではない。
モノづくりに特化した企業団体ネットワークを作り上げることで、地域全体を支えていけるような仕組みを構想している。
従来のモノづくりの社会はピラミッド構造だった。トップが受けたものを下へと流していく縦の流れだ。克行はこれを平面にして、どの企業が受けても全ての工程を補いながらひとつの製品を生み出す構造にしたいと考えているのだ。
企業ネットワークがASS(アッシー)として一貫性を持つことで、しがらみを排除してみんなで協力しながら新しいモノづくりができると考えている。
これは、克行が岡鉄工所に入る前に総合コンサルタントをしていた経験があるからかもしれない。
「一人だけが良い思いをしても面白くないと思うんです。どうせなら縁のある人全てが良くなっていく方が楽しいですよね」
克行が思い描く新しい仕組みは、日本のモノづくりの世界に新しい風を巻き起こしてくれるのではないだろうか。