着目するのは設計した機械のかっこよさ。
わずか3年で自動化装置メーカーへ飛躍した鍵は設計力。
有限会社丹羽機械 自動化、省力化装置、各種治具の設計製作、各種部品の機械加工
丹羽弘治
- 都道府県
- 岐阜県
- 事業内容
- 自動化、省力化装置、各種治具の設計製作、各種部品の機械加工
- 会社名
- 有限会社丹羽機械
- 代表者名
- 丹羽 弘治
- 所在地
-
〒501-3146
岐阜市芥見嵯峨2-64-2
- 電話番号
- 058-241-1940
Factory Stories
はじまりは治工具の加工業
限会社丹羽・機械は、三代目社長の丹羽弘治が指揮を執り、省力化・自動化の装置を設計から製造まで一貫しておこなっている。
創業は1970年。 機械加工の工場に勤めていた弘治の祖父、丹羽正純が独立して治工具部品の加工をはじめた。
「フライス盤を1台買って、外注の加工を請け負うことから始めたようです」
二代目の父、丹羽和繁は学校を卒業後、正純と共に働き始めたという。 仕事量や設備機械が増えてきたため、和繁が社長を継いだときに現在の岐阜市芥見に移転した。
「自動車関係の治工具部品を製造していました。たとえば、溶接をするときに製品を載せるための治具部品のようなものです」
現在、事業の中核を担っている省力化・自動化装置の設計製造を始めたのは、弘治が入社してからだという。
注始動からわずか3年で装置受
弘治は学校を卒業後自動車部品メーカーで生産技術者として働きはじめた。 その後、設計に部署移動したのち、機械メーカーに転職して機械設計の技術を身に付けたという。
当時の丹羽・機械は部品製造をおこなう会社だった。 しかし弘治は、もっと大きなことができるようにならないかと考え、部品をつくる前の工程を勉強したいと思ったのだという。
「会社を継ぐからというより、もっと自分たちで仕事を作れる会社にしたいという思いがあったんです」
そうして機械設計を身に付けた弘治は、2008年に丹羽・機械に入社した。
しかし、機械設計の技術を身に付けたからといって、部品製造をしていた丹羽・機械に装置の設計・製造の依頼がすぐにくるわけではない。
「認知もされていませんし、すぐに装置を作ることはできません。だから、最初は自分ひとりで設計の外注を受けていました」
そうして、5年くらいかけて大手企業からの装置が受注できるようになろうと始動したのだ。ところがなんと、わずか3年で装置受注に至ったのだという。
プレッシャーと資金繰りの壁
設計の外注からスタートしたが、「部品も一緒に納めてほしい」「部品を作れるならユニットとして組んで納めてほしい」と、徐々に依頼の幅が広がっていったという。
そうして、3年後には装置を作ってほしいと言われるまでになったのだ。
その背景には弘治が前職の会社で設計をしていたという経験が評価された面もあったという。
「あの会社で設計していたならできますよね、って感じで任せていただいたんですが、内心は失敗したらどうしようというものすごいプレッシャーでした。でも、がむしゃらにやるしかなかったんです」
さらに、製造体制も整っていなかったため、まずは外注でプロジェクトチームを作って、納期に間に合わせることを優先したという。
「社内の教育をはじめられたのは、ある程度落ち着いてからですね」
その他にも資金繰りの壁も立ちはだかった。
オーダーメイドの装置はリードタイムが長いため、入金まで時間がかかるのだ。 それまでの部品製造とは入金サイクルが大きく違っていた。
「規模の大きな仕事を請けるほど出ていくお金が増えて、忙しいのに内部は苦しい状況になったんです。だから父からは儲からない仕事と言われました」
そんな5年以上に渡る苦しい時期を乗り越えて、装置製造の売上が入るようになったことで、社内でも装置製造への意識が変わったという。
デザインレビューで設計スキルの向上
事業の主軸を治工具の部品製造から省力化・自動化装置の設計製造にシフトを果たした丹羽・機械は、お客様から「丹羽・機械に任せておけば大丈夫」と言われるまでになった。
これは、部品製造で磨かれてきた加工の技術力に加え、お客様のニーズを実現できる設計力があるからだ。
現在、丹羽・機械で設計をおこなっているのは、専属外注2名と弘治を含む社内4名の計6名。少数精鋭でモノづくりの現場に近い設計をおこなっている。
「お客様のニーズがダイレクトに設計者に伝わるので、それを図面に落とし込むことができています」
これにより、装置がスムーズに動作するだけでなく、消耗部品の取り外しがしやすいメンテナンス性の高さなどにも配慮した設計ができるのだ。
さらに、設計スタッフで定期的に図面のデザインレビューをおこなっている。
「機械設計には経験が重要だと思うんです。他の人が設計した図面を見て意見を交わすことも設計者にとって大きな経験になります」
そデザインレビューをおこなうことで、行き詰った部分があれば、他の設計者のアイデアをもらい、自分が設計した視点とは別の視点の気付きを得ることができるのだ。
着目するのは装置のかっこよさ
弘治は機械設計・デザインレビューをするにあたり、着目しているポイントが大きく四つある。
一つ目は、その設計の大前提が成り立っているのか。
二つ目は、強度が持つか、壊れないか。「やはり、動きがスムーズな構造になっていて『全然壊れませんよ』というのが大事だと思っています。頻繁に修理や部品交換が必要になる機械は印象が悪いですからね」
そのために、デザインレビューでも安定性や壊れにくさについて細かくチェックする。その上で着目する三つ目のポイントは、メンテナンスのしやすさだ。
定期的に交換しなければいけない消耗部品の交換に手間がかかるようではお客様の業務効率が悪くなってしまう。毎日稼働する装置だからこそ、メンテナンス性の高さも重要な要素となる。
そして、最後のポイントがかっこよさだ。
「パッと見たとき、お客様にかっこいいと思ってもらえることも重要な要素だと思っています。そもそも、良い機械ってかっこいいものだと思うんですよね」
設計の幅をさらに広げて自社製品製造へ
丹羽・機械では、これまで電気設計は外注に依頼してきた。
しかし、新たに電気設計者を採用したことで設計の幅を広げられるようになったという。
現代は装置の製造において、電気のウエイトが大きくなっている。
「電気はちゃんと設計をすれば調整範囲が大きく取れるので、特に大手では電動系を採用することが多くなっています」
これまでの機械設計に加えて、電気設計の技術を社内に取り入れることで、より効率的な装置の設計が可能になったのだ。
この技術力を生かし、今後は自社製品の開発も視野に入れているという。
「今はお客様のニーズに沿った専用機ばかりなので、会社経営の軸になるような丹羽・機械にしか作れない、汎用性を持った機械をつくりたいと思っています」
専用機はその都度設計をして製造していく。
そこには楽しさがある一方、リスクも大きい。
自社ブランドの汎用機を生み出すことで、経営の安定化を目指しているのだ。
「ポチっと押したら何かができあがって『中は一体どうなっているんだろう?』とワクワクするようなかっこいい機械をつくりたいですね」
遠くない未来、きっと丹羽・機械の技術とノウハウが詰め込まれたかっこいい汎用機が誕生することだろう。