信頼を“育む”品質は創業からの信念。
若い世代にも確実に受け継がれる
製品に対する技術と責任感。

有限会社西松製作所 工作機械、自動車・建設産業機械に関わる部品受託製造

西川昂汰

都道府県
愛知県
事業内容
工作機械、自動車・建設産業機械に関わる部品受託製造
会社名
有限会社西松製作所
代表者名
西川昂汰
所在地

〒455-0065

名古屋市港区本宮新町66

電話番号
052-652-1241
ホームページ

https://nishimatsu-ss.com/

Factory Stories

廃業からの再起

1938(昭和13)年に創業した西川製作所(西松製作所の前身)は、戦後の復興とともに急成長し、約100名の社員を抱えていた。

ところが、あるトラブルにより廃業を余儀なくされたのだ。

「曾祖父とその弟が西川製作所をはじめました。当時はボルトを大量生産できる工場が少なくて、大規模建設(架橋工事)のボルト製造を担ったそうです」

ところが、納品したボルトに不具合が生じたのだ。
不具合の原因は明確にはならなかったが、製造した西川製作所はその責任を負い、多額の賠償のために工場や設備などほとんどの資産を失い、廃業に至ったという。

その後、1965(昭和40)年に西川昂汰の曾祖父・松之助は、廃業のくやしさを胸に、わずかな設備と技術、取引先からの信頼を持って個人事業として再スタートを切った

西川製作所が廃業してからも松之助の技術を信頼して声をかけてくれていた取引先とは、現在でも取引が続いているという。

若い技術者が製造する六角穴付き部品

西松製作所は主に油圧関連部品の製造をおこなっており、主に製造しているのが制震ダンパー等の油圧ダンパーの部品だ。

その形状は様々あり、お客様の要望に合わせて多種の製造をおこなっている。

そうした様々な部品の中でも、創業当時から製造を続けているのが六角穴付き部品だという。

かつては六角穴加工に関する特許も保有しており、その技術の名残が今も製品づくりの随所に息づいている。

「六角穴付き部品は当社の製品全体の20%程度で多くはありません。でも、最近は六角穴加工ができる会社が減っているようなので、今も六角穴付き部品を作ることができるのは当社の強みのひとつだと思います」

そう語る昂汰をはじめとした、西松製作所の現場を担う3名は全員が20代だ。

そんな若い従業員たちを、昂汰の父親である三代目社長・詔之が率いている。

創業から長く受け継がれる技術を持つ製造業では、従業員の高齢化の問題を抱えていることが多い。

しかし、西松製作所ではコツコツと積み重ねてきたモノづくりの想いや技術を若い従業員がしっかりと受け継いでいるのだ。

高い品質を維持する全数検査

西松製作所では、製品の品質を保つため、サンプリング検査と全数検査の2つを採用している。
主な製品であるダンパー部品では、ほぼすべてを全数検査しているという。

「1個でもミスがあると大きな問題になるような重要な部品については、自社判断で全数検査を実施しています」

たとえば、穴の開いた部品と軸となる部品をはめて利用するものならば、すべてはめ合わせ確認をした上で納品をしているという。

この品質の徹底は、曾祖父の松之助が西川製作所時代にひとつのミスから廃業に至った苦い経験があるからなのかもしれない。

たった一度のミスで、次はないかもしれません。だから、ひとつのミスも起きないように徹底した検査をしています」

西松製作所が維持する品質は、お客様の信頼を裏切らないための強い想いと責任感が込められているのではないだろうか。

お客様第一から従業員ファーストへ

昂汰の祖父・二代目社長勲の時代は、お客様を第一に考えて『納期は絶対に守る』ことが徹底されていたという。

「祖父は、何かの事情で部品を作れないとなったとき、自分が動いて協力会社を探してでも何とか納期に間に合わせていたようです。これは創業者の松之助の『お客様の信頼に応える』という想いを強く受け継いでいたからだと思います」

そうしてお客様を第一に事業を進めてきたことで、お客様から確かな信頼を得ることができたのだ。

その後、後を継いだ三代目の詔之は従業員に目を向け、働きやすい環境を作ることに重きを置くようになった。

「祖父はPCを入れることやIT化を毛嫌いしていました。父は昔からPCを導入したいと思っていたけれど叶えられなかったそうです。だから、自分の代になってから率先してPCや生産管理システムを導入して働きやすい環境にしていきました」

そうして社内の生産体制はデジタル化が進み、働きやすい環境が整えられてきたのである。

働きやすさが製品の品質を高める

お客様第一から従業員ファーストに経営方針が変化したといっても、お客様に対する姿勢が変わったわけではない。

高品質とか、納期を守るとかは当社の強みというよりは、当たり前のことだと思っています」

創業から培ってきたお客様第一の姿勢は、すでに西松製作所の中では当たり前の風土として根付いているのだ。

そして、働きやすい環境づくりのために導入された生産管理システムなどが、さらなる品質の向上に寄与している。

「製品の情報が入ったデータに、不良品が出たときには後に同じミスが起きないように原因や対処を書き込んだり、加工で注意するべきところを書き込んだりして共有できるようになっています」

現場スタッフが持っているタブレットでは、図面や注意書きがすべて確認できるようになっているのだ。
そのため、別の担当者がおこなっていた加工でも問題なく引き継ぐことができる。

これによって、安定した高い品質を維持することにつながっているのである。
さらに誰でも同じ品質で製造ができるため、効率よく作業を分担することができ、納期を守ることにもつながっている。

デジタル化によって蓄積されたノウハウはこれから先の西松製作所の大きな武器になっていくだろう。

「ものをつくる会社」から「価値を届ける会社」へ。

西松製作所の企業理念は『製品を超える価値を。挑戦の先に明るい未来を。』だ。

「お客様から言われたものをつくるだけではなく、期待を超える価値を提供できるような会社にしていきたいと思っています」

そして、これまで旋盤加工を主にしてきたが、マシニングセンタや金属3Dプリンタなどの新しい機械を導入して、これまでとは違う加工にも挑戦していきたいという。

これにより1社依存の経営体制から脱却し、明るい未来を描いていこうと考えているのだ。

さらに、横の繋がりを広げ、何か困ったことがあったときに互いに助け合い解決できるような関係性を築いていきたいという。

「大学時代、3つの研究室とベンチャー企業が合同で研究テーマを進めていたんです。いろいろな人と関わって、アドバイスやアイデアを出し合って一緒に成し遂げていくことは、より良いモノづくりにとって大事だと思います

苦難を乗り越えて歴史を築いてきた西松製作所は、これから若い世代の新しいチャレンジとともに大きく変化していくのかもしれない。