成長の鍵は「絞り込み」と「ブランディング」
売上とクオリティを伸ばした絞り込みと新卒採用に向けたブランディングの戦略。

株式会社ナミックス 化粧品業界、製薬業界向けの充填機/キャッパー/カートナー等の産業機械の設計、製造、販売

長井 剛敏

都道府県
神奈川県
事業内容
化粧品業界、製薬業界向けの充填機/キャッパー/カートナー等の産業機械の設計、製造、販売
会社名
株式会社ナミックス
代表者名
長井剛敏
所在地

〒227-0065

横浜市青葉区恩田町1117-1

電話番号
045-988-4390
ホームページ

https://namix.co.jp/

Factory Stories

製造業を『人』で支える会社

ナミックスは化粧品や製薬の産業機械の設計・製造・販売を行っている会社だ。 現社長・長井剛敏の父親が1987年に創業した。

「父は大手機械メーカーで設計をしていたとき、歯車の一部のように感じていたんです。機会があって訪問した中小企業の機械メーカーの仕事がとても楽しそうに見えたそうです」

そのときアテンドをしていた社長から『自分で会社を起こす』という未来を示され、独立に対するアンテナが立ったという。

その後、独立してナミックスを設立したのだが、当初は四畳半の部屋にドラフターを1台置いて外注設計からスタートした。
そこから仕事を認められていき、製造まで業務範囲を広げるまでに至ったのだ。

「父は機械設計も電気設計もできました。優秀な設計者でアイデアマンだったんですよ」

商品を絞ることで会社を強くする

優秀な設計者だった前社長は『仕事は絶対に断らない』という信念を持っていた。 そして、お客様からのどのようなオーダーにも応え続けることで信頼を培ったのである。

しかし現在ではその方針を転換し、主力製品を『充填機』『キャッパー』『カートナー』に絞り、フルオーダー製品の受注量を減らしている。

「当時は今では考えられないようなブラックな働き方で、新しい従業員が入って来ても辞めてしまうんです。リスクが高いのに儲からない体質で、これを続けていくことは厳しいと感じたんです」

どんな仕事も断らないスタンスは、お客様から最後の砦のように頼りにされる存在となる。 だが、他の会社に断られ続けた機械は難易度が高い上に納期が短いことが多い。しかも場合によっては値段が低いのだ。

そこで長井は専務時代に前社長に強みのある製品に絞ることを提案したのだが、却下されてしまった。 そのため、営業もおこなっていた長井は、オーダーを受けてくることよりも同じ製品を集中的に販売することにしたのである。

「最初に集中的に販売したのはキャッパーです。技術的に汎用性が高かったことと、ハイエースに積めるサイズだったので、お客様のところに持って行って実際に試してもらうことができたからです」

こうして意図的に販売製品を絞ることで徐々に現在のスタンスに変更していったのだ。

「同じ製品をつくるため製造効率が高くなります。さらに製品のクオリティも上がるのでお客様に喜ばれるんです。その上利益率も上がりました。その結果を受けて前社長も認めてくれたんです」

ナミックス製品の強みは使い勝手の良さ

製品を絞ることでクオリティを上げたナミックスの大きな強みは使い勝手の良さだという。

ナミックスの製品を使っているのは化粧品や医薬品の製造現場で、そこには形状の異なるボトルやキャップを同じ設備を使用して製造することが多い。 そういった現場では、ボトルやキャップのサイズや形状によって設備のセッティングの切り替えが必須だ。 製造現場ではその切り替えの時間も製造時間に含まれるため、その切り替えが早く簡単にできることは使用する側のお客さまにとっては大きなメリットだ。

「見学に来たお客様が切り替えの様子を見ると、「職人じゃなくても切り替えができるの?」と驚かれますよ」

使い勝手の良さを追求するため、初期設計の時点から手間を省き切り替える方法に注目して考えている。

「設計者には現場やお客様のところに行って生の声を聞くように伝えています。また、組み立て段階でやりづらい点に気付いたときには使いやすいようアレンジすることもしています」

現場のオペレーターが喜んで迎え入れる機械

納品前にもナミックスならではの工夫がある。 それは、お客様に来訪してもらい最終チェックをしてもらうことだ。

これは仕様書通りの機械になっているかをチェックしてもらうと同時に、お客様の要望にできる限り応えるための方法だ。
納品後よりもナミックス社内に機械がある方が対応できる範囲が広い。 そのため、リピート品についてもできる限り来訪をしてもらうようにしているという。

最近では、発注担当者だけでなく、現場で機械を動かしているオペレーターが同行してチェックすることもあるという。 これにより現場の声を機械に反映することもできる。

「実は、新しい機械を入れると「また新しいことを覚えなきゃいけないの?」という不満が出ることもあるんです。でも、自分たちでチェックをした機械が入ると、皆さん喜んで迎え入れてくれるんですよ。これは現場担当のマネジメントとしても有効なんじゃないでしょうか

ブランディング強化で新卒採用

ナミックスでは近年、新しい挑戦もおこなっている。
それは大学生の新卒採用だ。

「ずっと中途採用だけでした。でも、労働人口も技術者も減ってきている中で、どの企業も優秀な技術者を手放したくないと考えています。だからどんどん中途採用が難しくなるだろうと思ったんです」

今後の企業の成長のためには、新卒者を採用して育成していくチカラが必要だと考えたのだ。 その取り組みは着実に成果を出しており、2年連続で新卒者を2名採用できている。

「新卒の方が入社して、社内の文化は変わってきたと感じています。既存の社員にとっても良い刺激になっています」

このような成果を上げた新卒採用のために取り組んできたのが徹底したブランディングだ。

社内を緑、黄緑、黄色のコーポレートカラーを生かした洗練されたデザインにリフォームし、ユニフォームや安全靴も統一した。
さらに社員IDカードもユニフォームとマッチするデザインにした上で、社員の意識を統一するためのクレドも入れられるようにしている。

「当社で働きたいと思ってもらうためには目に留まらなければいけません。でも、ただ目立つのではなく、私たちがどんな未来を目指しているのかを伝えなければいけないと思っています

このようなブランディングによって、新卒者の製造業へのイメージを刷新するだけでなく、従業員の帰属意識やモチベーションも高めているのだ。

FUNとFANを製造業に広げていく

ナミックスでは『日本の製造業にFUNとFANを増やしたい!』をビジョンとして掲げている。 『ナミックスのFUN(楽しい)とFAN(好き)を増やす』だけではなく『日本の製造業に』目を向けているのだ。

「日本の製造業は技術もクオリティも高いので、そんなに大きな差はないと思うんです。だから製造業で楽しんで働いていることを発信して好きになってもらうことが必要だと思います」

ナミックスのことだけでなく、日本の製造業全体に目を向けるのはなぜなのか?
それは長井がナミックスに入社した当時の苦い原体験が理由のひとつだ。

「いわゆるモーレツ社員でした。午前様は当たり前。とにかく納期に合わせるため寝る間も惜しまず必死に働きました。ただこんな働き方では長く続かない、そう思っていました。」

歯を食いしばって働くことは美談として語られることもある。
しかし長井は製造業で働く人達が楽しく働ける環境がなくては、若者に選んでもらえる業界にならないと感じている。

「製造業にFUN(楽しい)とFAN(好き)が増えていけば、製造業に優秀な人材が集まってきます。 優秀な人材が集まればもっと働きやすい環境が整います。 働きやすい環境で楽しく働ければ、さらに製造業に進みたい人が増えていきますよね。」

そんな正のスパイラルを起こしたいと考えているのだ。

ナミックスの社員がFUN(楽しい)を体現しそれを発信することで、ナミックスのFAN(好き)を増やしていこうとしている。
こうしてナミックスというファン(扇)が起こした風が旋風となり、製造業全体に広がりFUN(楽しい)とFAN(好き)が広がっていくのではないだろうか。