加工技術で実現する安さと早さ。
加工に必要な特殊な工具も
自社製造することでコストを抑える。
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中西株式会社
- 精密機械部品製造、治工具製造
中西 寛
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 精密機械部品製造、治工具製造
- 会社名
- 中西株式会社
- 代表者名
- 中西勇成
- 所在地
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〒468-0045
名古屋市天白区野並2-168
- 電話番号
- 052-896-5544
Factory Stories
中西の成り立ち
中西は精密機械部品の製造を中心に治工具の製造などもおこなっている会社だ。
専務を務める中西寛の祖父が1964年に合資会社中西製作所として創業し、現在は父の勇成が社長として会社を率いている。
創業当時は金属等の切削を中心としていたようだ。
「創業した頃のことはあまり聞いていませんが、鋳物や鉄などを削ることが中心だったようです」
お客様のご依頼に応えていく中で、徐々に精密機械部品を得意とする工場として成長してきた。
そんな中西がお客様から選ばれる大きな要因は安さだという。
「モノづくりの中で重視される『安さ』『早さ』『品質』の3つの中ならば、当社は『安さ』と『早さ』が強みだと思っています」
安さの秘密は汎用機の活用
安さや早さに強みがあるというのは、決して品質をおろそかにしているという意味ではない。
中西は片手で持てる程の小さな精密機械部品の製造を得意としている。
そこで、中西では汎用機を中心に加工をおこない、NC旋盤やマシニングセンタの使用は本当に必要な部分だけに限定することで加工費を抑えているのだ。
「たとえば、100パイのものを30パイに加工するならNCの方が早いです。でも、13パイのものを10パイにする加工ならば、NCでも汎用でもスピードはそれほどかわりません。だからこういったものは汎用機で加工しているんです」
NCと汎用機で加工費に差が出るのは、初期の設備投資費用が違うからだ。
「汎用機は自分たちでメンテナンスができるので、メンテナンス費用も安いんですよ」
どうしたら安く加工できるかを工夫している中西だからこそ品質も安定している。研磨をして誤差プラスマイナス100分の1を実現しているのだ。
「工場内は基本的に20度を保っています。ただし恒温室できっちり管理しているわけではないので、20度で公差に入れてほしいという場合の保証はできませんけどね」
ほとんどの加工を自社で完結
加工費を安く抑えられる理由が他にもある。
それは、ほとんどの加工を自社で完結できることだ。
他社に外注することが少ないため費用を抑えることができる。
また、工具も自作するため、特殊なサイズや形状に対応する工具を購入する必要がない。
「精密機械部品を加工する工具なのですごく小さいんです。たとえば2ミリのドリルは売っているんですが高いんですよ。しかも細いので折れやすいんですよね。ウチでは端材の超硬材で作るので工具代がかからないんです」
他社ではそうした加工は外注に出したり、工具を購入したりすることの方が多い。それにも関わらず中西が社内で対応できるのは、精密な工具を製作できる技術力があるからだ。
中西で作った工具を他社の人に見せてほしいと頼まれて見せたことがあるという。そのとき工具を見た人は「これは作れない」と言ったそうだ。
自社加工を実現する工具
工具は寛が作っている。
寛は、中西に入社後、見よう見まねで工具をつくりはじめた。
「先輩が作った工具を見ながら、形や角度を試行錯誤しました。最初は作っても折れてしまうことが多かったですよ」
その失敗の中から、どんな角度が良いのか? 太さはどうか? 形状がどうだったのか?など繰り返し工夫して、思い通りの工具を作れるようになるまで1年ほどを費やしたという。
今では工具づくりに挑戦している従業員もいる。
ベテランになると1時間ほどで工具を作ることができるというが、学びはじめた従業員は半日ほどの時間がかかる。
「細くするだけではなく太くするところがなければ折れてしまいます。丁寧に仕上げるべき部分と端折っても良い部分があるので、そうしたことがわかってくると早く作れるようになると思いますよ。ただ、何年加工をした経験があるかではなくて、やる気があるかないかで習得までの時間が変わると思います」
職人の勘が必要な加工技術
図面から精密機械部品を作り上げるためには、加工のためにどのような工具が必要になるかをイメージできなければならない。
そして汎用機で加工する技術も必要だ。
「工具に変な負荷がかかると折れてしまいます。加工中に重さを感じたときに戻せば折れないですけど、この感覚を掴むのがなかなか難しいんです。『職人の勘』という表現はあまり好きじゃないんですけど、さすがにこれは経験を積んだ上で培われる勘が必要なのかもしれません」
中西では2日程度で仕上げられると想定した加工を、他社では1週間かかることもあるという。
これは、汎用機で加工をしている途中で工具が折れてしまいなどのトラブルにより、工具を作り直すなどの戻り作業が発生してしまうためだ。
スムーズに加工ができて折れにくい工具をつくること。
そして、工具が折れないように加工をすること。
このふたつができて加工のスピードも品質も上げることができる。
難しい加工には失敗することも多々あるが、こうした失敗も含めた経験の中からしか得られないものがあるからこそ、中西ではそういった仕事にもチャレンジをしている。
難しい加工にも挑戦する姿勢
中西ではお客様から依頼されたものは、できるだけ受けるようにしているという。
「どうしても難しいならば放電加工機を使う方法もあります。でも、できるだけ安く仕上げられる方法を考えます」
放電加工機を使用すると時間もコストもかかってしまう。
だが工具を作り汎用機で加工ができれば、コストを放電加工機の5分の1程度まで抑えることも可能だという。
こうしたコストを安くするための工夫について、最近は従業員たちが「こっちのやり方の方が安くできるんじゃないか?」「このやり方の方がいいんじゃないか?」と考えて提案し、挑戦してくれるようになったという。
中西が目指す姿
「この先、1社依存を脱却していきたいと思っています」
現在は1社の売上が80~90%を占める。
「ありがたいことに仕事を多くいただけているので他に手が回らない状態です。ただ景気の波などどうなるかわからないので、今から業界を広げていこうと思っています」
汎用機をメインにした加工で、精密な機械部品の製造をしていく基本姿勢は変えずに取引先の幅を広げようとしているのだ。
そのためには汎用機を使える職人が必要になる。
「少子高齢化ですし、若い人はプログラムやシステムの方を好むと思います。だから技術を持っていてプログラムが苦手な60歳以上の職人に働いてもらうことを考えています。そうすると雇用も守れますからね」
汎用機でもNCでもできる加工はほとんど変わらない。手動なのか自動なのかの違いだ。
ただし、加工にかかる時間やコストは大きく違ってくる。
中西は技術を持っている高齢者が働ける環境を整えると同時に、技術の向上を目指している人たちとコストを抑えた良品を製造していこうと考えているのだ。
自動化が進んでいるからこそ、中西が継承し続ける技術がより注目されるのではないだろうか。