世の中にまだないただ一つをつくる試作の世界。
職人ひとり一人の技術と個性が出る一貫作業で製作速度がアップ。
株式会社モデルワークス 樹脂を使った試作品製造
池田公一
- 都道府県
- 大阪府
- 事業内容
- 樹脂を使った試作品製造
- 会社名
- 株式会社モデルワークス
- 代表者名
- 池田 公一
- 所在地
-
〒547-0014
大阪市平野区長吉川辺
- 電話番号
- 06-6708-2444
Factory Stories
仕事が好きだから跡を継ぐことを決意
株式会社モデルワークスは1983年の創業から樹脂をメインにした試作製造を続けている。
創業したのは先代社長の山本だ。
独立前に勤めていた会社の下請けとしてスタートしたという。
現社長の池田公一がモデルワークスに入社したのは2004年頃だった。
建築物が好きだったため建築系の専門学校に進学したが、建築の道には進まなかった。
フリーターをしながら将来を考えていた時に、自分が何が好きだったのかを考えていた。
そこで母方の祖父がプラモデルを販売していたこともあり、幼い頃からプラモデルが好きだったことを思い出し、モデルワークスで働くことに決めたのだ。
「樹脂で試作をつくる仕事なので、プラモデルと似ていると感じたんです」
池田はモデルワークスの仕事を楽しんでいたが、リーマンショックの影響で会社の売上が落ち込んでしまったため、別の会社に転職をしたという。
そうして池田がモデルワークスを離れている間に、先代の山本は跡継ぎ問題に突き当たった。
そんなときに白羽の矢が立ったのがモデルワークスを離れていた池田だった。
「色々考えましたが、樹脂で試作をつくるこの仕事が好きだったので、跡を継ぐ決意をして戻ってきました」
モックアップモデルとワーキングモデル
モデルワークスで主に取り扱っているのはモックアップモデル(デザインモデル)とワーキングモデルだ。
モックアップモデルは、実際の製品と同様の外観をつくるモデルで、デザインや色の検討などに利用される。
ワーキングモデルは、実際に製品を稼働できる状態に仕上げるモデルで、負荷チェックなどにも利用されるものだ。
量産では射出成型でつくられるが、ワーキングモデルの段階では切削で製作する。
「たとえば、射出成型の場合は抜き勾配がありますが切削では抜き勾配は必要ありません。しかし、実際の製品と同等にするために、切削で射出成型の抜き勾配を再現していくんです」
他社の約1.5倍の製作速度
モデルワークスでは、他社と比較すると1.5倍ほど早く仕上げることができるという。
これは、モデルワークスがすべての工程をひとりで一貫して生産する体制をとっているからだ。
他社では分業制を採用していることが多い。
「図面を受け取ってから、プログラミングから切削、塗装、仕上げまでをすべて自分でやるんです。プログラムのことも加工のこともよくわかっているので、効率よく作業ができるんだと思います」
これは、昔の職人仕事だったころの名残りだという。
昔はすべての工程をひとりでおこなうことが当たり前だった。そのため職人の技量が製品に大きく影響する。
多くの製造業では分業制にすることで属人性を軽減して品質の安定化や生産効率の向上を目指した。
モデルワークスで昔からのやり方が残っているのは試作だったからかもしれない。
まだ世の中に出ていない製品であり、毎回新しい一品だけの製品をつくらなければいけないからだ。
毎回違うものを製造する世界だからこそ、すべての工程を知っていることが製造する上で大きな強みとなるのだろう。
モデルワークスの製作スピードが速い理由は他にもある。
「うちでは自分の仕事が早く終わったら早く帰っていいことにしているんですよ。ダラダラ時間をかけるよりもそちらの方がいいですからね」
自分が担当した仕事に責任を持ち、少しでも早く終わらせるためにどうすればいいのかを従業員ひとり一人が工夫をしているのだ。
試作の一貫生産の難しさ
ひとりで生産に必要なすべての工程を行うため、職人の育成には時間がかかる。
「人にもよりますが、一人前になるまでには3年くらいかかりますね」
さらに、その技術にはゴールがない。
常に新しい仕事だからこそ、常に新しい工夫を考えなくてはいけないのだ。
「たとえば多面加工が必要な場合、そのまま作ればそれぞれの面に加工をしていかなければいけないので作業工程が多くなります。でも、樹脂は接着ができるのでうまくカットを入れることで多面加工を1工程に収められる可能性もあります」
このような工夫やノウハウが積み重なることで製作スピードが大きく変わるのだ。
また、切削加工をおこなうため、片面だけ加工をすると反りが出てしまう。その反りを想定した上で反対面の加工で逆にそらせて仕上げに反転させることもあるという。
「加工に必要となる治具も職人が自分でイチからつくります。だから治具のつくり方でも個人の技量の差が出ます」
工夫を生かせる面白さ
池田は、クライアントから図面を受け取ると20分~30分は固まったように動かなくなる時間があるという。
「頭の中でどう削っていくのか工程を考えているんです。その時間が楽しいですね」
最初から仕上げまでの工程を考えてから、再度工程を振り返っていく。
たとえば、薄く仕上げなければいけないものでも、最初からすべてを削ってしまうとブレが出てしまうため、あえてこの部分は残して仕上げを最後にしよう、などと工程を振り返りながら細かな工夫を考えていくのだ。
イメージ通りに仕上がっていけば、大きな達成感を得られるだろう。
逆に思い通りに進まなかったとしても経験として蓄積されていく。
「ペーパーの仕上げでも職人ごとの個性が出ます。力加減やエッジの出し方、面粗度など、それぞれの美的センスのようなものが現れるのではないかと思います」
昔ながらのやり方を踏襲しながら新しい挑戦も
モデルワークスでは、今後もひとり一人が一貫して工程を担うスタイルを続けていく方針だ。
新しい従業員を大量に雇用して企業規模を大きくすることは難しいが、クライアントの希望に添えるスピーディーでありながら繊細な試作を仕上げていくことができる。
「試作も3Dプリンターに置き換わるようになってきたので、衰退してきている業界だと思います。ただ、試作の中でも3Dプリンターではできないものがあるので、その部分に対応していきたいと思っています」
3Dプリンターでは強度や表面の滑らかさを出しにくいのだ。
そのため、ワーキングモデルの強度試験を3Dプリンターの試作ですることは難しいという。
一方、強度が必要ないモックアップモデルのような試作については、3Dプリンターを導入してクライアントが利用しやすいパッケージの提供を検討しているという。
そんなモデルワークスが目指しているのは「仕事が面白い」「楽しんで働ける」会社だ。
「私自身が仕事が楽しいと思っているので、従業員もみんなそんな気持ちで働いてもらえるといいなと思っています」
そして、楽しんで働き質の良い試作を生み出し続けることで、クライアントに頼りにされる会社になりたいと語る。
昔から受け継がれる方法に新しい技術を取り入れていくことで、モデルワークスが新しいステージでさらに輝けるのではないだろうか。