切断からリークテストまでパイプ加工をワンストップ。
パイプ加工に特化して
コツコツと積み上げた確かな技術と工夫。
株式会社光源鉄工所 パイプ加工及びロウ付け加工
原 久由
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- パイプ加工及びロウ付け加工
- 会社名
- 株式会社光源鉄工所
- 代表者名
- 原 久由
- 所在地
-
〒455-0804
名古屋市港区当知4-2308
- 電話番号
- 052-381-3205
Factory Stories
丸モノの切削からパイプ加工へ
株式会社光源鉄工所は1954年に『原鉄工所』という屋号で創業した。
現在は二代目社長・原久由が手腕を振るっており、次代を担う且也がそれを支えている。
光源鉄工所はパイプ加工を専門としているが、創業時は主に切削加工をおこなっていたという。その中でもギアなどの『丸モノ』の切削を得意としていた。
パイプ加工をおこなうようになったきっかけは、パイプの外径を削る仕事を請けたことだ。そこから少しずつパイプ加工の仕事が増えていった。
当時の光源鉄工所は切削加工をするために、ひとりの職人が機械を3台使用していた。ところがNC旋盤が登場したことで時代の流れが変わったのだ。
「資本力のある会社が性能の高い機械を導入して安く請け負うようになり、丸モノでは太刀打ちできなくなったんです」
そうしてパイプ加工へとシフトチェンジし、現在では全体の約95%を占めるまでになった。
パイプ加工をワンストップで
最初は直管パイプの切断のような加工だったが、徐々に加工の幅を増やしていき複雑な加工もできるようになった。今では、切断や面取りから、曲げや孔開け、カッパーブレージング(ロウ付け)、リークテストまでパイプ加工に関してはワンストップで請けられる。
パイプ加工をおこなっている小規模な会社は、切断だけ、曲げだけと一部の工程のみに特化しているところが多い。ところが光源鉄工所では、素材となるパイプさえあれば、表面加工(メッキ加工など)以外はすべて対応可能だ。
ロウ付け用の炉の導入が転機に
パイプ加工をする中で転機となったのが、カッパーブレージングの炉を導入したことだ。
依頼を請けた当時は炉がなかったため外注に出すことを検討していたという。
久由は迷ったものの、非常に高価な炉の導入を決めた。
無酸素炉中ロウ付けでは、鉄のパイプに銅を巻いて熱を加える。1080度で銅は融解するが鉄は融解しない。1150度に熱せられた炉に材料を通し、銅だけを溶かしてロウ付けする。炉内は無酸素状態なので、加熱されても鉄は酸化しないのだ。
このように 特殊な炉であるため、結果的に取り引き先はカッパーブレージングの加工を増やし、ほとんどのものを光源鉄工所に依頼するようになったという。
そしてこれによりパイプ加工をワンストップで請けられる光源鉄工所の強みができたのだ。
パイプ加工に必要な精度
光源鉄工所で製造されるパイプの多くは、自動車のエンジン部分のなどで使用される。冷却水を通す管の場合、モレがあると自動車がオーバーヒートしてしまう。
エンジンルームは様々なパーツが組み込まれている。パイプはそれらの隙間を縫うように組み込まれるため非常に複雑な形状だ。
さらにボルトを締めるためのステーの位置は少しのズレでも取り付けができなくなってしまう。
ゴム製のホースに取り付ける部分はゴムを傷付けると切れて水漏れが起きてしまう可能性がある。そのため丁寧な端末加工も必要だ。
パイプ加工においては、様々な部分への細やかな気配りと高い精度が必要なのである。
仕入れる材料まで精査して高める精度
そのためRがきつい曲げを正確におこなうには技術が必要だ。
しかもJIS規格ではパイプの径の誤差が0.1~0.2mm程度ある。光源鉄工所が加工する製品では、それを100分の5までにしなければいけない。
しかも公差がアンダーになると加工段階で型がうまくクランプできず寸法制精度が出ない。
「機械メーカーに相談したら、3型くらいを取り替えて対応するよう言われました。でもそれだと生産性が下がってしまいます」
そこで造管メーカーと相談して、光源鉄工所に納品するパイプの公差はプラスのみにしてもらうよう依頼したのである。
必要な角度で曲げるための熟練の技
パイプを曲げる角度はNCベンダーに数値を入力する。
しかし、スプリングバックがあるため90度に設定したから90度に曲がるわけではない。誤差を計算した上で正しい角度になるよう調整するのだ。
しかも、その調整は材料のロットによって変えなければいけない。
「パイプ自体を作る鉄板の厚みが違うんですよ」
パイプに使われている鉄板の厚みが違えば、スプリングバックの度合いも変化する。それを見極め、適切に調整するためには多くの経験が必要になるのだろう。
「20年くらいかけてその都度色々な技術を蓄積してきました」
現在でもパイプ加工の技術をすべて身に付けようと思えば20年ほどかかるという。
それは曲げには曲げの、ロウ付けにはロウ付けの技術があるためだ。
光源鉄工所ではそうした技術をひとつひとつ積み上げてきた。
その蓄積があるからこそ、パイプの形状によって最適な加工方法を選択できる。
「図面上ではどんな角度のパイプでもできますが、実際に加工ができるかは別です」
図面から判断をして設計者にアドバイスができるのも多くのノウハウを蓄積してきたからだ。
品質の維持とコストの低減のために
製品のクオリティを保つため、品質維持のためのカリキュラムを実行したり年間計画を策定したりしている。
その他、人の目の確認だけでは難しい部分についてはカメラを入れてチェックをおこなうなどして品質の維持に留意している。
外注に出している表面処理についても防錆の膜厚などの管理・調整をおこなっており、自社でパイプのリークテストも実施しているという。
クオリティを維持するために手間を惜しまない一方で、コストを抑えるための努力も怠らない。
パート従業員でもある程度までは作業をおこなえるようできる範囲で自動化を進め、簡単に作業できるような治具も作っている。
「先代は丸モノの切削をしていました。どうしたらブレがないよう加工できるかなど工夫をする発想力がありました」
そんな加工の様子をお客様が見学に来て質問をすることもあったという。/span>
より良いものづくりのために工夫していく姿勢は、こうして受け継がれているのだろう。
今後の業界への危機感と未来に向けた一歩
「自動車業界でみると、内燃機関がなくなって電気自動車に置き換わっていくでしょう」
現在作っているパイプ部品の需要は減少していくだろうと予測し、これから先に危機感を抱いているという。
そのため、光源鉄工所では自動車業界のみに頼らない、新しい柱となる事業を模索している。
「サービスを提供する仕事も多いけれど、僕はものづくりしか知らないし、ものづくりが好きなんです」
丸モノの切削からスタートした光源鉄工所には切削の技術も培われている。もちろん、パイプ加工の様々な工程で培った技術もある。
そしてなにより、ものづくりに対する愛情とより良いものをつくりあげるための工夫がある。
そんな光源鉄工所だからこそ、数年後には新しいステージで活躍する姿が見られるかもしれない。