理想のイメージを実現する研磨技術。
美しい仕上げも古いモノの再生も、
原点は『いいモノを作りたい』という想い。
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株式会社コバヤシ
- 金属研磨・金属研削・その他の金属加工
小林 淳一
- 都道府県
- 茨城県
- 事業内容
- 金属研磨・金属研削・その他の金属加工
- 会社名
- 株式会社コバヤシ
- 代表者名
- 小林 淳一
- 所在地
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〒307-0015
結城市鹿窪204
- 電話番号
- 0296-32-2640
- ホームページ
Factory Stories
酪農家からモノづくりの世界へ
株式会社コバヤシは、二代目・小林淳一の父が1971年に創業した。
「父は農業と酪農をしていたんです。でも、一年中休みが取れず、生計も厳しかったので新しい分野に進んだそうです」
当時、茨城県結城市にはカメラを製造するメーカー下請け工場が複数あったという。
そのため農家では、農作業のない冬場にはカメラ部品製造の内職をすることが多かったようだ。
しかし、酪農は冬場も忙しいため内職で生計を補うこともできなかった。
そこで、酪農をやめて研磨工場で技術を身に付けることにしたのだという。
「当時は、研磨をする為に大きな機械を何台も買う必要はありませんでした。確かな技術と根気が在れば参入することが可能でした。だからこそ、父も独立に踏み切れたんだと思います。」
25歳の若さで二代目社長に就任
淳一は高校生の頃には、父と一緒にモノづくりをしようと決めていた。
父の背中を見て育ったことと、プラモデルなどモノづくりが好きだったからだ。
それでも会社の後継ぎという意識は薄かったという。
ところが、淳一がコバヤシに入社して3年ほどが経った25歳のとき、父が病によって急逝したため社長を引き継ぐことになった。
「いきなり両肩にプレッシャーがかかる状態で、経営をしたというよりも、目の前のものをとにかく回すだけで精一杯でした」
そんな状況でも会社を続けてこられたのは、父と同世代の従業員たちが共に支えてくれたからだ。
2代にわたり幅を広げた研磨技術
コバヤシはカメラの外装部品のバフ研磨をメインにしていた。
しかし、創業から数年後のオイルショックを機に状況が変化していったという。
「カメラの製造が海外に移っていったんです。そして、材料が金属からプラスチックに変わっていき、カメラの研磨の仕事が減少しました」
そのため、カメラ部品以外の仕事を探すのと同時に、研磨の幅を広げるためにバレル研磨やショットブラスト加工もおこなうようになったという。
そうして新たに取り組みはじめ、現在も続いている研磨加工のひとつがバリ取りだ。
淳一が後を継いでからは、バレル研磨やショットブラストの設備を導入して本格的に取り組むようになった。また、サンドブラストも加えてさらに研磨の幅を広げた。
「バフ研磨の美しい仕上げだけでなく、ショットブラストやサンドブラストでマット感を付けた仕上げなど様々なニーズに対応できるようになりました。スムーズに導入ができたのも、父が幅広い研磨の基礎をつくっていてくれたからだと思います」
増やした引き出しで生み出す安定品質
様々な研磨技術を持つことはコバヤシの強みのひとつだが、それよりも大きな強みは安定した品質を提供できることだ。
研磨では同じ機械を利用していても同じ結果を出すことが難しい。
コバヤシでも、現在のような安定した品質を出せるようになるまでは長い時間がかかったという。
「失敗をしながらどんどん引き出しを増やしてきたことで、この材質のものをこんな仕上がりにするためにどんな工程が必要なのかイメージができるようになったんです」
機械を当てる時間を変えたり、回転数を変えたりと条件を変えて何度も試してきた中で培ったベースをもとに、顧客の希望に添えるように試験をしてアレンジしていく。
そして、試験によって出した工程に必要な条件を作業指示書に落とし込むことで安定した品質を実現しているのだ。
「料理のレシピのように明確な指示書を作ることで、誰でもほぼ同じようなものができるようになります。個人の技量だけに任せていたら品質がばらついてしまいますからね」
原点はいいモノを作りたいという想い
研磨による仕上りの状態は図面に記すことが難しい。
また、顧客も研磨によって仕上りにどのような違いがでるのか、具体的にイメージすることができない。
そのため、淳一は数種類の見本をつくって、実際に見比べて選んでもらえるようにしている。
また、顧客が求めているものを詳しく聞き取り、目指すものに到達するためにどんな方法が良いのかアドバイスをしていく。
こうした淳一のスタンスの根底には『いいモノを作りたい』という想いがある。
「自分自身がいいモノを持つと嬉しいんですよ。だから、いいモノを作ってお客さんやユーザーに喜んでもらえたらいいなというのが原点です」
現場の研磨作業は従業員に任せているが、本稼働前の試作には小林も立ち会っている。これは顧客の希望と、いいモノづくりをしっかりとマッチさせるためだという。
研磨の役割は基礎化粧
研磨の役割は一般的に伝わりづらい面がある。
それをコバヤシでは『金属の基礎化粧』と表現している。
「肌を整えて化粧のノリを良くすることでキレイに化粧ができますよね。研磨は化粧ノリを良くするために必要な基礎化粧のようなものなんです」
金型から取り出したままの部品は表面も荒く、バリも残っている。研磨することで安全性を高めて美しく完成させていくのだ。
「研磨の面白さは、自分たちの手でその部品が美しく変化するのを感じられることだと思います」
このような研磨の面白さや役割を、若い職人にも実感してもらうことが必要だと考えているという。
そのため、東海道新幹線の座席についた丸い手すりの研磨など、自分たちの仕事がどのように活躍しているのかを積極的に伝える活動をはじめた。
「研磨は外からはなかなか見えない仕事なので、できるだけ見える化していっています。自分たちの仕事を知ることで研磨に対する意識も変わっていくと思っています」
過去と未来をつなぐ研磨の可能性への挑戦
コバヤシでは新たに生み出される製品・部品に研磨を施すことで製品を美しく仕上げる役割を担っている。
そんなコバヤシが次に挑戦したいと考えているのが古い製品の再生だ。
「30年、40年前の古いバイクや自動車、時計などをよみがえらせて再生品を作ってみたいと思っているんです。昔のモノは単純な構造なんだけど、すごく質がいいんですよね」
汚れや傷、錆がひどいものでも、研磨の技術を駆使することで美しく蘇らせることができる。
「ただ研磨をして元に戻すだけじゃなくて、塗装屋さんなど他の会社と一緒になって新しい何かを付加していけたらいいですね」
淳一は伝統が息づく結城の街で、築100年を超える家屋に住んでいる。
丁寧につくられた古いモノは、手を加えることでさらに良くなることを淳一は知っているのだ。
研磨には新しいモノを生み出すだけでなく、古いモノを再生するチカラもある。
さらに古いモノに新しい工夫を加えていくことも可能だ。
コバヤシが培った研磨の技術で、過去と未来をどのようにつないでいくのか、その挑戦を楽しみにしたい。