代々受け継がれた「技術力」、
メンテナンスで培った「現場対応力」、
更に「開発能力」が備わった。
川勝鉄工所が目指す「縁の下の力持ち」とは。
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有限会社川勝鉄工所
- 製缶加工・組立・機械メンテナンス
石川 克也
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 製缶加工・組立・機械メンテナンス
- 会社名
- 有限会社川勝鉄工所
- 代表者名
- 石川 克也
- 所在地
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〒457-0841
名古屋市南区豊田3-15-8
- 電話番号
- 052-611-1125
Factory Stories
川勝鉄工所のルーツ
現社長は4代目。曾祖父の石川とうたろうが個人事業主として事業を始め、トンカチで鍬を作って朝市に売りに行っていた。そこが川勝の始まりだが、とうたろうは40歳くらいで亡くなってしまった。
「そんな辛い仕事できん、俺は職人になる」
祖父の石川貞勝は、そう言って大阪に修行に行き、戻ってきて個人事業主として川勝鉄工所を始めた。黒部ダムで基礎の鉄筋の溶接や現地での組み立てをしていた。当時は今と違ってCADなんてもちろんない、手作業が基本。
「穴あけも何発もポンチで叩き、ボルトが無ければ鉄を炙っといてひゅっと上に投げて穴にぶち込んで叩き入れる。」
地べたに絵をかいてその場で材料加工する、そんな職人芸がないとこなせない現場。納期が圧迫され過労で作業員が亡くなるといったこともあったが、祖父 石川貞勝は持ち前の技術力で乗り切った。
川勝のDNA
今でこそ機械設備メーカーで年商100億にもなる会社の立上げメンバーに貞勝は選ばれ、機械設備の開発に携わった。その開発手法は独特だ。図面もなく、材料渡されて加工し原寸で距離測ってここに使う材料もってこい、という世界だった。
要望を聴き設計図なしに実際にその場で製作し、それを元に設計が図面化する。通常と順序が逆であるがこれを繰り返し、合板加工用機械設備を形にしていった。その現場では貞勝は「職人の神様」と言われていた。
「そもそも図面がしっかりあってそれをカタチにする、というのが製造業のスタンダートだけど、とにかく自分で考えて先にものを作っちゃうっていうか、そういうところだった。」
口で言うのは簡単だが大変な仕事。それを傍で見てきて、「そんな大変なことやっとれんわ」といいつつ、技術力を受け継いできた。曾祖父の代から始まった川勝のDNAは現在にも受け継がれている。
技術力とは?
「その会社が持っている必殺技みたいなものじゃないかなと。」
金属材料と言っても同じものばかりではない。油圧の昇降機は、昇降させるために車輪がフレームのレール上を走る。そのフレームが曲がっていると脱輪してしまう。
万が一、作業員が昇降機に乗っているときに脱輪すれば大事故につながってしまう。
「だから脱輪しないレベルにまっすぐにしないといけない。車輪が走るレールの横に適当に何か部品を溶接したりとかすると絶対に曲がってしまう。」
フレームの曲がりを矯正するために火であぶると、鉄の材質が硬くなり強度に影響が出たり、ましてやこの火の温度でこの火の勢いで3分炙ると3ミリ曲がります、なんてセオリーはない。夏と冬でも違う。
そんな時には持ち前の川勝スピリッツだ。祖父は自前で油圧の「ひずみ抜き機」を開発してしまう。
「うちは火であぶらずに油圧のひずみ抜きという機械を開発して、ものをまっすぐな状態にしてから骨組みを組み立てるから、より精度の高いものができる。」
ただ、機械があったら誰でもできるわけではない。
「一人で任せてできるようになるには5年から7年くらいかかってしまう。なぜかというと、一人ひとり「目」の良さも違うから。最終的には目で見て歪みを取るからね。」
ひずみ抜きは川勝の命を守るための技術だ。
川勝の現在地
川勝鉄工所の社員は12名。元々、油圧昇降機の部品の製缶(骨組みなど)や据付工事または解体等がメイン事業だったため、昔から鉄加工と機械器具設置(メンテナンス含む)の二本柱だった。
「最大の強みはゼロから機械を作り上げられるところだね。」
自社製品スプレー缶穴あけ機KAWAKATSU AIR10開発のきっかけはメンテナンス工事で入ったリサイクル工場の所長の声だった。だが、初めは乗り気ではなかった。機械を開発した経験が無かったからだ。
「最初多分、無理って思ったんだろうね。言われてから2年手掛けなかった、先代は。2年後に、所長からもう一回スプレー缶穴あけ機考えてくれているかと聞かれ、先代が、私を呼び『所長本気で機械欲しいみたいだから、考えて作ってあげろ』と。先代からの依頼は唐突だった。」
とりあえずお客さんにヒアリングを繰り返した。昔のように現物合わせで作るわけにはいかないため設計も必要だった。
「結局ね、人に助けられているんだよね。」
設計担当と共に試作を繰り返すが、細かいところの問題が山というほど出てきた。
「もう何本バネ捨てたかわからないくらい、強さとか、一個一個の部品が全部試作だから、試行錯誤。」
こうしてAIR10が出来上がった。見た目は現在と大きく変わらないが当時は売り物のレベルではなかったため改良を重ねた。いまでは全国のゴミ処理場で活躍するAIR10。
川勝の技術を詰め込んだAIR10はそれぞれの部品精度が高く、ハードな使用環境に耐えうるよう強度も高い。間違った使い方をしない限り、故障はいままでないという。この開発を機に、お客さまニーズに合った機械設備をこれからも開発していくつもりだ。
メンテナンスへの想い
川勝の強みは、ひずみ抜きに代表される製缶業で培った確かな技術力と現場対応力。それを活かしているのが機械設備メンテナンスの現場だ。前社長である父の石川勝彦はメンテナンスへの想いが強かった。
「名古屋のプラスチックゴミ処理をしている会社の機械設備メンテナンスを全て請け負っていたため、先代は名古屋のプラスチックゴミ処理をうちが支えていると、社員によく言っていた。」
フットワークの軽い会社を目指し壊れたらすぐ直しに行く、そんな体制を整えた。なぜ川勝に頼むのか? それはフットワークが軽いからだけではない。作る会社は作るだけ、現場工事やメンテナンスをするところはそれだけしかやらない会社が多いが、川勝は両方とも高いレベルでこなすことができるからだ。
「メンテナンスで入ったときに機械に穴が空いているのを発見したら、僕らならそのまま直してあげることもできる。でもそれが、機械だけ直す、部品だけ交換するって業者さんだと、溶接ちょっとできないんですっていうことになるわけ。」
メンテナンスの現場は一分一秒を争う現場でもある。ゴミ処理場で一度ラインが止まってしまえば大量のゴミが処理しきれず大変なことになる。
「普通にうちの工場で仕事をしている時でも不具合が起きてごみ処理場のメンテナンス担当者から電話が入れば、すぐに対応して、次の日の朝までには不具合のあった機械設備を直した。」
そんな無茶な要求でもこなしてしまう技術力と現場対応力が川勝にはある。だから重宝されるのだ。
「メンテナンス業で何が一番嬉しいか、やっていてやりがいあるかっていうと、お客さんが喜んでくれるのが目の前でわかるってところ。お客さんがよかったよかった、助かりましたって喜んでくれるのが、やりがいだよね。社員も滅茶苦茶それに触れることができるし。」
メンテナンス業はこれからも川勝の大事な柱だ。
川勝のこれから
川勝の強みはひずみ抜きに代表される製缶業で培った確かな技術力と、メンテナンスで培った現場対応力。そこへ更に開発能力も備わった。ここからどこを目指していくのか。
「製造業の縁の下の力持ちになりたい。鉄骨構造物の骨組み、制作や機械器具設置やメンテナンスもそうだが、人の見えない部分を作っていく仕事だから『縁の下の力持ち』になるのかなと。」
今も昔も何かを作り上げるときに必要な技術力を持ち、ものづくりを縁の下から支え、人や地域、社会から必要とされる会社を目指していき、関わる人を笑顔にしていく。