社内文化の改革で強みを伸ばす。
ミッション“寄り添い型探し”を軸に挑戦できる組織に変化。

加藤軽金属工業株式会社 アルミ押出形材の素材メーカー

加藤大輝

都道府県
愛知県
事業内容
アルミ押出形材の素材メーカー
会社名
加藤軽金属工業株式会社
代表者名
加藤大輝
所在地

〒497-8533

海部郡蟹江町西之森3-47

電話番号
0567-95-1131
ホームページ

https://katokei.co.jp/

Factory Stories

加藤軽金属工業のルーツ

アルミニウムの押出材の製造・加工をおこなっている加藤軽金属工業は1961年に創業した。
現在は三代目の加藤大輝が会社の舵取りをしている。
「祖父が『これからはアルミの時代だ』と、ひとり問屋のような形で創業しました」
アルミの押出材製造をはじめたのは創業から3年ほど経ったころだという。取引のあった住友軽金属(現:UACJ)が設備を刷新するとき、古い機械を譲り受けたのがきっかけだった。

 

創業者は精力的に事業を拡げ、保険代理店など別業態の事業も展開していったという。
「二代目の父が広げた事業を絞ってアルミ押出だけにしました。アルミの中でも王道といえる汎用性の高い6063材と6005C材に特化したんです」
二代目の英断によりアルミの押出に注力したことで強みを伸ばしてきたのだ。そして2020年からは大輝が旗を振り、新たな船出をすることになった。

時代によって変化するニーズに応える 

アルミの押出材は様々な業界で利用されている。
特に建材業界では窓枠のサッシやエクステリアの枠材など様々な製品が利用されている。
「昔は写真を撮って飾る文化があったので、額縁メーカーさんからの依頼も多かったんですよ」

 

そして近年は、機械部品の中に利用するアルミパーツやレール材、ケース材、太陽光架台、ヒートポンプ関連部品の需要も増えてきているという。
加藤軽金属工業は時代によって変わるニーズに応えてきたのである。

崖っぷちからの再起

大輝が加藤軽金属工業を継ぐことを決めたのは、コロナで経営状況が厳しいと知ったからだ。そこには葛藤もあっただろう。
「私がこうして成長できたのは会社と働いている社員さん、取引先さんがあったからです。恩返しをするために会社に入る決意をしました。前職で経営改善に関わっていた経験もあり自分の中に勝算があったんです。もしも命をかけてやる覚悟の私が入ってもダメならば、誰が何をやってもダメだろうという気持ちでした」

 

大輝は原因を一つずつ解決していけば経営改善ができると考えていた。ところが実情を知ると思ったようにはいかなかったという。
削ろうと思っていた経費が削ることができない必要経費だったんです。だから別のところを何とかして削るしかありませんでした
こうして加藤軽金属工業の再生がはじまったのだ。

最も力をいれたのは社内文化の改革

大輝が最も力を入れたのが社内文化の改革だ。
社員たちは当時、自発的に行動ができなかった。
この原因は「失敗すると怒られる」、「経営者や管理者の言うことがコロコロ変わる」という社内環境だったのだ。

 

「心理的安全性がないから失敗を恐れて行動しない文化になったんです。だから、この文化を徹底して改革することにしました
大輝は研修を実施し、講師に「社員がミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を自らほしいと思うようになるような研修をしてほしい」と依頼した。
研修は「怒ってはいけない」「怒鳴ってはいけない」という基本的なことからスタートし、およそ1年かけてMVVを完成させるまでになったという。

ミッションは『寄り添い型探し』

MVVは会社が向かうべき方向がブレないように貫いている軸だ。
社員たちの意見を取り入れて大輝が決めたミッションは『寄り添い型探し』。
この一言にはさまざまな意味が込められている。

 

ひとつはお客様が求める製品を提供するために、アルミ押出の型を探すという意味だ。
これは単なる作業の意味ではなく、お客様に寄り添い、お客様が困っていることを解決していくという意味でもある。
また、小ロットや個社ニーズに対応していく個社戦略にもつながっている。
さらに社員のやりたいことや求めているものに応えていくという会社の姿勢でもあるのだ。

短納期、小ロット、納期厳守の実現力

加藤軽金属工業の強みは、納期を守って短納期小ロットの製造ができることだという。
「他の業界から見れば当たり前かもしれませんが、この業界では納期を守ることが珍しかったんです。納期厳守を徹底していたのは、祖父も父も私も別の業界から入ったからだと思います」

 

お客様の視点で考えれば納期を守ることが大切だという思いが息づいているのだ。
しかも受ける仕事は短納期小ロットである。
なんと他社なら1か月かかるところ、1週間で納品することができるというのだ。

 

「社内改革前でも短納期・納期厳守ができていました。要はうちの社員は皆優秀なんです。だから『やり切るチカラ』は持っていたんです。仕組みを整備しMVVを作ったことで社内のコミュニケーションや連携が良くなってきています。これから先どれだけ強くなれるんだろうという期待しかありません

本音で語り、失敗できる環境が上昇気流を生む

MVVにより、これまで弱かった部分を強みに昇華しているものもあるという。
それを支えているのが、5つあるバリューの中の『おもしろい研究』と『真心トーーーク』だ。
研究者は実験して試して失敗して、知識や経験を蓄積していく。そんなわくわくする仕事をしようという思いだ。
さらに、相手に配慮しながら本音で語り合い、コミュニケーションをとっていくことを推進している。
本音で話せる関係性と失敗できる環境が整うことで、新しいチャレンジができるようになったのだ。

 

「新しいことに挑戦しなければ会社の技術力は上がりません。失敗したら、私が責任を取りますし、失敗したときのための予算もとってあります」
わくわくしながら挑戦ができるからこそ、お客様の困りごとの解決策を探すことができる。つまり『寄り添い型探し』に戻ってくるのだ。
そしてお客様から頼りにされると、今度は営業にお客様の困りごとがたくさん入ってくるようになる。それを横展開して困りごとの解決策を模索し、挑戦をしていく中で技術力を高め、新たな強みが生まれる。そんな上昇サイクルができてきたのだ。

 

「当社の営業はお客様からの信頼も厚いんです。そんな彼らの営業資料は毎月変わっているんですよ。横展開する中で新たに生まれた強みが毎月書き加えられているんです」

新たなステージに向けて

「新しいことに挑戦して世の中に必要なことを提供し続ける会社にしていきたい」 大輝は今後についてこう語った。
現在取り組んでいる挑戦がベンチャー企業への支援や協力だ。
その中のひとつはすでに形になりつつあるという。
ベンチャー企業と共同で研究開発した『亜結晶粒アルミ押出材』が製造可能な状態になった。
この新素材は結晶粒が非常に細かい。熱による肥大化が小さく、内部の残留応力も少ないという。そのため耐久性や安定性に優れており、精密鍛造母材や精密切削母材などへの活用が期待される。

 

「どう活用していけるか模索段階ですが、新事業として発展させていきたいと思っています。また、社会貢献のために前職の経験を活かし、ベンチャーの技術の社会実装支援を今後も続けていくつもりです。」
加藤軽金属工業は『寄り添い型探し』を体現するべく、どんどん新しい挑戦を続けていくだろう。