商社の視点がモノづくりの質の向上に。
顧客への気配りとデータに
裏付けられた提案で信頼を獲得。

  • 株式会社ATP

  • 金属部品・治具・機械装置の設計・加工・販売

青木 与人

都道府県
岐阜県
事業内容
金属部品・治具・機械装置の設計・加工・販売
会社名
株式会社ATP
代表者名
青木 与人
所在地

〒509-6101

瑞浪市土岐町8058-5

電話番号
0572-68-9622
ホームページ

https://www.k-atp.com/

Factory Stories

商社からモノづくりの会社へ

2004年に青木与人が創業したATPは工具商社としてスタートした。
そして2014年には製造業の道も切り開き、現在では鉄、非鉄金属、樹脂など様々な素材の部品製造、製缶、組付など多様なニーズに応えられる体制を整えている。

「欲張りなので何でもやりたいんですよ。金属もアルミも鋳鉄もやっていますし、短納期も量産も受けています。お客様のいろいろなニーズに対して適切な価格と納期を提案することでご注文をいただいています」

そんな青木が感じるモノづくりの楽しさは、お客様のニーズに応えたときに喜んでもらえることだという。

高い営業力を武器に独立

青木は26歳から4年間、工具商社で新規開拓営業をしていた。
トップセールスとして活躍し、ひと月で約400万円の利益を出したこともあるという。

営業に対して苦手意識を持っている人も多いだろうが、青木は「営業は簡単」だという。

「人に好かれる法則は、お客様の目線で物事を考えて発言することです」

そして、お客様が欲しいと思っているときに必要な声を掛ける。
そのタイミングを逃さないよう、客先に足を運べなくても1本電話を入れて様子を伺うのだ。

「電話1本でいいんです。きちんとフォローしてコミュニケーションをとっていけば、何か必要になったときに相談をしてもらえるんです」

お客様の目線で考え、細やかにフォローの連絡を入れる。
これを徹底することで青木は高い営業力を得ることができたのだ。

商社に対する不安からものづくりの道へ

高い営業力で商社として順調な経営を続けていた中、青木は新しい道を模索しはじめた。
そのきっかけのひとつは、営業力が強みだからこそ従業員の退職により顧客を引き抜かれてしまう可能性があることだ。

「このリスクがあるからといって、社長が先頭に立って営業をするのは違うと思うんです」

もうひとつのきっかけがリーマンショックだ。
経営状況が厳しくなった顧客がATPよりも安値で販売しているインターネットを利用するようになっていったのだ。

インターネットの価格に合わせると利益率が下がります。そして一度下げると以降も下げた価格を要求されてしまうんです。しかも販売量も減っていたので、薄利少売の状態ですね」

こうした商社としてのリスクを軽減するために新たなビジネスを模索したのだ。
様々なビジネスを検討した中で最終的に選択したのがモノづくりだった。

「商社として加工品の斡旋をしていたので仕事があることはわかっていました。そして短納期の依頼を受けられる工場が少ないことも知っていました。だから製造業に商機があると考えたんです」

『納期』と『品質』は落とさない

モノづくりをする上でATPが大切にしているのは『納期』と『品質』だ。

商社として感じたのは、短納期の依頼を受ける会社が非常に少ないことだ。そして、約束した納期に製品を納められない会社もあった。
納期のことで苦労したからこそ、納期をきちんと守り、短納期に対応することの大切さを知っていたのだ。

品質に関しては青木自身の苦い経験がある。
外注に出していた製品をお客様に納品したとき不良を指摘され注意を受けた。
そのとき青木は「工場に(不良のことを)言っておきます」と言ってしまったのだという。

「不良品が出たことはあなたと工場の問題。不良を未然に止めて納品するのがあなたの仕事じゃないのか、と言われてすごく胸に刺さったんです」

不良品を出すことはエンドユーザにも間に入る商社にも迷惑を掛けてしまう。
だからこそ、ATPでは徹底した検査をおこなっているのだ。

ATPの強みは提案力

ATPのモノづくりにおける強みは提案力だ。
たとえば二つの図面があったとき、それらを組み付けて使うことを想定して図面が正しいか検討する。もしも間違っている可能性があればお客様に修正を提案するのだ。

もしも検査段階で気づいたときには、納品時に組み付けできない可能性を伝えるようにしている。

「図面通りに製造しているので当社には関係ないと言えます。でもひと言伝えるだけでもお客様はすごく助かるんですよ」

その他にも、図面にある加工処理の意図を確認して、必要ならば提案をおこなうという。

「たとえば硬度が欲しいために入れた処理でも、実際にはほとんど硬度が変わらない場合があるんです。そんなときは別の処理で硬度を上げる方法やコストを抑える方法などを提案します」

この提案ができるのは、どんな素材がどの加工でどのように変化するのかを細かくデータを記録しているからだ。

焼き入れ前と焼き入れ後に寸法を測定しているので変化のデータがあります。そして実測値も記録しています。面倒なことに思えるかもしれませんが、このデータが当社の強みになっているんです」

複数の異なる機械・工具メーカーを使う理由

ATPの工場には複数のメーカーの機械が導入されている。
これは工場稼働後すぐに生産をはじめるための工夫の跡だ。

工場が稼働する前に製造経験者をひとり雇用した。そして、前職で使っていた機械を確認して同じものを購入したのだ。

それまで働いていた環境をそのままウチで再現しました。だから、何の問題もなくすぐに仕事をすることができたんです」

二人目を採用したときも同じように以前と同じ環境を整えたのだ。そのため複数のメーカーの機械が導入されることになったのだ。
同じメーカーで揃えるよりも、従業員が作業しやすい環境を整えた方が良いと判断したのである。

そしてATPでは、「なぜこの工程にこの工具を使うのか」がはっきりしている。

たとえば、径の小さいものならA、径が大きい場合はBを使うというように決めている。
BのコストがAの3倍ならばAを使った方が良いと感じるだろう。
しかし、Bは加工スピードがAより5倍速いのならば状況が変わってくる。

こうした精査をおこない、総合的に判断して使う工具を決めているのだ。

情熱と好奇心で新しいステージを目指す

青木は5年後、10年後、20年後の目標を立てて、そこに向かって進んでいる。

55歳には社長の座を明け渡してFIRE(ファイヤー/早期リタイア)する予定です」

元々はもっと早くFIREする予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行があったため、その時期に去るのは無責任だと思い時期を伸ばした。
その間に新たにアクセサリーショップや沖縄の民泊事業をはじめたため、それらの事業が軌道に乗るまで社長を続けることにしたのだ。

「FIREしたら、ひとりで新しい事業を立ち上げていると思います

青木には仕事を楽しむ情熱と好奇心があり、それを高める向上心と実行力がある。そして枠にとらわれない柔軟性も持っている。
そんな青木と青木が生んだATPが、この先新しいステージで何を見せてくれるのか楽しみだ。