アイデア力と挑戦力が支える技術。
工業出身者ゼロ、枠にとらわれない柔軟な思考で顧客のイメージを形に。

株式会社アイオテック 電鋳金型の製造、治具製造

齋藤徳寿

都道府県
愛知県
事業内容
電鋳金型の製造、治具製造
会社名
株式会社アイオテック
代表者名
齋藤 徳寿
所在地

〒497-0013

あま市七宝町川部八反田56-1

電話番号
052-462-8378
ホームページ

https://iotec-biz.com/

Factory Stories

スタートは電鋳金型メーカー

電鋳金型の製造と治具の製造をメインとしているアイオテックは、1997年に齋藤徳寿の父親が創業した。

父親は鉄工所を経営している家の次男だった。
実家の鉄工所を手伝っていた頃もあるが、長男が跡を継ぎ、父親は鉄工所を出て別の仕事をすることになったという。

父親が独立する前に勤めていた会社が電鋳金型メーカーだった。

「父は営業をしていました。取ってきた仕事が現場で形になるのを見て「自分ならもっとうまく作れるのに」と思っていたみたいです。でも、自分は営業だから手が出せないとヤキモキしていたんですね」

そんな歯がゆさが独立に踏み切る動機となった。
有志3人で会社を興し、電鋳金型メーカーとしてスタートを切ったのである。

急落からの復活の鍵は良いモノをつくる姿勢

アイオテックは大手メーカーと契約し、自動車の内装関連の仕事を請けて順調にスタートした。

ところが数年後、大元の自動車メーカーの工場で火災事故が発生したのである。
その影響で依頼元の自動車内装事業が縮小され、アイオテックの仕事もなくなってしまったのだ。

「当時は本当に倒産寸前だったみたいです。当時は金型製造だけだったので経営への影響が凄く大きかったんです」

新しい仕事を獲得するために奮闘していた。
別の自動車メーカーの内装関連の金型は、元々おこなっていた仕事の技術を生かせるものだったが、そこに参入することはできなかった。

自動車関係は保守的な面があるので、後から入るのが難しいんです。それでも父は「良いモノは良いんだと、わかる人にはわかる」と言い続けて良いモノをつくる姿勢を貫いていました

その姿勢が風向きを変えた。

父親と面識のあった自動車関連企業の顧問が「オンリーワンの技術で世の中にとっても良いモノだ」と認めてくれたのだ。
そして、メーカー側にも「保守的になって良いモノを良いと言えない風土は良くない」と伝えたという。

それから試験をおこなって良いモノを採用する形になったのだ。

本当に良いモノでなければ採用されないという厳しい条件ともいえるが、既存の取引先と同じ土俵に立ち製品の良し悪しを評価してもらうことができるようになったのである。

「その結果、うちの金型を採用してもらうことができて、危機を脱することができました」

アイデア力と技術力

自動車メーカーで採用された新しい金型は、リサイクル材料を使って繊維を成型するための金型で、特許も取得していたものだ。

「理論的には、成型で加熱・冷却するのは無理なんです。無理なことをやるためにどうすれば良いか考えて、穴がたくさん開いているけれど、一定の圧力に耐えられる金型構造を考案したんです」

そして、2010年ごろからは治具の製造を増やしていった。

1社の自動車メーカーでは仕事量に波がある。それを一定化し、安定した経営をしていくために治具の製造を積極的におこなうようになったのだ。

「父は技術者タイプで、私は営業マンだと思っています。営業をする上で、良いモノを紹介するのは簡単なんですよ。
当社の治具は見た目がカッコイイわけではありません。限られた予算と決め事の中でこんなことまでできるんだ!というアイデアを入れながら作れる現場のチカラがあるんです」

畑でないからこそ生まれる挑戦力

治具はお客様によって求められるものが違うため大変なのだが、齋藤は抵抗感がないという。

自動車業界は改善活動をすることが当たり前の業界なんです。
たとえば同じ治具であっても、ここを改善するにはどうしたらいいんだろう?と考えるのは普通の感覚です。
そういう面ではお客様に育ててもらった感じですね」

また、齋藤が工業の学校を出ていないことも挑戦するチカラになっている。
技術者として「こうでなければいけない」というような思いがないからこそ、挑戦することに対するハードルを感じないのだ。

「専門的にやっている方は、専門の範疇から離れることに抵抗を感じることがあると思いますが、私にはそういった抵抗がないんです。だから、調べたり誰かに聞いたりして「できる方法を考えよう!」というスタンスでいられるんだと思います

選びやすさが選ばれる理由

アイオテックがお客様から選ばれる理由には、対応力の高さや技術力の高さなどがある。
その上で、お客様が選びやすいような工夫をしているのだ。

「治具はお客様の頭の中にざっくりとしたイメージがあるだけです。だから見積りの段階でポンチ絵を添えて、できる範囲別に3パターンの見積りを出しています。見積書だけだとお客様もイメージしづらいですが、ポンチ絵が1枚あるだけで選びやすくなるんですよ」

さらに見積価格が他社よりも低く抑えられている。

その価格は無理に利益を削っているのではなく、自分たちでできる加工で治具をつくるための工夫をして、材料や時間など価格を裏付けする理由をはっきりさせることで算出している。

そのため常に無理のない正当な見積り額を提示することができるのだ。

工業系出身者ゼロの製造現場

挑戦するチカラと柔軟性を持ち合わせた現場の風土は、工業系出身の従業員がいないことも影響しているのかもしれない。

「あえて工業系の方を避けているわけではないんですが、工業系でなくてもモノづくりはできると思っているんです」

実際に、現在の工場長は芸術大学を卒業しているという。
アイオテックは移転前、芸術大学の近くに工場を構えていた。

「芸大の子が全員芸術家になるわけではないでしょうし、モノづくりという意味では芸大も同じなんじゃないかと思ったことがはじまりですね」

アイオテックのホームページには『お客様の要望をデザインする』という言葉が掲載されている。 工業の枠にとらわれず柔軟な思考があるからこそお客様の要望をデザインしていけるのだろう。

中小企業が横のつながりを密にする新しいモノづくり

齋藤はこれからのモノづくりは、中小企業がしっかりと横のつながりを持ち、それぞれの得意な技術を生かしていくことが必要だと考えている。

「これまでは大企業が中小企業の技術を組み合わせて商品をつくっていました。しかし、そのやり方では世界のスピードについていけないと思います」

中小企業の多くは、製品の中の一部を製造することしかできない。それらをつなぎ、完成した製品にしてきたのが大企業だ。

しかし、中小企業が横のつながりを密にして、それぞれのチカラを結集することで大企業にも負けない面白い製品をスピーディーに生み出せる可能性があるという。

「大企業から「それは面白いから一緒にやらせてよ」という流れになっていけばいいんじゃないかなと思います」

大企業主導の大プロジェクトだけでなく、中小企業がそれぞれの強みを生かして協業することで、これまでにない新しい形のモノづくりが生まれるのではないだろうか。