従業員への愛が顧客への愛に。
大切なのは顧客の困りごとに対する
思いやりから生まれるアイデア。

  • アイプラント株式会社

  • 製パン・製菓省力化機械製造

家崎 潤

都道府県
愛知県
事業内容
製パン・製菓省力化機械製造
会社名
アイプラント株式会社
代表者名
家崎 潤
所在地

〒485-0082

小牧市村中字片山321-1

電話番号
0568-68-8120
ホームページ

http://www.i-plant.jp/index.html

Factory Stories

「アイ」に込めた想い

アイプラントの社長を務める家崎潤は三代目社長だ。
1965年の創業から2015年に社名変更するまでは、創業者の名が入った『岩瀬プラント工業』だった。

『アイプラント』には、『家崎』と『岩瀬』に共通する頭文字『I(アイ)』に『愛』の想いが込められている。

創業者の岩瀬には会社の後を継ぐ親族がいなかった。
そのため、岩瀬が病気で他界したのち、家崎の父親が会社を継承したのだ。

岩瀬さんは私の祖父がやっていた繊維機械メーカーで工場長をしていたんです。食品機械をつくりたいと独立して岩瀬プラント工業を立ち上げました。父は出資をしていて役員もしていたんです」

家崎は岩瀬が他界する4年ほど前から岩瀬プラント工業で働いていた。

「学生時代は海外で働きたいと思っていて、旅行会社で働いていたんです。そこは辞めたんですが、海外旅行に行くお金が必要だったので岩瀬プラントに入社しました。当時は後を継ぐことは全く考えてなかったんですよ」

社長を引き継ぎ、仕事を原点に戻す

思い返してみると、岩瀬が亡くなる1年ほど前から業績の悪化を感じていたという。

「当時は経営には全く関わっていなかったんですが、会社に来ても仕事がない状態だったので業績の悪化を肌で感じていました」

父親が会社を引き継いでからも、経営状況が大きく改善されることはなかったという。

父親は元々ひとり商社のような働き方をしていた。
従来の食品機械に加えて、父親が獲得してきた薬品機械の仕事も請けるようになったが、薬品機械は下請け業務だったため利益率が低かったのだ。

父親が社長を引き受けてから7年ほど経って、家崎がそのあとを継ぐことになった。そのとき、薬品機械の仕事の受注を止めて、創業からメインとしてきた食品機械に絞ることにしたのだ。

「私も業界のことがわかってきたので、父よりもうまくやらなきゃいけないという気持ちがありました」

社長就任後最大の利益を生み出す

家崎が社長に就任した直後、これまでで一番高い売上を記録したという。

「うちの機械を使った商品が全国展開されることになって、各地の工場に導入してもらえたんです。そのため経営なんて簡単だと錯覚してしまいました」

このまま事業が成長していくだろうと考え、土地を購入して工場の移転もしたり積極的な投資も進めていった。

ところが、次第に売上が下がっていき利益率も悪化していったという。
機械トラブルが増えて対応に追われ、従業員同士の問題も起きて、人材の定着率も悪化していった。

「不思議なもので、経営者が天狗になると必ず足をすくわれるんですよね。私は売上があれば良いと考えて中身を見ていなかったんです。人を採用しても教育をしませんでした」

このことに気付いた家崎は経営について真剣に学び、考えるようになったのだ。

思いやりのアイデア

アイプラントでは製パンや製菓に利用される食品製造の機械をトータルで製造している。

たとえば、パンにチョコをコーティングする機械では、滝のように流れるチョコにパンを通してコーティングをおこなう。

一般的にはパンを流すコンベア部分をネット状にすることでチョコを下に流す。

アイプラントでは、コンベアを丸ベルトに変えてスクレーパーで落とす構造に変えた。さらに、スクレーパーを湯煎で温める工夫もしている。

「ネットだとチョコをずっと引っ張っていってしまうので工場がすごく汚れて掃除が大変なんです。うちの機械だと汚れが少なくなるのでお客様に喜んでいただいています

このアイデアのはじまりはお客様から「スクレーパーを付けられないか?」という相談だった。

これを実現するために知恵を出し合い、落としたチョコが溜まらないように湯煎で温めるというアイデアが生まれたのだ。

最初の機械はすぐに製品化できました。でも、別のお客さんのところでは別の問題が出てくるんです。その度に改良を続けて3~4年かけて完成しました」

改良を続けて製品を育てられたのは、お客様が困っていることをなんとかしたいという気持ちだという。

これをつくれば売れるという気持ちで開発したものはうまく行かないことが多い気がします。お客様を思いやったアイデアでなければ、技術者の自己満足になってしまうことがありますからね」

お客様の困りごとに気付けるアンテナ

アイプラントはお客様の困りごとを知るために、現場の話を聞くようにしている。

「営業には自分の目で見て、お客様に困っていることがないか話を聞くように伝えています。現場で作業をしているパートの方などとも話をしてみてほしいと言っています」

サービス担当も、現場に行ったときには自社の機械だけでなく、他のラインでどんな作業をしているか注意して見るように伝えているという。

お客様も気づいていない、もっとこうすれば便利になるというところに踏み込んで提案できることが大事になると思います。だからお客様とのコミュニケーションと同時に、自分たちも勉強をしなくてはいけません

そのため、社員たちに様々な分野の展示会にどんどん参加して色々なものを見て吸収してもらうようにしている。
こうしてお客様の困りごとを敏感に察知するアンテナを育てているのだ。

柔軟な顧客対応と社員のフォロー

アイプラントがお客様から支持される理由には、お客様に合わせて対応できる柔軟性にもある。

「作業に入るために夕方から機械を止めてもらう予定にしていても、生産が長引いてズレてしまうことがあります。そうした場合でも柔軟に対応するようにしています」

食品は、機械を止める予定に合わせて前日などに多く生産しておくことが難しいケースがある。日によって生産量が違うこともあるため、予定通りにいかないこともあるのだ。

アイプラントでは食品工場の事情を理解した上で柔軟な対応を試みている。

「ただし、その対応で一番負荷がかかるのは従業員です。だから色々な面で従業員をフォローするようにしています」

経営者は従業員を見て、従業員はお客様を見る

従業員に仕事のやりがいや楽しさを感じてもらえるよう、家崎はコミュニケーションを大切にしている。

気持ちだけではなく、誕生日の贈り物や目標達成で出す賞、利益が出たときには決算期に賞与として還元するなど、がんばりを目に見える形で評価しているのだ。

「経営者は従業員の方を向いて、その分、従業員にはお客様の方をしっかりと向いてほしいと思っています」

そんな家崎が目指すのは、お客様も従業員もその家族も笑顔でいられる会社だ。

「私が今働けるのも岩瀬さんのおかげです。先人たちから受け継いだものを後世に受け継いでいける、笑顔が生まれる会社にしたいと思っています」

アイプラントのモノづくりは、従業員とお客様だけでなく、その機械で生産された食品を食べた人もきっと笑顔になる、愛のこもったモノづくりなのではないだろうか。