多彩な表面処理技術が新しい技術に昇華。
業界の外の視点を知ることで、
アイデアを得てさらなるチャレンジを!
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有限会社広一化学工業
- 電解研磨、金属表面処理全般
廣田 誠悟
- 都道府県
- 新潟県
- 事業内容
- 電解研磨、金属表面処理全般
- 会社名
- 有限会社広一化学工業
- 代表者名
- 廣田 誠悟
- 所在地
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〒959-1286
燕市小関681-2
- 電話番号
- 0256-62-4368
Factory Stories
バフ研磨からスタート
広一化学工業は、廣田誠悟の祖父・一雄が1952年に創業した。
ステンレスやチタンの電解研磨をメインとした金属の表面処理加工をおこなう広一化学工業だが、スタートはスプーンやフォークのバフ研磨だったという。
「東陽理化学研究所の創業社長が、地元燕市を盛り上げていくために自社の技術を独占せず希望者に教えてくださったそうです。祖父は直接教えてもらったわけではないようですが、その流れで電解研磨を身に付けました」
そこから、小さなザルや茶こしなどの電解研磨をおこなうようになった。
その後、シンクの水切りカゴや浴室のシャンプー台などが、鉄からステンレスに変化するとともに、広一化学工業も電解研磨の仕事が増えていったという。
お客様の多様な要望に対応できるチカラ
広一化学工業がお客様から選ばれている理由には、試作から量産まで受けられる高い対応力がある。
その高い対応力は生産量の面だけではない。
様々な業界の様々な製品の表面加工に対応できるのだ。
メインとしているキッチンまわり製品の他に、浄水器、試験管立てのような実験器具、自動車部品、医療用製品など、多様な業界の製品に携わっている。
「いろいろな業界の色々な製品の表面加工をしているので、お客様からご相談をうけたとき、お客様が求めている品質を適切に見極めて、適正な価格を提示することができます。経験のないものだと、過剰品質で高額になってしまうこともあります。当社ではこれまでの経験から、必要な品質を見極めて、このやり方をすればコストが抑えられるなどの判断ができるんです」
さらに広一化学工業では電解研磨の他に、サンドブラスト、酸洗というタイプの違う3種類の表面加工を施すことができる。
「おかげさまで、お客様には「広一に聞けばなんとかなるんじゃないか?」という最後の砦のように思っていただけています」
危機をチャレンジ精神で乗り越える
現在のように幅広い業界の製品に対応するようになったきっかけはリーマンショックだという。
リーマンショックの影響でステンレス材料価格も電解研磨の薬品の価格も大幅に上がっていった。当時は業務のほとんどが電解研磨だったため、当時社長をしていた誠悟の父、誠一がサンドブラストの導入を提案したのだ。
「電解研磨だけではやっていけなくなると感じたんです。同じ表面処理のくくりだから、できないことはないだろうと話し合いました」
また、業界にとらわれず仕事をしていくために、色々な業界に声を掛けていった。そして、「この製品の処理はできる?」と声を掛けられたときには、はじめての業界でも果敢に挑戦していったのだ。
「一度トライさせてもらって、その仕上がりが良ければその業界に進出したいと伝える感じで常に新しいことに挑戦してきました」
リーマンショックによる陰りを感じたとき、広一化学工業は新しく挑戦する道を選び進化を遂げたのだ。
諦めずに向き合ったのは困っているお客様のため
新しいことへの挑戦にはリスクもある。
必ずしも成功することばかりではないからだ。
広一化学工業でも、はじめての素材の電解研磨に挑んだとき、何度やってもうまくいかず、あきらめる寸前まで追い込まれたことがあるという。
「100個連続して仕事をしたら、100個とも違う状態になるような感じだったんです」
電解研磨では、目指す仕上がりを出すために薬品の濃度や通電の強さや時間など微妙な調整をして製品の表面を溶かして磨いていく。
そのバランスがどうしてもうまく調整できなかったのだ。
それでも諦めることなく考え続け、うまくいかない理由とうまくいった理由の両方の視点から考えて、ようやく条件の微妙なズレを見つけ出すことができた。
「諦めずに考え続けたからうまく行ったんだと思います。目の前に困っているお客様がいれば、それを助けてあげることが仕事だと思ったので、最後までやり遂げることができました」
技術の組み合わせで生まれた『粉ツカーズ』
『目詰まりしにくいステンレス製粉ふるい』や『粉が付着しにくいステンレス製ボール』は、広一化学工業の独自の技術で開発した『粉ツカーズ』シリーズの製品だ。
ステンレスに独自の表面加工を施すことで粉が付着しづらくなっている。
そば打ち用のそば粉のふるいでは、従来のふるいより約40%の時間短縮ができたという。
「開発のきっかけは、地元の技術支援機関から実証実験をしませんか? と声を掛けてもらったことです。当社の技術を知っていて、その技術を生かして新しいものが生み出せるのではないかと言っていただけたんです」
そこから約半年間試行錯誤を繰り返し、粉ツカーズを生み出すことに成功したのだ。
粉ツカーズを見た知人は「そう来たか! そこに目を付けたのがスゴイ!」と評したという。それは、単独の表面加工技術の電解研磨・サンドブラスト・酸洗の3つを巧妙に組み合わせて生まれた新しい技術だからだ。
「開発している間は、本当にうまく行くのかと不安が増えるばかりでした。それでもこうして粉ツカーズができたのは、これまでに様々な業界の様々な表面加工に挑戦してきた積み重ねがあったからです」
自分たちの仕事を自分たちで作っていける会社に
粉ツカーズは粉を扱う業界の方が持つ、潜在的なストレスを軽減してくれる製品だ。
「今は、粉ふるいやボールなどのキッチン用品ですが、違う業界の人の意見も聞いてみたいと思っています。違う業界だからこそ、こんなことにも使えるんじゃないの? という新しいアイデアが出てくるんじゃないかと思っています」
粉ツカーズに限らず、異業種とのネットワークに触れていくことが大事だと誠悟は考えている。
「業界の常識の外の視点や意見を得ることは開発のヒントにもなると思うんです」
また、製造業全体としても、エンドユーザーに少しでも近づく方法を見つけていくべきだと語った。
製造業者とエンドユーザーでは、視点に違いがあるのではないかと感じているからだ。
「我々が良いと思っているものでも、実際はここまでいらないというところがあるかもしれません。逆にこんなものがほしいと感じていることを知ることができるかもしれません。そうすると、もっと良いモノづくりができると思うんです」
異業種やエンドユーザーの視点や感覚を知ることで、広一化学工業は自分たちの仕事を自分たちで作っていける会社にしていきたいと考えている。
「目指している姿になるためには、業界に閉じこもらずに色々なニーズを聞くことが必要だと思います」
新しい視点を取り入れた広一化学工業は、次にどんな挑戦をしていくのだろう。