高い強度と美しい仕上げの鍛造。
緻密な営業で新規顧客を獲得。
伝えるのは平松製作所の強みではなくお客様のメリット。

株式会社 平松製作所 異形鍛造のプロフェッショナル

平松 孝章

都道府県
愛知県
事業内容
異形鍛造のプロフェッショナル
会社名
株式会社 平松製作所
代表者名
平松 孝章
所在地

〒457-0823

名古屋市南区元塩町六丁目1番地

電話番号
052-612-9761
ホームページ

https://www.hiramatsu-sei.co.jp/

Factory Stories

歴史よりも今

平松製作所は1933年に平松良太郎が創業し、孝章は4代目社長になる。
約90年もの間、会社を継続できている事実こそがお客様から信頼を得られている証明のひとつといえるだろう。
しかし孝章は「お客様にとっては、当社がいつ創業したかなんて関係ないんですよ」と笑う。
お客様の信頼に応える製品を製作する『今』が積み重なり、結果として歴史になる。
だからこそ、過去ではなく『今』を大切にする孝章の姿勢こそが、平松製作所への信頼を生んでいるのかもしれない。

鍛造製品の特徴

平松製作所では鍛造(たんぞう)による部品製造をおこなっている。
鋳造・鋳物(ちゅうぞう・いもの)と混同されることも多いが、この二者には大きな違いがある。
鍛造は金属を熱してやわらかくなったところをハンマーで叩いて成型する。一方鋳造は、金属を熱で溶かして型に流し込んで成型する。
完成品は一見すると似ているように感じるかもしれないが、鍛造は叩くことで金属組織を強く結合させるため、鋳造よりも強度が高くなる。
「おにぎりとお餅の違いのようなものです。鋳造は鉄の組織をまとめたもの。米粒をほぼ変化なくまとめたおにぎりのようなものです。鍛造は鉄を叩くことで組織を強く結合させます。お米をついて作るお餅のようなものですね
鍛造は製造過程で金属の強度が増すため、駆動部や足回りの部品など金属疲労が起こりやすい部分に重宝されている。
「この強度は、当社の強みや特長ではなく鍛造の特徴です。だから、鍛造をしている会社ならば、同じように熱をかけて鍛圧して決まった数値で処理をすれば、理論上どこでも同じものができます」
平松製作所の特徴は、鍛造で製造する製品のサイズだという。
特に愛知周辺は自動車関連企業が多いため、鍛造工場でも自動車用の小さなサイズの部品製作が多い。平松製作所では建設機械の部品・高圧配管接手・トレーラー部品など中規模サイズの製品をメインに製造している。

平松製作所の強み

平松製作所の鍛造で特徴的なのは鋳造肌の美しさだ。
鋳造した製品の表面に凹凸が少なく、お客様からも表面のきめが細かくて肌つやがいいと言われている。
「自動車部品の場合は切削するため鋳造肌をあまり気にしなくていいんですよ。でも、建設機械に使うロッドヘッドなどは全切削しないので、表面のきめが細かい方が商品の価値が上がります」
鍛造をする課程で酸化皮膜がつく。それを巻き込んで押しつぶすことで瘢痕(はんこん)になり、鋳造肌に凹凸ができてしまうのだ。平松製作所では酸化皮膜をこまめに除去することで、きめ細かな鍛造肌を実現している
大量生産をする工場ではここまで手をかけることが難しい。平松製作所が大物や重量物、異形物をメインにしているからこそ、鍛造肌の美しさまで意識した製品ができるのだろう。
「当社で鍛造を覚えた人たちはこれが当たり前だと思っていますね」
平松製作所では、高い水準の品質維持こそが『当たり前』のことなのだ

新規顧客を獲得する高い営業力

孝章は自社の鍛造について、他社より特別秀でている点や特徴的なことはないと語った。それでも2020年のコロナ禍以降、高い営業力で新規の顧客を獲得している。
「お会いできたお客様には、どうして私と会おうと思ったんですか? と質問するようにしています」
和歌山にある会社との商談でもなぜ会ってくれたのか尋ねたそうだ。
その会社を調べると自動車部品の製造をしていた。取り扱っているのは小さな部品ばかりのはずだ。平松製作所が得意にしている中規模サイズではない。
相手の担当者は、将来的に自動車のトランスミッションはなくなっていくだろう、だから別事業の模索をはじめたのだと話した。
その中で建築土木に目を向け、大きなサイズの鍛造をおこなっている平松製作所と会おうと考えたそうだ。
そこで孝章は建築土木関係で使用する部品を3種類持参し、お客様に具体的なイメージを描いてもらったという。
自社の製品の良さをアピールすることではなく、お客様が望んでいることを知り、それを実現できる形を提案しているのだ。

その先にいるお客様を見据えた営業戦略

商談に漕ぎ着ける前にも営業力の高さが表れている。
とあるビジネスマッチングでは、ひとつの企業に対して60社がメールでプレゼンを行い、面談に漕ぎ着けたのは6社のみだった。その6社に平松製作所も入っている。
DMによる営業では30社ほどにDMを送付して、そのうち3社から受注した。
孝章が送るDMはとても緻密だ。
DMは相手を知ることからはじまる。
取り扱っている商品、特許があれば特許情報からどのような特徴があるのかを調べる。帝国データバンクを利用して仕入れ先まで確認するのだ。
「これらの情報を見ながら、例えば海外の仕入れ先ならどこの商社を経由しているのかな、など想像するんです」
それらを踏まえた上で、各企業にあわせたDMを作成する。
単に自社のアピールをするのではなく、相手の会社に合わせて自社の製品の活用イメージを提案するのだ。さらにDMが到着した時期を見計らって先方へ電話し、担当者から困りごとなどの情報を聞き出す。その情報を基にDMを複数回送付し、2回目、3回目と記載する内容を変えていく。
オリジナルで制作を依頼したイラストを使ってわかりやすく表現することもしていた。それ以外にも強度の散布図を盛り込むなど技術者の目を引く情報を提供している。
そして、厚い資料ではなく1枚の用紙に情報を収めるのは、10秒くらいで必要な情報だと判断してもらうためだという。知らない会社のDMを長い時間かけて読む人は少ない。一瞬で有益かどうかを判断する。有益なDMを複数回見ることで一度話を聞いてみようと心が動く。
孝章が何より意識しているのは『お客様の先』だ。
平松製作所の製品を利用することで、お客様の商品を利用するユーザーにどのようなメリットを与えられるかを考えるのだ。
そのエンドユーザーのメリットを具体的にイメージできる提案をすることで、平松製作所の鍛造の価値を伝えている。

製造ができないからこその視点

「私は鍛造も機械加工もできません。現場の人間からは機械が壊れるから現場に来ないでと言われるくらいですよ。現場のことができないから、人が足りないなら人を集めよう、仕事が足りないなら営業をしようと、できることをやっているだけです」
鍛造とはまったく違う業界の知識や経験を積み、製造の現場を外から見ていたからこそ、孝章は自社を客観的に見ることができるのだろう。
同時に、高い品質の製品を『当たり前』につくり出せる職人たちを信頼しているからこそ、自信を持って自社の製品を提案し、成果を上げることができているのだろう。