培った技術に細やかな工夫を加えて。
企画から組立まで一貫生産できる
マイク製造技術を基盤に次のステージへ。
株式会社フタミ製作所 試作金型製作・部品加工
若松 利信
- 都道府県
- 東京都
- 事業内容
- 試作金型製作・部品加工
- 会社名
- 株式会社フタミ製作所
- 代表者名
- 若松 利信
- 所在地
-
〒142-0063
品川区荏原4-18-5
- 電話番号
- 03-3786-2345
- ホームページ
Factory Stories
フタミ製作所のDNAと技術の礎
フタミ製作所はマイクロホン(以下、「マイク」)の企画・開発、製造をメインに、試作金型製造も手掛けている。
4代目社長・若松利信の祖父が1959年に創業した。
「友人とふたりではじめたので、『ふたつのチカラをみっつにする』という想いを込めて『フタミ』と名付けたようです」
その祖父は父が中学生の頃に他界した。
会社は祖母が引き継ぎ、まだ若い父がそれを助けて会社を盛り立てていった。
創業初期はプレス金型を製造していたが、品川という立地からソニーのマイク製造を請け負うようになったという。
マイクのヘッド部分に取り付ける金属メッシュの加工は、マイクならではの難しい加工だ。
トライアンドエラーを繰り返しながら、今も受け継がれる技術へと昇華させていった。
パナソニックとの出会いで急成長
1967年頃、松下通信工業(現:パナソニック)が横浜にできると知った利信の父がマイクの金属メッシュの技術を売り込みに行った。
これをきっかけにパナソニックとの取引がはじまったのだ。
「1970年代に起こった第一次カラオケブームのときは、パナソニックもマイクの生産をしていて、当社も月に1億近い売り上げがあったそうです」
利信は中学生の頃からフタミ製作所を継ぐことを意識していた。だが、外の世界を経験するために専門学校を卒業後パナソニックに就職した。
「5~6年で辞めて会社を継ごうと思っていたんですが、居心地が良くて結局12年間お世話になりました」
利信はパナソニックで生産技術を担当し、金型や設備関係の仕事に携わった。
そうして32歳のときにフタミ製作所に入り、10年ほど働いた後、4代目社長として会社を引き継いだのだ。
売上構成比率のバランシング
利信がフタミ製作所に入社した頃は、マイク製造が全体の売上の8割を占めていた。しかもパナソニックの売上が7割にも上っていたという。
「パナソニックだけに頼っている状態では、この先何が起こるかわからないと思いました。それで、売上の構成比率を変えていこうと思ったんです」
そうして利信は補助金も利用しながら新しいマシニングセンタや五軸加工機を導入した。こうして試作金型や樹脂加工などの新しいジャンルにも取り組み、現在はマイク製造とその他の製造が50:50ほどになったという。
長年培ったマイク製造の技術力
フタミ製作所の強みは、やはりマイク製造のノウハウと技術力である。
製品の企画から部品製造、塗装やアルマイト処理などの二次加工、そして組立までを一貫して請け負うことができる。
その中でも、マイクのヘッド部分の金属メッシュと振動板の製作技術の高さには定評がある。
金属メッシュの加工はプレス金型を作る技術がなければ製造が難しい。
たとえば、ダイナミックマイクならば、網目状の金属を球状に絞っていかなければいけない。
無理に加工すると網目が切れてしまったり、網目が寄ってしまったりするのだ。
「網目がばらつくと音を拾う精度に影響するんです。だから形状によって複数回に分けて絞ったり、あらかじめ網目をつぶしてから絞ったりとやり方を変えているんです」
そしてマイクの心臓部ともいえる振動板にもフタミ製作所の技術が存分に生かされる。
100分の8mmほどの厚さのポリイミドフィルムを加熱した金型で成型していく。
「振動板の形状によって、高音を拾いやすいとか低音が響くなど、とらえられる音質が変化するんです。ウチにはそのノウハウがあるんです」
そのためフタミ製作所ではお客様が求める音のニーズに合わせて振動板を調整することができるのだ。
1/5までコストを抑えた試作金型
マイク製造で培った技術力を生かして、マイク以外の事業にも取り組んでいる。
特にお客様から喜ばれているのが試作金型だ。
対応できるのは100ミリ角程度の手のひらサイズの大きさのものだ。
試作金型の製造で利信がもっとも重視しているのがコストだという。
「試作金型で製造するのは1,000個程度、少ないと50個や100個ということもあります。だから耐久性よりもコストを重視して、できるだけコストをかけずにできる方法を考えています」
金型の製作費用はイニシャルコストだ。量産するようになれば製品1個あたりのイニシャルコストを下げることができるが、生産個数の少ない試作では金型のコストが大きくのしかかってくる。
フタミ製作所ではコストを下げるため、素材にジュラルミンを使うことで加工にかかる時間を半分程度にしている。また、放電加工機を使わずマシニングセンタの加工方法を工夫することでコストを下げる。
ときにはスライド構造にするものを置きゴマにして手でコマを外すようにすることもあるという。こうした様々な工夫を積み重ねることで、なんと本型の5分の1程度まで価格を抑えることができるのだ。
思い描くのはふたつのチカラがみっつになる世界
利信が描くフタミ製作所のこれからは、祖父が名付けた名の通り『ふたつのチカラをみっつにする』世界だ。
「これからは付加価値の高い仕事をしていかないといけません。そのためには技術が必要です。そのために従業員のひとり一人が技術を持っているだけではなく、そのチカラを合わせることでもっと大きなチカラを発揮できるような会社にしていかなければと思っています」
これを実現するために様々な工夫をしている。
従業員が働きやすい環境づくりもそのひとつだ。
「働きやすさはそれぞれ違います。だからその人に合った働きやすさを見つけてあげようとしています」
たとえば、神奈川県の中南部から品川まで通っている従業員は時間差勤務にして、通勤ラッシュのストレスを軽減できるようにしている。
若い技術者の育成については一般的な習得順とは逆に、まずCAMなどを覚えてもらうようにしているという。
「技術は見て覚えろ、汎用機が使えなければプログラムなんてできない、と言われていましたが、それだと挫折してしまいます。まずは馴染みのあるパソコンの業務からスタートして加工に興味を持ってもらうようにしています」
利信が考える『ふたつのチカラをみっつに』は社内だけに留まらない。
「うちには100社近い協力業者さんがいます。協力業者さんがなければうちの仕事も成り立ちません。それぞれが得意なことを生かすことでより良いモノづくができると思っています」
そのためにいろいろな会社と知り合い、コラボをしていきたいと考えているという。それぞれがチカラを出し合い、さらに大きなチカラに変えていくことができれば、モノづくりの世界はもっと輝いていくだろう。