『とにかくやってみる』精神で難題に挑む
設計兼営業の的確な図面と
各自の技術力を生かす加工体制

  • 福井アルミ工業株式会社

  • 建築金物設計・製作・施工、住宅用手摺・階段製作

安田 明広

都道府県
福井県
事業内容
建築金物設計・製作・施工、住宅用手摺・階段製作
会社名
福井アルミ工業株式会社
代表者名
安田 明広
所在地

〒918-8055

福井市若杉3丁目615

電話番号
0776-34-1234
ホームページ

https://fukui-alumi.com/

Factory Stories

アルミ需要を見越して技術を習得

「できる」「できない」ではなく、「どうすればできるのか」の視点でアルミを中心とした建材部品の製造や製缶加工などをおこなっている福井アルミ工業。

創業したのは現社長・安田明広の祖父、安田泰雄だ。
福井県内の会社で副社長をしていた祖父は、社長と経営に関する意見が食い違ったことを機に独立を決めたという。

そして、学生時代の友人が経営していた千葉県の会社で約1年間、従業員を修行させてもらうことにしたのだ。

「後に専務になる方や、高校を卒業したばかりの今の工場長が二宮産業に派遣されたんです」

千葉県の会社でのアルミ溶接技術の修行を終えた1973年に、福井アルミ工業が設立された。
当時はまだアルミを建材に利用することが少なく、アルミの溶接ができる会社も少なかった。

今後、アルミの需要は増えてくるだろうと、当時としては最新鋭の技術をつかった事業に乗り出したんです」

『とにかくやってみる』姿勢でアルミ建材分野へ

創業当時は製缶分野がメインでした。制御盤のような大きな装置や発電所で使うタービンのような大きな一点ものです。ひとつ受注したら数ヶ月製作に費やすような規模の依頼を請けていました」

その後、オイルショックによる原油価格の高騰がアルミ製錬業に大きな影響を与え、その影響はアルミ加工業にも広がった。
そこで福井アルミ工業では鉄骨工事なども請け負うようになっていったのだ。

鉄骨を扱ったことで建設関係の仕事が増えていきました。そのことがきっかけで製缶からアルミ建材にシフトしていったんです」

そこからさらに技術や体制を整え、設計・製作・施工・アフターケアまでを一貫しておこなうようになった。

さらに、他社では難しいと断られたような難易度の高い製造を請け負っている

「量産では大手には勝てませんからね。難しいものでも『とにかくやってみる』という姿勢が創業当時から受け継がれているんです」

アルミ加工の技術力

アルミと鉄では溶接や曲げの癖に違いがある。

「鉄の溶接をやったことある人でも、アルミだと全然きれいに着かないとか、溶接スピードが均一にならないとかがあると思います」

曲げ加工では、板の厚さや素材の種類によって曲げの感覚が変わってくる。
さらに、季節や気温によっても違いが出るのだという。

難しい加工でも図面に沿って正確に仕上げられるのは長年の経験があるからだ。

実際に、複雑な曲面形状の外装パネルの製造も成功させたことがある。

曲線がある上に、段々に複数の曲げ加工が必要な形状だった。
他社では難しいと断られた複雑な曲面加工だったが、福井アルミ工業では曲げと溶接の技術を駆使して、その外装パネルを仕上げたのだ。

「うちには特別な機械とか特許技術とかがあるわけではないんです。多分、1個1個の技術を見れば、どこでもできることだと思います。ただ、コアとなる曲げや溶接の技術を磨いて、今作っているものに固執せずに新しい要望に工夫をして対応しているんです」

設計ができる営業

福井アルミ工業では、設計からアフターフォローまで一貫しておこなえる業務体制を築いている。
福井アルミ工業の事業規模で設計者を置いている会社は少ないのではないだろうか。

「当社は設計専門の従業員ではなくて、営業兼設計なんです。だから人件費は抑えられています。それに営業と設計を兼務しているので、お客様の希望をダイレクトに図面に反映させられるんですよ」

顧客の希望を自社で図面化しているため、製造する部品のどこが重要なのか、精度が必要なのか、逆にあまり精度は必要ないのかなどを明確に判断することができる。

そして、それを加工現場に共有することで、難しい依頼にも応えていくことができるのだ。

この営業兼設計のスタッフを置くようになったのは30年ほど前からだという。
その仕組みをいち早く作りあげることができたため県外からの仕事をスムーズに受けられるようになったのだ

顧客の窓口となる営業が設計できるため、遠方との取引であってもやりとりの時間ロスをなくして、精度の高い図面を作ることができる。

コストを抑えて製品として成立させるためには計画が8割です。難しいオーダーでも、最初の段階から曲げや溶接をしっかりと計画することで成功させることができます」

そうして作られた顧客の要望を反映した図面を形にするのは加工現場の従業員だ。

現場では、従業員それぞれの技能に合わせて作業を分担することで、均一な品質を維持している。

「この分担は諸刃の剣でもあるんです。得意な加工を割り振ることで良い加工ができるんですが、属人化してしまいます。しかし、全ての加工技術を身に付けるまでは10年以上かかるんです。属人化を軽減できるよう技術者を育成していくことが今後の課題ですね」

ITを活用した製造管理

福井アルミ工業が顧客から支持されるもう一つの理由は納期を厳守する姿勢だ。
この業界では納期を伝えていても、業務の状況によって納期が守られないことも多いという。

そんな中、福井アルミ工業ではITシステムを導入して製造の進捗管理をおこない、納期を守る体制をつくった

以前は現場の方に日報を手書きしてもらっていたんです。だから現場にとっては面倒でしたし管理の精度は低かったんです」

システムを導入したことで、バーコードで簡単に進捗情報を収集できるようになったのだ。
業務の工程管理が正確になり、見える化もできたため、納期を厳守できる体制が整ったのである。

小さな気遣いで期待を超えるサービスを

安田明広は従業員が人のためになるいい仕事をして、得意先や仕入れ先など関わった人たちや従業員自身も幸せになれるような会社にしたいと語る。

どうせやるなら人の喜ぶことをやって、それでお金をもらえて幸せになった方がいいと思うんです」

そんな安田の理想の達成率は現在、4割程度だと感じているようだ。
「すごいことをやってほしいという訳ではありません。たとえば服装や整理整頓、掃除、来客対応など、細かい部分が少しずつ改善していけたらいいなと思っています」

仕事に対しても同様だ。
たとえば「あと少し角を取ったら相手が喜ぶだろう」というような、ほんの少しの気づきと、ほんの少しの手間を掛けられるようになってほしいと考えているのだ。

小さな気遣いがお客様の期待を超えるサービスになっていく。

作られるモノがほとんど一緒だとしても、そうした細かな気づきや心遣い、対応で差が出てくると思います

ITシステムの導入により、納期を厳守する体制を整えたことで、福井アルミ工業は一歩前に進んだ。

これからも理想を現実にするために、一歩ずつ進化していくだろう。