不可能を可能にした独自のメッキ技術。
パイプの内側や複雑形状への亜鉛メッキ加工を実現させた工夫。
株式会社ダイワエクセル 自動車部品内面めっき加工
水野 善仁
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 自動車部品内面めっき加工
- 会社名
- 株式会社ダイワエクセル
- 代表者名
- 水野 善仁
- 所在地
-
〒4640002
名古屋市千種区香流橋一丁目1番24号
- 電話番号
- 052-771-6191
Factory Stories
ダイワエクセルのルーツ
株式会社ダイワエクセルはメッキによる表面処理加工をおこなう会社だ。
現社長の水野善仁の祖父が1957年に創業した。
「創業当時は主に貿易で薬品などを扱っていたそうです」
メッキ業に転業したのは創業から5年ほど経ったころだったという。
「メッキ業をはじめた頃は自動機がなかったので薬品のタンクが並んでいて、カゴに製品を入れて手作業でメッキ加工をしていました」
時代とともに技術や設備も進化し、現在では名古屋の本社工場と豊橋工場のふたつの拠点でメッキ加工をおこなっている。
亜鉛メッキをメインに、亜鉛ニッケル合金メッキや錫亜鉛合金メッキ、銅メッキなども取り扱っているという。
亜鉛メッキとニッケルメッキの違い
ダイワエクセルでは主に亜鉛メッキをおこなっている。
亜鉛メッキによる表面処理の主目的は防錆だ。
ニッケルメッキも防錆を目的に利用されるのだが、このふたつには特徴の違いがある。
「亜鉛は鉄より錆びやすい金属で、ニッケルは鉄よりも錆びにくいんです」
防錆効果が高いのは、錆びやすい亜鉛なのだという。/p>
ニッケル自体は錆びにくい。そのため小さな傷などから本体の鉄部分が先に錆びてしまうのだ。内部がどんどん劣化し、錆びによりメッキが浮いてしまうこともある。
亜鉛メッキの場合は、本体の鉄よりも錆びやすい材質のため、傷などによって劣化がはじまったとき本体よりも先に亜鉛部分が錆びる。これによって本体を守ることができるのだ。
「犠牲防食作用といいます。これが亜鉛メッキの優れているところなんです」
電解メッキと無電解メッキ
亜鉛メッキと無電解ニッケルメッキは、メッキ処理方法にも違いがある。
亜鉛メッキは電気を流しておこなう電解メッキという方法でメッキ処理をおこなう。
電気は流れやすいところに流れるため例えばパイプ状のものならば表面にしかメッキ処理ができない。
一方、電気を使わない無電解メッキはメッキ液に漬けてメッキ処理をする。そのためパイプ形状でも表面だけでなく内部にもメッキをすることができる。
ニッケルの無電解メッキは、複雑形状に向いているが、メッキ液を何度も繰り返し利用できないためコストが高くなる。
亜鉛メッキはコストを抑えることができ、犠牲防食作用による高い防錆効果があるが筒状の内部など複雑な形状のメッキ加工に不向きだ。
このように亜鉛メッキとニッケルメッキはそれぞれに一長一短がある。
ところが、ダイワエクセルは亜鉛メッキの短所を覆す技術を持っているのだ。
パイプ内部まで亜鉛メッキ加工をおこなう技術
ダイワエクセルがおこなう亜鉛メッキ加工の中で約50%を占めているのが、自動車のガソリンの給油口からタンクにつながるパイプの加工だ。
一般的に亜鉛の電解メッキではパイプ内部にメッキ加工ができない。しかしダイワエクセルはそれを可能にしたのだ。
「パイプの内部にメッキをすることができるように祖父が電気治具設備を考案してつくったんです」
通常の電解メッキではタンクにプラスの電極、メッキ加工したい部品にマイナスの電極を設置し、プラスからマイナスに電気が流れることでメッキ加工ができる仕組みになっている。
ダイワエクセルでは、パイプ内部にもプラスの電極を入れることで内部のメッキ加工を実現しているのだ。
理論上はプラスの電極とマイナスの電極をうまく配置することで内部のメッキも可能だ。しかしそんなに簡単なことではない。
電極が部品に触れればメッキするための電気が上手く流れないからだ。
そのために絶縁体を使うのだが、絶縁体が本体に触れるとメッキが未着になってしまう。パイプによって太さも形状もまちまちなので、本体に触れないよう電極を設置するのは難しい。
これを可能にしているのがダイワエクセルの他社に負けない大きな強みだ。
この技術力を認められ、『愛知ブランド企業』として認定されている。
「BCPの関係で他のメッキ業者を探していた企業さんも、結局当社に戻ってきます」
複雑形状へのメッキ加工
ダイワエクセルではパイプに限らず複雑形状のメッキ加工を得意としている。
たとえば、ネジ切りがされているネジ受け部品の内部にもメッキ加工が可能だ。
このような形状の場合表面張力が高い。
メッキ加工をするときには、アルカリ性の液で洗って脱脂したり酸で表面を洗ったりなど、いくつかの前処理が必要だ。表面張力が高いと前処理で使った液体を抜くために時間と労力がかかる。自動機で数千個もの部品を加工するとなると、この工程がコストに大きく影響する。
そのため、スムーズに加工ができるような独自の工夫を施している。
ダイワエクセルでは7年ほど前に治具の設計開発をおこなう子会社を設立した。
それ以前は昔から付き合いのある治具製作業者に依頼していたが、治具は貴重なノウハウだ。
ノウハウの流出をできる限り抑えるため、100%出資の子会社を設立することにしたのだ。
新しいメッキ加工への挑戦
「すべての自動車がいきなり電気自動車になることはないと思いますが、鉄への防錆メッキは少なくなってくると思います」
実際に10年程前から部品素材が鉄から樹脂やプラスチックに変わる傾向があるという。
ダイワエクセルでは3年前に開発部門をつくり、新しいメッキ加工の研究開発に取り組んでいる。
「同じメッキでも違う技術を持っている会社と契約して技術支援を受けて勉強をしているところです」
その技術を利用すると樹脂やプラスチック、ガラスなどにもメッキ加工ができるようになるという。
その他にも、電子部品の回路などの銅メッキの依頼も受け始めている。」
ダイワエクセルは他にはない技術を持っている。しかしそれに固執することなく、新しい時代に向けて、これまでに培ったノウハウや技術を生かしてチャレンジをしようとしている。
これからのメッキ業界
メッキ業界は同業他社と協力できる下地があるという。
「例えば同じ亜鉛メッキの会社でも、それぞれに得意不得意があるんです。だから自分のところで対応できないものは得意な会社に紹介します」
そのため、それぞれの会社の得意不得意がもっと詳しくわかるようにして、メッキ業界のネットワークを確立できれば、ワンストップで依頼を請けられるような団体ができるのではないかと考えている。
「亜鉛メッキならウチ、金メッキならあそこ、というように繋げられるようになればお客様も楽だと思いますしね。メッキ業界の若手の一部で集まって人間関係はできているので、仕組みが作れると面白いですよね」
メッキ業界に新しいネットワークの形ができれば、業務が円滑に回るようになるだけでなく、新しい技術や協業など、これまでとは違う何かが生まれてくるかもしれない。