図面に「待った」をかけられる社員力。
お客様のニーズを起点に
機械装置を生み出す企画力と対応力。
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株式会社ダイマツウ
- 各種機械装置の設計・製造・販売
平松 朋弥
- 都道府県
- 愛知県
- 事業内容
- 各種機械装置の設計・製造・販売
- 会社名
- 株式会社ダイマツウ
- 代表者名
- 平松 朋弥
- 所在地
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〒444-1213
安城市東端町用地175
- 電話番号
- 0566-92-5921
- ホームページ
Factory Stories
やりがいに突き動かされて創業
機械装置の設計・製造をしている株式会社ダイマツウは1987年に平松朋弥の父親が創業した。
はじまりは漁師をしていた朋弥の祖父が工業化による埋め立ての補償金を元手に鉄工所を建てたことだ。
「父は9人兄弟の8番目なんです。祖父は先見の明があったのか、漁業だけでは成り立たなくなる時が来ると思い、7番目、8番目、9番目の子どもには部品加工の鉄工所をやらせました」
父が鉄工所で営業兼職人として働いていたところ、現在の主要取引先で生産技術をしていた父親の知人から生産ラインの専用設備を作ってほしいという依頼がきたという。
「失敗をしながらも試行錯誤して機械を作るのが面白かったみたいです。失敗もあるし自分の責任になるけれど、ものすごく達成感があってやりがいを感じられたと言っていました」
そうして父親は兄から独立して機械装置の設計・製造の会社をはじめた。
「最初は大松精工という社名でした。多分、平松から大きな会社になりたいという気持ちで大松にしたんじゃないかな? ところが、アメリカ向けに仕事をしたとき、大松精工が全部漢字の社名だったことから中国の会社だと勘違いされたので、株式会社化するときにカタカナ表記にしました。カタカナなら日本の会社として間違えないだろうと。大松精工の第二章という意味で『ダイマツウ』になりました」
システム会社からの転身
2008年に朋弥がダイマツウに入社した直接的なきっかけは父親が病気で倒れたことだった。
「こどもの頃は仕事を継ぐことは全く考えていませんでした。この仕事は休みがないし、汚いし、臭いというイメージで嫌だったんです」
朋弥は大学卒業後、システム会社に入社した。しかし、二人の兄は別の道に進んでいたため、自分しかいないとダイマツウを継ぐ決意をした。
「いろいろ考える中で、システム構築は、お客様の「こんなことをやりたい」をプログラムで実現する仕事で、父の仕事はそれを機械でやっているんだと気付いたんです」
さらに、この仕事に将来性も感じたという。工場の自動化はこの先も止まらず、少子化による人材不足でさらに自動化が進むだろうと考えたのだ。
また、自身が事業継承を迷ったように、継承されない工場も出てくると考えた。競合が減れば仕事が増えていくはずだと予測したのだ。
お客様の「こんなことがやりたい」
がスタート
「お客様が最初に相談してくる会社でありたいと思っています。実際に今は、何かやりたいことがあるときに最初に相談していただけています」
そして、もしもダイマツウの業務の範囲以外であれば、その業務を得意とする会社を紹介しているという。
これはダイマツウの仕事が、お客様の「こうしたい」「こんなことがやりたい」というニーズが起点となっているからだ。お客様のニーズを聞き、必要なものを提供できることがダイマツウの強みなのだ。
「他の会社に負けないような特別な技術があるわけではありません。ただ、ニーズを実現するための企画力は高いと思っています」
この企画力が「相談すれば良いアイデアを出してもらえる」という信頼につながっているのだ。
社員一人ひとりが考えて行動できる力
朋弥はダイマツウの社員たちのすごいところは「図面通りにつくらないところ」だと言う。
これは、社員が勝手に図面を無視して作業をするということではない。
「例えば、ここは機械のこの部分に使われるからもっと精度を落としてコストを下げられるとか、品質を上げたいならこの部分はもっと精度を上げた方がいいということを言ってくるんです」
図面通りに作業をするのではなく、機械に精通しており、何を目的にしているかを理解しているからこそ提案ができるのだ。
もちろん、社員のすべてが最初からこのようにできるわけではない。
技術や知識を継承して、社員を育成するための文化を作っているのだ。
そのひとつとして朋弥は人事評価制度を作った。
「組図を見て大きさがわかるとか、図面を見て平板に穴をあけられるとか、挨拶ができるとか、評価項目を細分化して、589項目に分けました」
これにより社員は何が評価されているのか、今の自分に何が足りないのかを明確に理解することができる。
「私は創業社長ではないので、技術をすべて言語化しました。これは、システム会社での経験が生きているのではないかと思います」
短い納期でも対応するノウハウ
ダイマツウがお客様に選ばれる理由には納期を守るという信頼もある。
「営業も現場も、この機械を製造するなら協力会社の仕事が何日かかってこの工程でどれくらいかかるのかをすぐにイメージできるんです」
工程や調達先、それぞれのリードタイムも違う中で納期をイメージするのは簡単なことではない。
「これは現在の主要取引先様のお仕事で鍛えられたからかもしれませんね」
現在の主要取引先ではホイールの製造とタイヤ組付を事業としている。自動車の新車種の開発において、タイヤとホイールの決定は最も遅い段階だ。そのため仕様決定から生産ラインの立ち上げまでの期間が短くなる。ダイマツウはその納期に応え続けてきたのだ。
機械ができなければ生産がスタートできない。その大切な役目を担ってきたからこそ、納期に間に合わせるためのノウハウが蓄積されたのである。
設計から加工まで自社で対応
「自社で設計から加工まですべての工程ができるからこそ、納期を含めたお客様の様々なニーズに応えることができます」
すべての工程を自社で抱えるのはコストがかかる。それでも体制を維持するのは、これからもお客様のニーズに応え続けていくためだ。
「ダイマツウの強みを生かすためにすべての工程ができる体制を残すことに決めました。社内に部品も作れる体制があるため、お客様の要望にもすぐに対応することができます」
この体制を維持するために、ダイマツウでは社員の多能工化をしている。
これにより589項目の人事評価項目が生かされ、社員は広い視野と自律性、そして高い技術を身に付けられるのだろう。
三河のモノづくりを世界へ
朋弥は15年ほど前に、テレビで東京大田区の旋盤工の技術が高く評価されているのを見たという。それは、指で触れば100分の1mmの違いがわかるというものだった。
それを社内の旋盤担当の社員に話すと「それくらいできて当たり前」「できなかったら旋盤工とはいえない」と言われたという。
「うちの会社の技術がこの地域の他の会社と比べてものすごく高いわけではありません。それでも、テレビで驚かれているような技術が普通だと言うんです。トヨタ自動車のお膝元で技術を磨いてきたこの地域には、もっとすごいモノづくりの技術があるんです。そしてこの技術を求めているところがあるはずです」
朋弥は三河地域のモノづくりをもっと広い世界にアピールしていきたいと言う。
「ダイマツウがその中でどんな役割をできるかはまだわかりませんが、うちの会社で取り組んでいることをロールモデルにして、三河地域のモノづくりに寄与したいと思っています」
ダイマツウの企業理念は「ともに笑顔になれる会社」だ。
「ともに」とは、お客様とともに、社員とともに、協力会社とともに、地域社会とともにであり、モノづくりの仲間たちとともになのだ。
大松精工の第一章を経て、第二章を紡いでいるダイマツウが、三河地域とともにどんな第三章を見せてくれるのか楽しみである。