世の中にないモノをゼロから生み出す。
ロボットからビール醸造機まで。
アイデアをより良い形で実現していく。
株式会社クラフトワークス 試作機・実験機の設計・製作、ビール醸造機の企画・開発・販売
伊藤寿美夫
- 都道府県
- 東京都
- 事業内容
- 試作機・実験機の設計・製作、ビール醸造機の企画・開発・販売
- 会社名
- 株式会社クラフトワークス
- 代表者名
- 伊藤寿美夫
- 所在地
-
〒143-0013
大田区大森南4丁目6番15号テクノFRONT森ヶ崎501号室
- 電話番号
- 03-3745-4501
- ホームページ
Factory Stories
アイデアを形にする会社
伊藤寿美夫は2008年にクラフトワークスを設立した。
代表的な製品には、超精密加工を可能にする高速工具サーボFTSやグッドデザイン賞を受賞したブリヂストンのソフトロボットハンドなどがある。
工作機器やロボットなど様々な製品を手がけているクラフトワークスをひと言で表わすならば、アイデアをゼロから形にする会社だ。
そんな伊藤がモノづくりの道を目指したのは、飛行機をつくりたいという想いからだった。
「飛行機をつくりたくてアメリカの大学に進学したんです。
そのままアメリカの航空産業に就職するつもりでした」
ところが、アメリカの航空産業では雇用に対して厳しい規制があり、外国人である伊藤は就職をすることができなかったのだ。
日本に帰ってきた伊藤は、超精密旋盤や超精密研削機などを製造する町工場に就職した。
その会社で7年間設計士として働いたことで、超精密機械の設計や考え方を身に付けることができたという。
工作機械からロボットまで
クラフトワークスでは大学などの研究機関から依頼される機械の設計・製造をおこなっている。 それらのほとんどは、まだこの世にないものだ。
「元々は工作機械の依頼が多かったんですが、自動運転の乗り物関係やロボット関係の依頼が多くなりました」
こうした依頼は大学だけでなく企業からも来ることがある。
ブリヂストンのソフトロボットハンドもそのひとつだ。
ゴムの柔らかさを生かしてやさしくモノを掴むことができるソフトロボットハンドは、要望を全て取り入れて設計・製作をした。
「当社のロボットにご満足いただき、現在も継続してご依頼をいただいています」
頭の中にあるアイデアを形に
ほとんどの場合、クラウドワークスに「依頼が来る段階では簡単な図面すらない状態だ。 依頼者の「こんなことができるように」「こんな機能を付けたい」というイメージを聞き出し、それを言語化して設計図に落とし込んでいく。
「相手が実現したいものに対して、こちらから提案をすることもあります」
依頼された通りのものを製作すると重たくなりすぎるため、3Dプリンターを利用して軽量化を提案したこともあるという。
人の骨の動きを再現したいという依頼のときには、骨の中に軸を入れて固定せず、人間と同じように腱で動かす仕組みにしたこともあります」
こうしたアイデアを生み出すとき、伊藤はまず既存のやり方を考えるという。
そして、そこからどうすればもっと良くなるか、もっと違うやり方はないのかと考え続けるのだ。
「特に大学などの場合は新規性が問われるので、意識して新しいアイデアを探していきます。
ただし、企業の場合はオーソドックスでも要望に添うことを優先して考えるようにしています」
こうしたアイデアを生み出すベースは日々の蓄積だ。
さまざまな情報を積極的に取り入れたり、機械に関するトレンドを常にチェックしていたりする。
ゼロからモノを生み出す仕事だが、ゼロの土台には多くの知識と経験が必要なのである。
日本製のビール醸造機の開発へ
クラフトワークスが新たに開発して販売をはじめたのがビールの醸造機だ。
はじまりは株式会社大鵬が自社で醸造したクラフトビールを味わえるレストランをオープンしたことだった。
「大鵬さんとは以前から知り合いだったので、最初のビアレストラン を開くときにビールの醸造機の搬入を手伝ったんです」
そのとき導入したのがヨーロッパの有名メーカーのビール醸造機だった。
レストランに醸造所を併設するため、小型の醸造機が必要だったが、日本製の醸造機は1,000L以上の大型しかなかったのだ。
「輸送の手配や設置など全部自分たちでやらなければいけないので大変なんです。それに何か問題があったときにすぐに対応してもらうことが難しいんです」
海外製のビール醸造機を見た伊藤は、クラフトワークスで日本製のビール醸造機を製造しようと考えたのだ。
そんな折、二店舗目のビアレストランの出店を予定していた大鵬から声がかかった。小型ビール醸造機の製造は作れないかと問われたことをきっかけに、本格的に製造を始めることとなった。
バックヤードで醸造できる醸造機『tinyJbrew』
クラフトワークスは海外製のビール醸造機を研究して不便な部分を改良する形で新しい醸造機の
設計をはじめた。
まず意識したことはレストランのバックヤードにも設置できる省スペース設計だ。
「日本の酒税法では年間6kL以上の製造が必要です。そのため年間醸造量の最低ラインからスタートできる150Lサイズにしました」
タンクのサイズを小さくするだけでなく、様々な部品をスリム化した。
さらに、海外製には2つあったタンクを1つにすることにも成功し、特許出願も果たした。
海外製では2つのタンクを行き来させることで酵母や沈殿物をろ過する。
その作業をするために配管の付け直しが必要となるため、作業に丸一日を要するのだ。
『tinyJbrew』はタンクをひとつにすることでスリム化を実現。さらに配管作業などが必要ないため作業時間を半日ほどに短縮することができた。
そして、ろ過の精度も海外製よりも高くなっている。
「ろ過がうまくできないと雑味が残るんです。ろ過の精度は高くなりましたが、今後さらに精度を上げていきたいと思っています」
ビール醸造の要とも言える温度管理にも工夫を凝らした。
ビール醸造ではタンク内の温度を上げたり下げたりすることでビールの発酵を調整する。
この調整でビールの味が変わるのだ。
狙った温度に素早く上昇させ、温度の制御がしやすくなるよう設計した。
これにより、醸造家が狙った味を出すための温度管理をしやすくしたのだ。
「醸造機の設計担当者も、『tinyJbrew』を完成させるために試行錯誤していました」
基礎研究分野と自社製品の両輪
伊藤は『tinyJbrew』の仕上がりに大きな手応えを感じている。
「実際に『tinyJbrew』でつくったビールはおいしいと思います。これは、醸造家が描いたビールの味を狙って調整しやすいからだと思います」
伊藤は今後この小型ビール醸造機『tinyJbrew』を積極的に販売していきたいと考えている。
「小規模でクラフトビールを醸造したい方だけでなく、大手ビールメーカーの試験醸造にも活用していただけると思います」
そして、自社製品である『tinyJbrew』を販売していくことで、研究機関からの仕事を続けていける環境を整えたいと考えている。
「基礎研究の分野はこれから先の世の中を良くするための大切なものです。そのお手伝いができることを誇りに思っています。これを続けるためにも会社運営の基盤となる製品も必要です」
研究機関の仕事でアイデアを形にするチカラを育み、そのチカラを生かして新しい製品を生み出す。 クラフトワークスにとって、研究分野と自社製品分野はどちらも欠かすことができない両輪なのだろう。