「面白い」という感覚を大切に。
リスクのない安全圏よりも
高みを目指して取り組むスタンス。
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株式会社シーティーファクトリー
- 研究用装置・実験装置等の設計製造・販売
山本 周平
- 都道府県
- 東京都
- 事業内容
- 研究用装置・実験装置等の設計製造・販売
- 会社名
- 株式会社シーティーファクトリー
- 代表者名
- 山本 周平
- 所在地
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〒141-0001
品川区北品川5-4-14イマス北品川ビル1F
- 電話番号
- 03-5791-2111
- ホームページ
Factory Stories
研究者と職人をつなぐ
2010年に山本周平が創業したシーティーファクトリーのWebサイトには、主な取引先として東京大学や京都大学など名だたる大学や研究機関が並んでいる。
これはシーティーファクトリーが大学の研究室や国立研究所などの学者から依頼を受けて、研究用装置・実験装置などの設計製造・販売をおこなっているからだ。
「当社にしかできない技術があるわけではありません。依頼内容に沿って相談をしながら図面をつくり、協力工場を手配して完成させます。ですからコーディネートに近い仕事かもしれませんね。だから、やろうと思えば誰にでもできると思います。」
ところがやりたい企業が少ないため競合が少ないという。
この原因は製造業者と研究者では見ている世界が違うからだ。研究者の本分は研究である。製造業者はビジネスから離れることはできない。世界の違う二者が上手くつながりを持つことは難しいのだという。
それを調整しながら研究者が求める一点ものの製品を完成させられることが、シーティーファクトリーの大きな特徴なのだ。
ものづくりに対する独自のスタンス
昔はお客さまの求めるものに対し職人が創意工夫をして製品を産み出していた。そうしてできた製品は個性にあふれていた。
一方、現在のものづくりはそうではない。
大量生産が求められ機械化が進められたため、誰が作っても同じようにできることが求められる。
「個性を出すことが求められていない、味気の無いものづくりが主流になってきています。それはそれで仕方の無いことですが、そのやり方で本当にいいものができるのか疑問に思っています。」
人には長所があれば短所もある。
それはシーティーファクトリーがつくる研究設備も一緒だ。
万人に使いやすいと受け入れられるものづくりがビジネスとしては正解かもしれないが、それだけを目指してしまうと殻を破った発想が生まれない。
「売れるものづくりも大切ですが作り手の個性を尊重することが大切です。極論、朝寝坊して社長出勤しても面白いものが作れればそれでいい。短所を消してしまうと、大切にしなくてはいけない長所も消えてしまうかもしれません。」
シーティーファクトリーのつくる研究設備は前例の無い特殊なものが多く、それを形にする過程は困難を極める。
だがそれを可能にするのは、技術者の長所を最大限尊重する環境なのだ。
お客さまとひとつのチームになる
「私たちにとってのお客さまである学者さんを仲間だと思っています。」
研究用設備を形にする作業は一筋縄ではいかない。
なぜなら作り手であるシーティーファクトリーには研究に対する知識や経験がないからだ。
例えば自動車を運転した経験があれば、自動車に求める性能についてはある程度想像することはできる。
しかしその経験がなければ求められる性能を想像することができなければ形にすることもできない。
「私たちの提案に対し一緒に膝を突き合わせ学者さんが考えてくださいます。もっとこうしたほうがいいんじゃないか?など意見を重ねることにより、アイデアが形になっていくのです。」
一方的にこういったものを作ってくれという関係性では良い研究設備を作ることはできない。
失敗やトラブルを恐れ性能に制限を掛けてしまうなど無難なものづくりとなってしまうからだ。
だが、仲間として一緒にできる関係であれば100%に近いものを作り上げることができる。
高いレベルの研究設備を作り上げるためには、双方の協力は大事なファクターだ。
異業種からモノづくりへ
シーティーファクトリーのスタンスを生んだのは、山本の経歴によるのかもしれない。
機械とは全く関係のない仕事をしていた山本を叔父が自身の会社に入社することを勧めた。その叔父の会社が研究用装置などの設計製造をおこなっていたのだ。
「機械のことを全く知りませんでした。叔父に教わりながら製図の勉強からはじめたんです」
手書きで図面を書き、近所の町工場に行って図面を見せていたという。
「当時は厳しい職人さんも多かったので「この図面はなんだ」と怒られたこともありますよ」
まったく未知の世界だったが山本の性に合っていた。ものづくりの面白さにどんどん魅了されていったという。
その中でも特に山本が興味をひかれたのは『人間』だった。
同じ図面を同じような環境、技術力の町工場に出しても仕上がる部品の出来栄えが全く違うことがある。
出来栄えの悪い部品をつくった工場も技術力や知識は十分にある。部品は図面通りに仕上がっていてちゃんと使うことができる。それでも比較すると品質が劣っているのだ。
山本はそのような違いが生まれることに興味を持ったのだ。
「この違いは、手先が器用だとか、知識があるとかではなく、細かなところに気が付けるアンテナ感だと思うんです」
職人の仕事を間近に見て、図面以上のクオリティを出すのは細かいところに気が付くセンスなのだと感じたのだ。そしてそれこそが職人の良い部分だと感じているという。
そんな『人間』の部分に興味を惹かれた山本だからこそ、「面白いものづくり」を重視するようになったのではないだろうか。
尖ったモノづくりを目指して
山本が魅力を感じた『人間』の部分は、工場において近年削られている部分でもある。
特に量産品の場合は、職人によってより精度を上げることよりも、職人による差異のない一定の品質であることが重要だ。
これはユーザーにとって、一定以上の品質の製品を安定して手に入れることができるメリットとなる。
「私がいいなと思った職人の部分は、今の時代において望ましくないのかもしれません。でも、職人の良さが廃れて受け継がれなくなるのはさみしいです」
そんな山本が目指しているのは「尖ったものづくり」だ。
「一般のニーズ向けの開発もしていきたいと思っています。人間の尖ったところをいっぱい盛り込んだ製品が少しでも評価してもれるような仕事がしたいですね」
この『尖った』とは、すべてにおいて平均点を取れるものではなく、一点だけでも他の追随を許さないような最高の機能を持つようなものだ。
「でも、尖ったものづくりをしようと思うと、そういうマインドの社員がいないと難しいんですよね」
とりまとめが上手な人や管理が上手い人がいると仕事がスムーズに進む。しかし問題が起きないように尖ったところを削る役目であるため、尖ったものづくりは難しくなるのだ。
「ルールに沿って『みんなが良いと言うものが良い』と考えていては尖ったものはできません。美しいものはできるかもしれませんが、「他でもよく見るよね」という感じになってしまいます。「他の部分はともかく、ここはすごいでしょう?」と胸を張れるような仕事がしたいんです」
こうした尖ったものづくりは、山本が惹かれた職人の『人間』の部分を継承していくことにもつながるだろう。
類は友を呼ぶという言葉もある。
これからも山本の想いと共鳴するスタッフと共に尖ったものづくりを実現していってくれるのではないだろうか。