自社でプラスチック成形も。
幅広い業種に対応する金型製作と若い人が働きやすい体制で成長を続ける。

有限会社荒井金型 金型・精密部品加工・プラスチック成形

荒井幸二郎

都道府県
愛知県
事業内容
金型・精密部品加工・プラスチック成形
会社名
有限会社荒井金型
代表者名
荒井幸二郎
所在地

〒463-0023

名古屋市守山区今尻町120

電話番号
052-798-5131
ホームページ

https://www.e-arai.co.jp/

Factory Stories

荒井金型について

荒井金型はプラスチックを成型する金型の設計、製作、修理、メンテナンスをおこなっている会社だ。また自社でプラスチック成型もおこなっている。
この5年ほどで従業員数が約4倍に伸びるほど勢いがあるが、成長に至るまでには厳しい時代もあったという。

二代目社長荒井幸二郎の父、民雄が1976年に創業した。主に自動車関連の業務をおこない、堅実に経営を続けてきた。だが幸二郎が金型業界に入った頃には業界全体が低迷していった。
「別の金型工場に就職しましたが1年経たず廃業してしまいました。別の会社も同じような状況でした。当時私は跡を継ぐつもりがなかったので就職先を探しましたが求人自体がない状態でした」
幸二郎は荒井金型で働くようになったが、厳しい状況は荒井金型も同様だった。 自動車関連の仕事がどんどん海外に流れていったためだ。

時代の変化と荒井金型の変化

荒井金型では自動車関連の仕事に依存する体制からの脱却を図った。
どの業界の仕事でもチャレンジしていくようになったのだ。それが功を奏し、自動車関連以外にパチンコ業界や雑貨など幅広いニーズに応えている。
また、毎年6社ほどの新規顧客を獲得しており、現在取り引きをしている顧客の9割以上がこの8年ほどの間に取り引きをはじめたという。

かつて金型業界の軸となっていた自動車関連の仕事が減少したのは時代の流れだったのかもしれない。そして、時代の流れは工場の業務自体にも変化を及ぼした。
手作業だった仕事は、どんどん機械化やデジタル化されていった。
「私は昔の職人気質なやり方も、今のデジタルを生かすやり方も知っているので、残すべきものと変えていくものを判断できたんだと思います」
苦しい時代を乗り越え、成長に転じることができたのは、時代の変化を柔軟に受け入れ、果敢にチャレンジすることができたからだろう。

荒井金型が支持される理由

新規顧客を増やしている荒井金型だが、営業はおこなっていないという。
「製造業同士の繋がりで相談されるので、そうした困っているお客さんからの仕事を絶対に断らないようにしています」

新規で持ち込まれる相談は、他社で対応できないと断られているケースが多い。荒井金型では納期や品質、価格などの条件が厳しくても断らないのだ。
それにより「荒井金型ならばなんとかしてくれる」という評判が立ち、その声こそが優秀な営業マンになる。
そして緊急対応で取り引きがはじまった顧客の信頼を勝ち取り、大きな仕事へとつながっていく。
「病院の救急治療のような感じですね。最初は大変ですが広告宣伝費だと考えています」

多業種に対応することで品質も向上

荒井金型が重点を置いているのは顧客が求めるものを提供することだ。
顧客によって金型に求めるものは違う。品質かもしれないし、納期かもしれない、価格かもしれない。
「例えばお客様のご要望に沿ってコストを抑える方法を提案するなど、お客様が求めるベストなものを提供します」

そこで生きているのが多業種に対応することで培ったノウハウだ。
例えばパチンコ業界では低コスト短納期を求められる。自動車業界では高い耐久性が求められる。業界によって違うノウハウが必要になるのだ。そうして得たノウハウを別の業界の仕事にも生かしていく。

「品質を上げるためには経験を重ねて改善していくしかありません」
多業種の仕事に対応することで、多様な経験を積み重ねフィードバックしていくことで技術力や品質が向上しているのだ。

自社でのプラスチック成型

「当社の仕事は金型をつくることです。でもお客様に必要なのは金型を使って製品を作ることです。そこにギャップが生まれます」
依頼通りの金型を製造しても樹脂を流し込むと充填バランスが悪くて寸法が出なかったり、量産性が悪かったりという問題が出ることがある。
それを解決するために、荒井金型ではプラスチック製品の量産成型を自社でおこなうようになった。

「お客様と同じ立場になれば金型の見え方が変わるだろうと思ったんです」
これにより金型の先にある製品を意識した金型製造ができるようになったのだ。
「成型事業部ができたことで、成型の情報を金型部門にフィードバックできるようになりました」
顧客から依頼された金型は樹脂を流してテストをおこない、判断できる限りの不具合をクリアしてから納品している。

人材育成と製造業の未来

製造業では若い人材が集まらず高齢化が進む傾向にある。しかし荒井金型で活躍しているのは20代、30代の社員だ。
荒井金型は若者が働きやすい環境を作りを大切にしている。工場を改装したのもそのひとつだ。そして未経験者を積極的に採用しているのだ。
「技術職なので未経験者に教えるには時間もエネルギーも必要です。でも1年間しっかり教えてできるようになれば良いのではないでしょうか」

未経験者の若い人材を増やしはじめたときは顧客から品質が悪いと苦言を呈されたこともあったという。そんなとき幸二郎は「5年後、10年後を見てください」と言っていたという。そして当時採用した若い社員は立派な技術者に成長し、顧客からの信頼を得ている。

また、若い人が仕事に魅力を感じられるように、昔気質の職人の風潮も変える必要があると語った。 これは幸二郎自身の経験から感じたことだ。
やる気があり新しいことを覚えたい、チャレンジしたいと思っていても、若いうちは難しい仕事を任せてもらえなかった。
「教えてもらえれば絶対にやれると思っているのに簡単なことしか任せてもらえなかったんです。昔からのやり方が必要なこともありますが、変えるべきこともあると思います」
荒井金型では未経験であってもどんどん仕事に挑戦させる。多くの経験を積めるため成長するスピードも速いのだ。

荒井金型の未来

この言葉には幸二郎のスタンスが表れている。 10年後の高い目標を掲げても、理想が高すぎて現実味がない。社員たちも具体的なイメージがしづらいだろう。
もちろん希望や理想は必要だが、幸二郎は2年くらいの短いスパンで目標を語るようにしている。そして実際に実現できるということを社員たちも肌で感じることができるのだ。

「ちょっとがんばれば達成できる目標を毎日ひとつずつクリアしていけば、2年後にはすごい大きな変化になっていますよね」
急激な方針転換や変革を成し遂げるためには大きなエネルギーが必要だ。だが、少し背伸びをすることならばできるだろう。
その積み重ねこそが大きな変化を生むのである。